20年ぶりの大きな「太陽フレア」、いったい何が起こっていたの?

5月10日、この20年で最も強い太陽フレアが発生しました。

大規模な太陽フレアが生じ、地球に向けて高エネルギーの粒子などを放出したことで、地球の磁場を乱す「磁気嵐」が発生。その結果、電力網の障害や無線通信の途絶が起きたのです。

20年ぶりの大きな磁気嵐

アメリカ海洋大気庁(NOAA)の宇宙天気予報センターは現地時間の9日、激しい磁気嵐を生じさせるコロナ質量放出(CME)を少なくとも5つ観測したとする異例の注意報を出しました。

太陽から放出された放射エネルギーは10日に地球に到来し始めて12日まで続き、世界各地の空には色鮮やかなオーロラが広がりました

素晴らしい自然現象は別として、この磁気嵐は軌道上のブロードバンド衛星とGPS衛星に影響を及ぼしたのです。

アメリカ海洋大気庁はこの磁気嵐を、2003年10月以来となる「G5」すなわち“最高レベル” 分類。太陽は11年周期の中でも活動が活発になっていて、激しい太陽フレア、コロナ質量放出、そして巨大な黒点を特徴とする期間、太陽極大期に近づきつつあります。

観測された直近のコロナ量放出は、幅が約20万kmに及ぶ黒点群AR3664と関係がありました。この黒点群は視線方向から消えつつありますが、日食メガネで見ることができるほど大きかったそう。

記録史上最も激しかった太陽嵐といえば、1859年に発生したキャリントン・イベント。地磁気嵐のスケールではG5にあたり、コンパスが狂うだけでなく電信線を通って電報局内での発火までもあったとか。

今回の磁気嵐はG5の中でも低い方で、たくさんの被害を引き起こすには至らなかったものの、それでも太陽表面での爆発現象は、私たちが日々依存しているテクノロジーに大きな影響がありました

通信障害が発生

太陽からの荷電粒子(電荷を帯びた粒子)が地球の大気に衝突すると、地球の磁場に振動が生まれます。

アメリカ海洋大気庁の宇宙天気予報センターはNPRによる取材の中で「11日までに電力網の異常、短波通信(3 MHz~30 MHzまでの周波数帯で、一般的には軍事作戦、レーダーシステム、そして洋上の船舶への連絡を含む長距離通信に使われる)の途絶、そしてGPS障害の報告があった」と語っていました。

Space.comによると短波通信の途絶は、Xクラスの太陽フレアが10日朝の早い時間にピークを迎えた直後にアジア全域、東ヨーロッパ、東アフリカでも観測されたとのこと。

太陽放射は地球の上層大気にある地球の電離圏に影響を与え、この層を通る衛星からの電波通信に干渉し得る変動を引き起こします。その変動により、地上からの電波通信は電離圏で反射されなくなったり、地球の上層大気に増えた電子を通過して相互作用するにつれて通信が劣化したりすることも。

11日にはイーロン・マスクが、「現在発生中の大規模な地磁気嵐がSpaceXのブロードバンドインターネット衛星の負担を引き起こしている。スターリンク衛星は重圧下にあるが、今のところ持ち堪えている」とXに投稿しています。

農業機械のトラブルも続出

サウスダコタ州では農業従事者が農業機械のトラブルに見舞われ、GPSシステムはトラクターが円を描いて回っていると示し、オートステアが機能しなかったという話を、地元のニュースサイトが報じていました。

農業機械メーカーJohn Deere(ジョン・ディア)は10日、ユーザーに向けていくつかのトラクターシステムの精度が「大いに低下した」可能性を警告するテキストメッセージを送信しています。

翌日に更新したお知らせには「基地局は磁気嵐に影響された補正情報を送っていて、それが耕地に大幅なズレ、さらには(トラクターの)極端な進行方向の変更までも引き起こしていた」と書かれていました。

軌道上の衛星にも遅れて影響

太陽プラズマによって大気が加熱されると、衛星を軌道から引き下ろす大気抵抗が増加するため、軌道上の衛星にも遅れて影響が出る可能性も。NASAいわく、2022年2月にはコロナ質量放出のせいで商業衛星38基が落下したとか。

科学者たちは何世紀にもわたって太陽を観測していますが、宇宙天気の予測精度を上げる方法を含めて知らないことがまだまだたくさんあります。

今回の太陽嵐は、太陽表面の爆発現象を詳しく観測し、地上に与える影響についてもより深く学ぶ機会を科学者たちにもたらしました。4月の皆既日食に続いて今回の地磁気嵐、何やら忙しないですね。

Source: CNBC, NOAA, NOAA SciJinks, NPR, Space.com, X(1, 2,), KFYR-TV, NASA Scientific Visualization Studio,

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