2月上旬のこと、火星から見えるほど巨大な黒点群AR3576が地球に面し、天文学者や宇宙ファン、憂慮する宇宙天気予報士らの注目を集めていました。
パーサヴィアランスが発見
この黒点群を最初に見つけたのはNASAの火星探査車「パーサヴィアランス」で、1月の最終週にマストカムを使って観測。それからというもの黒点たちのサイズはかなり大きくなり、地球を向いたのです。
SpaceWeatherによると、この黒点群はなんと端から端までの距離が15万kmを越え、少なくとも4つの黒点暗部(中心の特に黒い部分)は地球よりも大きいそう。
幅は地球約12個分に相当するとてつもないサイズで、これらの黒点はISO規格の日食メガネを用いれば地球からも見えるほどでした。
上と下の写真は、米GizmoodoのDvorsky記者が特殊なソーラーフィルターを装着した2つの望遠鏡、「DWARF II」とUnistellar(ユニステラ)社の「eQuinox2」を活用して捉えた、この巨大黒点の鮮明な詳細画像です。
黒点とは?
黒点は太陽の複雑な磁場によって発生する、表面の温度が低くて暗い部分のことで、大きな斑点のように見えます。形成時に強い磁気活動が太陽の熱いガスの対流を妨げるため表面温度が低くなるのです。
太陽極大期という磁気嵐や太陽フレアなど太陽の活動がピークを迎える時期に、黒点はもっと頻繁にそして数多く発生します。
地上にいる私たちにとって宇宙天気に影響を及ぼし得る黒点は、時に衛星信号や電力系統に支障をきたし、航空通信にすら影響することも。
Dvorsky記者が撮影した画像もすばらしかったですが、以下はアルゼンチンのラファエラで活動する天体写真家Eduardo Schaberger Poupeauさんによる黒点AR3576の写真です。
1月29日に、この黒点についての情報を得たというPoupeauさん。黒点が地球を向いてようやく天気にも恵まれたタイミングで、やっとAR3576を撮影できました。彼にとっては、新望遠鏡の2度目のテストを行なうちょうどよい機会でもあったそう。
太陽黒点撮影用に地元で独自に設計して組み立てた特殊なニュートン式望遠鏡で、主鏡には黒点を精細に捉えるため加工がされているようです。
「固唾を飲んで、黒点に焦点を合わせました」とPoupeauさん。
ノートパソコンで見た画像は圧巻でした。暗部から成る巨大な群島のようなものがおよそ15万kmにわたって太陽表面に広がっていた。そのうえ太陽表面の粒状斑もはっきり見え、この黒点で最大の暗部を横切っているライトブリッジに感銘を受けました。本当に、太陽にはいつも驚かされます。
複雑な磁気構造を特徴とするこの黒点群は、別の活動領域AR3575と共にMクラスのフレア(短期間の電波障害を引き起こし得る中規模の太陽フレア)を起こしていました。
NOAAの宇宙天気予報センターによる2月上旬時点での観測は、どちらの領域もMクラスのフレアを起こし続ける恐れがあり、数日中には最も激しいXクラスフレア(もっと大規模で長い通信障害を引き起こし得る)の可能性もあると示唆。
予報どおり、その後AR3575からXクラスのフレアが発生したのでした。
Source: SpaceWeather.com(1, 2), Instagram, Space Weather Prediction Center,