レースで自己記録を更新したい。スピーディに気持ちよく走りたい。そんな気持ちから、自分にフィットした速く走れるシューズを探し続けているランナーは多いはず。「ナイキ アルファフライ 3」は、そんなランナーたちが気になっているシューズの1つだと思います。
ナイキ アルファフライ3ってどんなシューズ?
近年、エリートランナーたちが選ぶレースシューズは、分厚いミッドソールの間にカーボン製のプレートが挟んであるのが一般的(このカテゴリーは「スーパーシューズ」なんて呼ばれていたりもします)になっていますが、そのきっかけになったのが、2017年に発売されたNIKEのシューズ。以来、ランニングシューズシーンをリードし続けているNIKEのトップレーシングモデルが「ナイキ アルファフライ 3」です。
2024年11月現在、男子マラソンの世界記録は2時間0分35秒、女子マラソンの世界記録は2時間9分56秒ですが、どちらも記録達成時の選手の足元には「ナイキ アルファフライ 3」がありました。そう、マラソン世界最速の称号を持っているシューズというわけなんです。
「ナイキ アルファフライ」シリーズの大きな特徴が、前足部に搭載された2つのエア ズーム ユニット。初代モデルから継続して搭載されています。高圧のエアバッグ内にきつく伸ばされた伸張性の高い特殊な繊維を閉じ込めたもので、足が地面に着地すると、その繊維が圧縮されて衝撃を緩衝します。そして、瞬間的に元の形状に復元することでエネルギーリターンを生み、それが推進力に繋がるという仕組みです。
前作「ナイキ アルファフライ 2」では、前足部と踵部が分割されていましたが「ナイキ アルファフライ 3」では連結され、カーボンプレートの幅が広くなったそう。それでも重量はシリーズ史上最軽量(メンズ28cm/220g、ウィメンズ25cm/176g)となっています。
今回試したのは、EKIDEN PACKコレクションの1足として登場したニューカラー。松明の炎からインスピレーションを得た、ファイヤーパターンが採用されています。この炎のデザインは、2002年に発売されたエア ストリーク スペクトラム プラスから取り入れたものでもあるそうです(ファッション好きな方は、2018年に発売されたシュプリームとのコラボレーションモデルを思い出すかもしれません)。
アッパーに採用されているのはアトムニット3.0という素材。中が透けるほど薄く軽い素材ですが、なかなか強度がありそうです。一般的なランニングシューズと比べると足入れはしにくいですが、足をシューズにおさめると吸い付くようにフィット。ザ・レーシングシューズといった印象です。
走ってみた感覚
ちょっと走ってみると、ミッドソールに採用されているズームエックス フォーム特有のフカフカ感があります。クッション性はバッチリです。
走る速度を上げていくと、それに伴って反発が強くなっていきます。特別に何かをしなくても、滞空時間が長くなりストライドが伸びるような感覚が得られます。足の回転もいつもよりスムーズになり、無理なく速度を上げていけます。「足が速くなった!」と錯覚してしまいそうです。
めちゃくちゃ気持ちよく、スピーディに走れる「ナイキ アルファフライ 3」なんですが、フルマラソンのレースシューズに選択するかと聞かれたら、筆者は横に首を振りそうです。というのも、筆者の走力・脚力では「ナイキ アルファフライ 3」の強烈な反発力をコントロールし続けることが難しいと感じたからです。
ロード、トラック、人工芝を走ってみたのですが、「ナイキ アルファフライ 3」で地面を踏むと“バコーン!”といった感じの反発があり、跳ねるように走ることができます。その大きなエネルギーリターンを前方向の推進力に変え続けられればいいのですが、疲れてフォームが乱れてくると前ではなく上方向に跳んでいるような感覚がありました。
「ナイキ アルファフライ 3」のポテンシャルを十分に活かすには、安定したフォームと、それを継続するスタミナが必要そう。自信のある方はぜひチャレンジを。短い距離を楽しむだけならどなたでも楽しんで走れると思います。
Photo: 神津文人