99.3%の光を吸収。宇宙望遠鏡用の超漆黒コーティング

現在でさえ宇宙望遠鏡が捉えた画像は毎回息をのむほど美しいものばかりですが、その上をいく絶景を見られるようになるかもしれません。

中国の研究チームが、航空宇宙分野で使われる合金用の超漆黒コーティングを開発しました。それが塗布された宇宙望遠鏡なら、宇宙の暗闇に紛れてさらにクオリティの高い天体写真を撮影できそうです。

上海理工大学の研究チームが開発したのは、望遠鏡や光学機器を製造するための鋳造材であるマグネシウム合金用の超漆黒の薄膜コーティング。彼らによれば、このコーティングはほぼすべての光を吸収しながらも、宇宙の過酷な環境に持ちこたえるほどの耐久性があるとのこと。

研究の詳細は、科学ジャーナル『Journal of Vacuum Science and Technology A』に掲載されています。

これまでの黒色コーティングの難点を克服

研究者たちは、真空チャンバー内に置かれた対象物を特定の種類のガスにさらす「原子層堆積法」という製造技術を用いました。

黒色のコーティングは光を吸収するには理想的ですが、宇宙空間で持続するにはあまりに脆いことも。「他の多くの成膜方法では、管の中や他の複雑な構造にコーティングを施すのが難しい」と、今回の研究の共著者で中国科学院上海セラミックス研究所のYunzhen Cao教授は、リリースの中で説明しています。

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Photo: Jin et al.

前述の製造技術でなら、この新たな黒色コーティングを円筒、支柱、溝といった複雑な表面に施せます。「光学デバイスは大きな曲率や込み入った形状が多いので、この点は光学デバイスへの塗布において重要なんです」とYunzhen Cao教授は補足していました。

超漆黒のコーティングを作るにあたって、チームは吸収層として作用する炭化チタンアルミニウム(TiAlC)と、反射防止構造を作るために使われる二酸化ケイ素(SiO2)を交互に堆積した層を用いました。この2つが組み合わさると、コーティングされた表面からの光の反射をほとんど防ぎます。

論文によれば、この超漆黒コーティングはテスト時に幅広い波長帯の光の99.3%を吸収したとのこと。コーティングの性能についてCao教授は、前述のリリースにこんなコメントを寄せていました。

「さらに言うと、薄膜は悪環境においてすばらしい安定性を見せ、摩擦、熱、湿気をおびた状態、そして極端な気温の変化に耐えられるほど頑丈です」

さらなる改良を目指す

研究者たちは宇宙望遠鏡の性能を向上させるためにも、超漆黒コーティングの光吸収能力をさらに高めて性能を改良したいと考えています。

そうなれば、私たちは今まで以上に魅力的な宇宙画像を目にする日が来るかもしれません。

Source: Journal of Vacuum Science and Technology A, EurekAlert!,

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