今や、身近なものになりつつある「AI」。我々の生活はもちろん、ビジネスシーンにおいても活用されることが増えてきた。
特にビジネスパーソンにとって有用なのが「AI PC」。そのなかでも、インターネットに接続することなく、PC内でAIを活用できる「エッジAI」の注目が高まっている。スタンドアローンで使えるAI機能を強化したPCは、ビジネスパーソンの生産性をどのくらい向上してくれるのだろうか。
そこで、AI PCの真価と今後の進化を占うべく、日本HPの「HP Elitebook 1040 G11」と「HP Elitebook 630 G11」を例に、実際に使ってみた様子をレビューする。
なお、ギズモード・ジャパンで上記2機種を使ったレビュー動画がアップされているので、AI PCの実力について確認していただきたい。
エッジAIがもたらすビジネス上のメリットとは
通常AI機能を使うには、インターネット上のサーバーに接続する必要がある。これは一般的に「クラウドAI」と呼ばれる。
一方、端末内にAI機能を内蔵することで、クラウド上のサーバーにアクセスすることなく利用できるAI機能を「エッジAI」と呼ぶ。今回レビューする「HP Elitebook 1040 G11」と「HP Elitebook 630 G11」もエッジAIを活用できる。
ビジネスシーンにおいては、エッジAIは大きなメリットがある。ひとつが、セキュリティが確保されるということ。クラウドAIでは、ユーザーが入力した情報をクラウド上のサーバーに送信し処理をする。そのため、自分のPCから外にデータを出す必要がある。個人情報など機密性の高いデータをサーバーに送信してしまうと、情報漏洩のリスクが高まるのは理解できるだろう。
エッジAIでは、すべての処理をPC内で行い、データを外部に送信する必要がないため、データ漏洩の危険性がかなり低くなる。つまり、高いセキュリティが確保できるのだ。
また、エッジAIはレスポンスが速いというメリットもある。使用するたびにサーバーにアクセスする必要がないため、リアルタイム性が高くなる。AIを使用する頻度が高くなればなるほど、このレスポンスの速さは大きなメリットになる。
通信コストがかからないという点もメリットだ。AIを使うためにわざわざインターネットに接続する必要がないため、通信費の削減につながる。また、ネット接続の悪い僻地などでもスタンドアローンでAIが使えるようになるため、AI活用のシーンが広がるというメリットもある。
以上のようなメリットを考えると、AIの未来はエッジAIによって拡張されていくと言っていいだろう。
AI PCの使い勝手は?
エッジAIがビジネスシーンで非常に有用であることはすでに述べたが、そもそもPCとしての使い勝手が悪ければ意味がない。
「HP Elitebook 1040 G11」と「HP Elitebook 630 G11」は、AI対応のインテル® Core™ Ultra プロセッサーを搭載。プロセッサーがAIに最適化されているため、AI処理がスムーズな上、AIが使用状況を予測し、消費電力の抑制を実施。使えば使うほど賢くなり、省電力化が進むのだ。
「HP Elitebook 1040 G11」では最大約20時間、「HP Elitebook 630 G11」は最大約13時間のバッテリー駆動が可能。高速充電にも対応しているので、急なバッテリー切れにも対応可能だ。
また、「HP Elitebook 1040 G11」と「HP Elitebook 630 G11」の一部モデルは、インテル® vPro® プラットフォームに対応。インテル® ハードウェア・シールド機能により、OSやアプリだけではなく、ハードウェア、BIOS、ファームウェア、仮想マシン(VM)などのセキュリティも行うことで、外部からの悪意あるアクセスなどからの保護と防御が行える。
また、インテル® アクティブ・マネジメント・テクノロジーによる強力なリモート管理機能を提供しており、2024年7月に世界規模で発生したブルースクリーンエラーもリモートで修復可能なため、ダウンタイムを最小限に抑えることが可能だ。
なお「HP EliteBook 1040 G11」の一部モデルでは、PCののぞき見によるビジュアルハッキングを抑止するための内蔵型プライバシースクリーン機能を搭載。ワンタッチ操作でプライバシー機能の有効・無効を切り替えることができる。
そのほか、ユーザーが手動でウェブカメラのシールドを開閉できる「プライバシーシャッター」を搭載。状況に応じて使い分けることで、よりセキュリティレベルをアップさせることが可能だ。
オンライン会議などでは、サウンド面も重要になる。両機種ともに、高品質なビデオ会議システム「Poly Studio」がオーディオチューニングを施したマイクを搭載。会話に適した周波数帯域で音声を伝えるため、ウェブ会議などで最適な音質で音声を届けられる。また、AIベースのノイズリダクションにより、タイピング音や紙が擦れる音、周囲の騒音などを低減する。
