新型MacBook Air:よく言えば「安定」悪く言えば「ぬるま湯」

3月頭、唐突に発表された新型MacBook Air。Apple最新のM3チップが搭載され、お値段は前モデルから据え置きなのが魅力です。

3月8日の発売とその後の口コミを待って検討しようという人向けに、米Gizmodoがさっそく使ってレビューしてきました。ソッコーで購入を決めた人はそれもまたよし。

感想をまとめると、M3チップは素晴らしいこと間違いなし。ただ、前モデルのM2 Airとの差はスペックの数字ほどは感じられないこと。また、M3搭載のMacBook Proとは差別化が難しくなっており、「で、どれ買う?」という迷いが生じちゃうよね、と。

以下、レビューです。


1日の中でもっともよく使うガジェットってなんでしょう? スマホと思いきや、私の場合は違うんですよね。忙しく長い1日でいちばん一緒に過ごしているのは13インチのM1搭載MacBook Air。レビュー仕事などでいろいろなラップトップを触る機会は多いですが、やっぱり私の相棒はちょっと古いけど軽量なMacBook Air(M1)。

既存のMacBook Airユーザーにとっては、M3チップを搭載した新型も安心できるお馴染み感があります。

ぬるま湯に浸かってません?

よくも悪くもお馴染み感…。よく言えば安定感、悪く言えばマンネリ。

新型MacBook Air (M3)も、今までのモデルと同じくシャープでスリムなデザインですが、その薄さの代わりに妥協しないといけないことも多くありません。今までも、今も大きな不満がない端末。それがAir。

これは逆に言えば、M2チップ搭載の前モデルから3Mチップ搭載の新モデルになっても大きなアプデはないとうことで、良モデルだからぬるま湯に浸かってんなぁ、なんて思ってしまう自分もいます。

M3 Air登場でM2 Airが100ドルほど(日本では1万500円ちょい)安くなっていることを考えると、さてどっちがいいのかなぁ。価格差分、実感できるのかなぁ。M3 Airにするかどうかは、チップ性能バッテリーもち外部モニター2台に接続できること、これが欲しいかなんですね。ただ、とくに前者2つはどれほど実感できるかは人それぞれ。

ユーザーによってはチップ差の実感なし

AppleのMチップのベンチマークを見るとその差は歴然。絶対新しい方がいいぞ!と思います。が、これユーザーが何をするかによって変わってきますよね。正直、私の日々の使い方では、M1 AirとM3 Airの差を実感することはほぼありませんでした。

昨年リリースされたM2 Air 15インチと今年のM3 Air 15インチ、2年前の13インチM2 Airと今年のM3 Air、見た目はほぼ瓜二つ。

14インチMacBook Proの存在意義がない?

もっと気になるのは、14インチのMacBook Proの立場…。

MacBookシリーズの中で今1番気まずい思いしていると思うんですよね、24万8800円の14インチMacBook Pro。M3 Airよりもずっと高いのでね。そりゃ、スクリーンサイズは異なりますが、軽量モデルと同じチップ が載っちゃってる。メモリも同スペックで、編集部のベンチマークでは性能もほぼ同じ。Proというネーミングが肩に重そう。自分の存在意義に悩んでいそうです。

今後、AirとProの棲み分けってどうなっていくのでしょうか。

薄い・軽い・静か

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Photo: Kyle Barr / Gizmodo:M1 AirからM3 Airまで並べてみた。

13インチは2022年リリースされたもの、15インチは13インチをそのまま大きくした2023年リリースされたものと、新型もデザインは同じ。カラバリすらM2 Airと同じです。

Proでも採用されているアノダイズ処理された層が加わったので、指紋は目立ちにくくなっています。その影響もあるのか、カラー名は同じですが、M2 AirとM3 Airのミッドナイトカラーを横に並べてよく見ると、若干色味が違います。並べるとわかる程度ですけどね。

逆に、新型MacBook Airにデザインの不満はないとも言えます。今までなかったから。機動性で気になる重さは、13インチは1.24キロ、15インチが1.51キロ。

冷却ファンがないのに端末がヒートアップしないのがAirの魅力。レビュー中は通常使用で、15インチが1番熱くなって29度弱。これは上出来と言っていいかと。ファンがないので、うるさくないのが何よりいいんですよね。静かさ重視ならAirを選ぶ意味は大きいと思います。

一方で、ゲームを含む重めのタスクだともっと熱くなります。スクリーン付近で38度弱、キーボードが35度あたりまで上がりました。ゲーミングノートを使うゲーマーなら何も感じないかもしれませんが、MacBook Airでゲームはじめてみました勢はちょっと驚くかもしれません。

スクリーンと音の良さには期待していい

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Photo: Artem Golub / Gizmodo

15インチには6つ、13インチには4つのスピーカーシステムが搭載されています。当然ですが、15インチの方が音がいいわけです。

スクリーンはMacBookシリーズで採用されているIPS LCD Liquid Retinaディスプレイ。M2 Airも同じです。15インチの方は、2880 x 1864で明るさは500nits。ここ最近のMacBookと同じです。

OLEDスクリーンの搭載のMacBook Proの噂もありますが、実現すればそのうちAirもOLEDになるのかもしれませんね。

M3 Airの新機能としては、外部モニター2台に接続できるということ。ただ、接続している間はAirの画面自体は使えないという…ね。これ、マルチディスプレイ使いの人にはがっかりな仕様です。MacBook Proは3台まで接続できるので、ここはAirとProでちょっと差がつけられていますね。

