街明かりと夜の暑さでミツバチが睡眠不足のピンチに?

暑すぎとまぶしすぎのはざまで悩めるミツバチ。

巣の中が暑すぎて眠れないミツバチが、涼みながら寝ようと思って外に出たら、今度は街の明かりがまぶしすぎて眠れなくなるかもしれません。光害と温暖化のダブルパンチで不眠症になるミツバチ、気の毒すぎます。

光害と温暖化でミツバチが睡眠不足に?

カリフォルニア大学サンディエゴ校の研究チームが科学誌Scientific Reportsに発表した研究結果によると、人工的な光がミツバチに深刻な影響を与えるおそれがあるそうです。人工光にさらされることによって、ミツバチの概日リズム(体内時計)が乱れ睡眠時間が短くなるといいます。

研究チームが暗闇の中で眠ったミツバチと、人工光を浴び続けたミツバチのグループを比較した結果、長時間にわたって人工光にさらされたミツバチの概日リズムが著しく乱れ行動障害が見られたそうです。

概日リズムが乱れて睡眠不足になったミツバチは、ミツバチ同士の情報伝達に用いられる「ワッグルダンス(8の字を描くように歩き回る)」を上手にできなくなったとのこと。

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Image: BBC Earth / YouTube

ミツバチはワッグルダンスを踊って、花粉がある場所の方角と距離を伝えあうんですよね。上の動画の後半で説明していますが、ミツバチはバイブレーションするような動きによって、花粉がある場所の太陽に対する角度と距離を周囲に伝えます。もしかすると、睡眠不足のミツバチがデマを流すなんてことになるかもしれません。

ミツバチは、暑い夜に巣の外で眠るそうなのですが、温暖化が進むと都市部では夜の気温が下がらずに巣内の温度も高くなるため、より外で過ごす機会が増え街の光にさらされる可能性が高くなるといいます。

暑すぎて寝苦しいから外に出たらまぶしすぎるとか、そりゃ睡眠不足になっちゃいそうですね。

生態系や食料への影響大

ミツバチの睡眠不足は、ミツバチの健康状態や群れの健全性だけの問題ではありません。ミツバチが健康を損ねて通常の活動をできなくなれば、ミツバチに受粉を依存している生態系にも深刻な悪影響をもたらすことになります。

ミツバチは、野生植物や農作物の授粉者としてとても重要な役割を果たしています。生態系の安定だけでなく、世界の食料安全保障を支える縁の下の力持ち、それがミツバチです。

日本の農業環境技術研究所は2016年の報告書では、

2013年時点での送粉サービスの経済価値は、日本の耕種農業産出額(約5兆7,000億円)の8.3%約4700億円)に相当しました。また、そのうち70%約3,300億円)は、野生送粉者が提供していると推定しました。

と述べています。

また、米国農務省は、世界の食料作物の35%がミツバチなどの花粉を媒介する動物に依存していると述べています

論文の共著者であるJames Nieh氏は、次のように話しています。

光害など、ミツバチの健康に影響を与える要因を理解するのは、授粉媒介生物の個体群を保護するための方策を講じるうえで必要不可欠です。

光害は深刻化しており、人工光が地球表面の4分の1を覆うようになってきています。

この研究は、光害のような人為的なかく乱が授粉媒介者にどのような影響を与えるかについて、新たに光を当てるものです。

ミツバチの睡眠時間と食料生産を減らさないために、街の明かりと熱帯夜を減らしましょう。

Source: Kim et al. 2024 / Scientific Reports, University of California San Diego

Reference: 国立研究開発法人農業環境技術研究所, U.S. Department of Agriculture

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