光の害と書いて光害。それは地球だけでなく、地球の軌道上にも広がっています。大きな人工衛星が地球低軌道上に打ち上げられ、展開に成功。これが夜空で悪目立ちしてしまいそうで…。
裸眼でも見える
テキサス州を拠点とする宇宙系スタートアップAST SpaceMobile。現地時間10月25日付で、9月に打ち上げた5つの人工衛星(BlueBirds 1から5)が、宇宙空間で無事展開に成功したと発表。5基ある人工衛星はどれも地球低軌道を飛ぶ商業向け人工衛星としては過去最大。打ち上げられ、宇宙で羽を広げたその機体は64平方mにもなります。これが5基。
機体が大きいことで、地上からも非常に明るく見えます。2022年に展開された試作機は、月や金星、木星、最も明るい7つの星を除き、空で最も目立つ存在に。BlueWalker 3は特に明るく、最も明るい星10のうちの2つ、プロキオンとアケルナルとほぼ同等。フル展開前でもすでに等級およそ+3.5で、人の裸眼でも確認できるほどでした。
AST SpaceMobileのミッションは、宇宙携帯基地局。今回の人工衛星5基は、その計画の始まりにすぎません。AST SpaceMobileの創業者兼CEOのAbel Avellan氏はプレスリリースにてこう語っています。
我々のチームは、既存のBlueBirdsより10倍のキャパを持つ次世代人工衛星の建造にすでに取り組んでおり、モバイル接続をより進化させ、世界中の顧客やパートナーによりよいものを提供できると信じています。
AST SpaceMobileは、2023年9月に、Samsung Galaxy S22と人工衛星試作機の間で5G通話を成功しました。
増え続ける人工衛星
増加する人工衛星に関して、専門家が米国連邦通信委員会に宛てた書簡によれば、過去12年で地球軌道上にある大型人工衛星の数はおよそ5倍にも増えているといいます。
天文学者は、人工衛星が大型化・増加することによる宇宙画像への映り込みを不安視しています。すでに問題は発生しており、人工衛星に反射の少ない塗料を使う、映り込みをソフトウェアで編集削除するなど対応策が話し合われています。
しかし、問題は天文学だけではありません。宇宙ゴミの増加もこれからの宇宙ビジネスの課題の1つです。書簡の中で専門家は、宇宙空間と大気圏を散らかさないようにするには、限られた短い時間しかないと警告。これを逃してしまうと、長い時間かけて「掃除」していくことになると呼びかけています。宇宙ビジネス競争と宇宙ごみは比例する必要はないとし、人工衛星を環境レビューから除外するのをやめるよう声をあげています。
AST SpaceMobileの人工衛星はその大きさから悪目立ちする存在になってしまいますが、地球低軌道上における衛星インターネット用の人工衛星群に乗り出しているのは他にもあります。言わずとしれたSpaceX、すでに6,000基の人工衛星が飛行中。他にも、Amazon、OneWeb、Lynk Globalなど多くの民間宇宙企業が地球低軌道上を狙っています。
地球だけでなく、今、宇宙でもサステナブルなビジネスが求められています。