こんな「猿も木から落ちる」は嫌。
記録的な熱波に見舞われているメキシコで、絶滅危惧種のサルが酷暑で脱水症状を起こし、木から落ちて大量死しているのが確認されました。
原因は熱波による脱水症状
ホエザルが木から落ちて死んでいるとの報告が相次いだのは、メキシコ湾沿いのタバスコ州で、居座るヒートドームによって最高気温が47度に達する地域も。当局によると、5月26日までに157匹のホエザルが死んでいるとのことです。
タバスコ州では当初、生物学者のGilberto Pozo氏が木から転落して死んでいるホエザルを83匹確認。原因は重度の脱水症状だったそうです。
ホエザルの大量死がはじまったのは、5月5日頃だったと同氏は言います。当初は、近隣農家によるたき火の煙が原因じゃないかと思っていたそうですが、気温が40度近くまで上昇して、報告数が増えてくると、暑さによって脱水症状を起こしたホエザルが次から次へと木から落ちたと確信したそう。
Pozo氏は、ひどい脱水症状を起こしてリンゴのように木から落ちていたホエザルたちは、数分で死んでいったと話します。弱り切った状態で数十mも落ちたら助かる可能性はかなり低いですよね。
国際自然保護連合(IUCN)から絶滅危惧種に指定され、中南米の熱帯林の樹上で暮らすホエザルは、本来このような環境に長期間耐えられるそうなのですが、さすがに47度に達するような熱波は耐え難かったみたいです。人間みたいに天気予報で事前に死ぬほど暑くなるのを知って備えることもできないですものね。
科学者らは、果実とともに水分の補給源になっている小川や葉っぱなどが干ばつによって枯れてしまい、水分をとれなくて脱水症状を起こしたのではないかと推測しています。
治療中のホエザルは快方に向かう
気休めにしかなりませんが、生き残ったホエザルもいます。治療にあたっているSergio Valenzuela氏によると、脱水症状で高熱を出していたサルたちは熱射病でぐったりしていたそうです。
治療をはじめたときは扱いやすかったサルたちも、回復するにつれて本来の攻撃的な特徴を発揮して、かみつくようになってきたそうです。かまれる人はたまったもんじゃないかもですけど、元気になってきてよかった。病気になったうちの飼いネコが回復して、薬をあげるときに引っかいたりかみついたりしてきたら安心しますもの。
Pozo氏は、大量死しているホエザルを「炭鉱のカナリア」に例えて、気候変動によって生態系や生物はより過酷な環境にさらされること懸念しています。
メキシコ各地で記録的な最高気温をたたき出しているヒートドームによって、5月12日から21日までに22人の死者が出ています。3月中旬からの暑さ関連死は48人に達しています。昨年と一昨年の同期間における暑さ関連死は2~3人だったとのこと。なお、この暑さは10日以上続くと予想されているため、まだまだ安心できなそうです。
過去にもホエザルの大量死が
ホエザルの大量死が起こったのは、今回がはじめてではありません。2016年には、干ばつで高気温が続いた中米のニカラグアで、3カ月の間に数百匹のホエザルが死んでいます。原因は特定されていないようですが、暑さと干ばつという共通点はありますね。
また、2016年といえば史上最強クラスのエルニーニョ現象が終わった年になるんですけど、今年もちょうどエルニーニョ現象が終わったばかりなんですよね。なんか怖い。
IPCC(気候変動に関する政府間パネル)の報告書によると、産業革命前比で気温が2度上昇した場合、陸上に生息するすべての生物種の18%が絶滅の危機にさらされます。また、IUCNは絶滅危惧種に指定されている種のうち、現在すでに気候変動の影響を受けている1万967種の絶滅リスクが高くなると警鐘を鳴らしています。
人間活動による乱開発に加えて、気候変動の影響を受けた干ばつや熱波、豪雨、洪水、森林火災などの極端化によって、今後ますます野生動物のリスクが高くなりそうです。
Reference: Reuters (1, 2) Associated Press / YouTube, PBS, IUCN Red List, The New York Times, The Scientist, IPCC, IUCN