目撃は数十年で数回。謎に包まれていた「砂漠モグラ」の生態が判明

砂漠に現れる謎の生物の正体とは。

土の中を自由に行き来する生物といえばモグラ。では砂漠の砂の中を滑るように移動する生物といえば何が思い浮かびますか? オーストラリアの砂漠では数十年で数回そんな生物の目撃証言が上がっていました。砂漠の中を自由に動き回る生物の生態が、最新の研究でついに明らかに。

その正体は、オーストラリアの砂漠にのみ生息する小さな哺乳類 フクロモグラでした。

フクロモグラの生態、生息地そしてとても高い観察の難易度

フクロモグラは、鉛筆ほどの長さ(約10~14cm)で、体重は約40~70gほどのサイズしかありません。その表面は黄色い毛で覆われていて、手足は体からほとんど突き出していません

私たちのイメージするモグラとは異なり、トンネルも掘りません(もちろん黄色いヘルメットとツルハシも持っていません)。フクロモグラはオーストラリアの砂漠の中を「泳ぐ」ように移動します。この地下生活と広大な砂漠環境によって、観察することは非常に難しく、数十年でほんの数回だけ目撃されていました。

観察が難しい中でどのように研究したのか

近年のDNA技術の進歩により、野外での直接的な観察が困難な種でもその生態を解明できるようになり、研究対象とすることができるようになりました。 研究チームは、10年以上前に発見・冷凍保存されたフクロモグラの小さな組織サンプルを使って、ゲノム(全遺伝情報)解析を行ないました。その結果、フクロモグラは砂漠という厳しい環境で生き抜くために独自の進化をしていることがわかってきました。それが次の3つです。

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Image: THE CONVERSATION

目の退化:目は非常に小さく、皮膚の下に隠れており、機能的には盲目です。遺伝子比較により、レンズに関与する重要な遺伝子が最初に失われ、その後、色覚を担う遺伝子や低照度環境での視覚に必要な遺伝子が徐々に退化していったことが分かりました。

精巣の位置:フクロモグラのオスは陰嚢を持たず、精巣が腹壁内に位置しています。これには、思春期の精巣下降に関与する遺伝子の退化が関係している可能性があります。

酸素運搬能力:赤血球内で酸素運搬をするヘモグロビンの遺伝子が2つ存在し、低酸素環境である砂の中に適用していると考えられています。

気候変動がフクロモグラの個体数減少に与える影響

遺伝パターンを分析した結果、フクロモグラの個体数は約7万年前に始まった氷期の気候変動を背景に、長期的に減少していることが分かりました。この個体数減少は人間の影響ではなく、気候変動によるものである可能性が高いと見られています。今後、数万年にわたって個体数がさらに減少し、遺伝子の多様性が失われることで、フクロモグラの適応能力にどのような影響が出るのかについて現時点では明らかになっていません。

今回の発見は、DNA研究を通じてフクロモグラの絶滅を防ぐための一歩を示してくれました。オーストラリアの他の哺乳類と同様に、砂漠の中で姿を消さないような取り組みが求められています。

Source:THE CONVERSATION

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