パフォーマンス

チップ性能だけのベンチマークは素晴らしいのですが、そもそも端末の構成にもよるよねって話。レビュー端末で届いのは、13/15インチともにメモリ16GB、容量512GBのモデル。GPUは13インチが8コア、15インチが10コアだったので、ゲームのお試しは15インチでやりました。

M3チップのライバルは、IntelのCore i7最新チップ。Core i7チップ搭載の中でも価格帯が低いラップトップと比べると、M3 Airのベンチマークが勝っています。ちなみに、13インチと15インチのパフォーマンス性能には大きな差は感じないので、迷ったらスクリーンのサイズだけで決めていいかと思います。

M2 Airリリース時にも言われていましたが、Intelチップ搭載のMacBookユーザーは大きな差を感じるので乗り換え検討ありです。むしろ、おすすめです。

Intel Core i7 14700-HXを搭載したAcer Predator Helio Neo 16と比べたところ(Geekbench・Cinebench)、CPUシングルコアではM3 Airの勝ち、ただマルチコアだとちょっと劣ります。

いっそM3 ProやMaxが欲しかった

いっそ、AirというライトモデルにもM3チップの高位モデルであるM3 ProとM3 Max積んじゃえばよかったのに、なんてね。

AsusのROG Zephyrus G14は、Intel Core i9とNvidia RTX 4070を載せても、厚さは1.56センチ。Airよりたった0.43センチ厚いだけなので、将来的にはハイスペックAirも期待してもいいよね?

M3チップでもネット観覧なら何も問題ありません。が、仕事でプロ機材として使うならやはりM3 Pro/ Maxのチップ(と冷却ファン)が搭載されていた方がいい。Blenderのベンチマーク(BMWの画像のレンダリングを実施)では、M3 Airが4分。これが、MacBook ProのM3 Pro/ Maxチップだと使用時間が半分になりますから。

長らくMac端末にゲームのイメージはなかったのですが、最近は公式も強く意識してきています。軽めのゲームは問題なし。グラフィック重めもプレイできることはできます。『Lies of P』と『バイオハザード 4』をプレイしてみました。

前者は、2560 x 1600の中画質設定で、AppleのMetalFXアップスケールで60FPSでました。悪くはないけど、ベストでもない。後者は、MetalFXではなくパフォーマンスモードの低画質設定で60FPS。Appleのハードでもうまく動くよう開発されたゲームであることをふまえると、もうちょっと欲しかったかな。ちなみに、『バルダーズ・ゲート3』は、低中画質で40FPS。

2世代前のM1 Airと比べると、Geekbenchスコアはシングルコアで1000以上、マルチコアで4000弱スコアアップしています。3D MarkのWild Life Extremeテストでは、スコアは約2倍。では、1つ前のM2 Airと比べると? シングルコアで500、マルチコアで2000ほどアップ。こちらもアップしているものの、飛躍的にとは言えません。

日々のネット作業、動画視聴程度ならば、M1 Air・M2 AirユーザーはM3 Airに大きな違いを感じないのが正直なところだと思います。M3 AirはWiFi 6E対応ですが、それも含めて大きなスピード変化を実感することはないかな。

スペック頼りの作業をするなら、差を感じることはできますが、それならそもそもProがいいよねって話になっちゃう。

ただ、M3チップ搭載のProはM3 Airと大差ないのもまた事実。最安値Proが、M3 Airよりも高いのがなぁ。ほぼ同性能なら薄い方がいいもんね。

バッテリーもち

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Photo: Artem Golub / Gizmodo:M2 AirとM3 Air、外観で見分けるのムズ。

M3 Airは、公式いわくウェブ観覧15時間、動画再生18時間のバッテリーもち。13インチが52.6 Whrバッテリー、15インチが66.5 Whrバッテリーなの。効率的だし1日持つと言っていいかと思います。

まぁ、これもやっぱり使い方しだいだろって話ですけどね。レビュー中、1日半充電なしで13インチのM3 Air使えた日もありましたし。ちょい性能がいる作業をしていると、1日持たなかった日もあったし。15インチでゲームしちゃうと、30%ぐらいすぐ減っちゃうし。

付属は30WのMagSafe充電器ですが、最大70Wの高速充電にまで対応可能。

総評

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Photo: Kyle Barr / Gizmodo

2年前リリースの前モデル同様に安定した新型。それゆえに、チップ以外で大きなアップデートは感じない。

コンパクト(薄い)けどパワーは欲しいユーザーにとって、MacBook Airは(画面サイズ問わず)魅力的なモデル。Appleのラップトップに求めることがすべて詰まっている。M1/IntelチップのMacBookユーザーは買い替えあり。一方、M2から買い替えを推奨するほどの差は見られない。

1番気になるのは、MacBook Pro 14インチとの差別化というか、存在意義。AirとProにカテゴリする意味が難しくなってきているのでは?

【価格】

13インチ:16万4800円から

15インチ:19万8800円から

【いいところ】

・M3チップ搭載による高性能

・スクリーンとサウンドが高クオリティ

・Appleの軽量デザインはいつもながら見事

・15インチはM3搭載MacBook Pro 14インチに差し迫る(いい意味で)

【残念なところ】

・M2からM3でチップ以外に大きなアプデが感じられない

・15インチはM3搭載MacBook Pro 14インチに差し迫る(悪い意味で)

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