両機種ともインターフェイスが豊富なことも特徴。特に「HP Elitebook 630 G11」には、有線LAN端子も搭載。より安定したネット接続を行いたい場合に有用だ。
AI PCは、AI機能の進化ばかりに目が行きがちだが、PCとしての性能も確実にアップしている。使い勝手のいいPCに、頼りになるAI。このコンビネーションがこれからのビジネスシーンでは定番になっていくのは間違いないだろう。
エッジAIでAIアプリケーションを使ってみた
エッジAIの普及により、PCで使えるAIアプリケーションが登場している。そこで、いくつかのAIアプリケーションを「HP Elitebook 1040 G11」と「HP Elitebook 630 G11」で使用してみた。
●ELYZA
国産の大規模言語モデル(LLM)であるELYZA(イライザ)を使用。現在はデモ版だが、レスポンスは快適。さすがエッジAIといった感じだ。ちょっと知りたいことがあるときに、気軽に尋ねると答えてくれる有能なアシスタントとして使えるだろう。
●Stable Diffusion
「Stable Diffusion」は、インテル製CPUのNPUを用いて画像生成が行えるAIだ。使用するには、無料の画像編集ソフト「GIMP」と、プラグインの「OpenVINO AI Plugins for GIMP」が必要となる。プロンプトは英語のみだが、簡単な単語を並べるだけで画像が生成される。処理速度はGPUを使っていないとは思えないほどスムーズ。だいたい1分ほどで画像ができあがる。画像生成AIは処理に時間がかかるものが多いが、Stable Diffusionならばかなり短時間で作成が可能だ。
上記で試したサービス以外にも、ウェブカメラの映像にAIを駆使して最適な背景ぼかしやアイコンタクト(視線をカメラに合わせる)、自動フレーミングなどの機能を自動的に適用する「Windows Studio Effects」や、AIによる動画編集が行えるソフト「Filmora」なども使用できる。
エッジAIでは、ネット接続が不要なため、処理の際のタイムラグが少なく、まるで通常のアプリを使っているかのような感覚。さらにアプリが増えていくと、もはやユーザーはAIを使っているという感覚がなくなっていくだろう。そして、それこそがAI PCの真の姿であるとも言える。
AIをもっと身近に手軽に使える「AI Playground」
先に述べたように、AI PCでは誰もがAIを手軽に使えるようになっている。しかし、インテルはもっとAIを身近なものにするべく、AIスターターアプリ「AI Playground」を提供している。
※インテル® Core™ Ultra Hシリーズプロセッサーにのみ対応
これは、生成AIに初めて触れるユーザー向けに、手軽に生成AI体験ができるアプリだ。もちろん、エッジAIなのでインターネットへの接続は不要。AI PCだけですべてが完結する。
簡単なプロンプトの入力による画像生成や画像編集、ローカルLLMとのチャットが利用できる。機能的にはかなりライトなものだが、AI初心者にとってはわかりやすく、AIで何ができるのかを体験するには最適なアプリといえる。何より手軽に使い始められるのはありがたいところだ。
「生成AIに興味はあるけれど、なんだか難しそう」
「AI PCを買ってみたけど、何をしたらいいのか…」
そんなことを思っている方は、「AI Playground」をぜひ使ってみてほしい。来るべきAI時代を手軽に体験できる、未来への入口だ。
これからのビジネスシーンにはAI PCが不可欠な存在に
今回、「HP Elitebook 1040 G11」と「HP Elitebook 630 G11」を使ってみて感じたのは、AI PCはAIに対応するために高機能になっているだけではなく、PCとしての使い勝手も大きく向上しているということだ。
コンパクトなボディながらロングバッテリーを搭載し、各種セキュリティの機能も充実しており、ビジネスシーンで安心して使える性能となっている。
また、AI関連のアプリケーションがすでに揃っているのも魅力的。「HP Elitebook 1040 G11」や「HP Elitebook 630 G11」を買ったその日から、最先端のAIアプリを使うことができ、生産性の向上を期待させてくれる。あとは、どれだけ自分がAIを使いこなせるようになるかだ。
PCとしての完成度も高く、AIとの親和性も高い日本HPのAI PC「HP Elitebook 1040 G11」と「HP Elitebook 630 G11」。これからのビジネスシーンでは欠かせない存在となるだろう。