ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡(JWST)が撮影した1987年超新星A「SN 1987A」は、NASAいわくこの数世紀の間に観測されたなかでも、最も明るく最も近い超新星の1つ。
この画像は2022年9月に撮影されていたものの、最近になってようやく公開された1枚です。JWSTの近赤外線カメラ(NIRCam)で撮影した異なる波長の画像を合成したもので、画像の幅は8.5光年になります。
超新星の細かな構造を明らかに
画像からはSN 1987Aの赤道と外側のリング、三日月型の構造、そして真ん中の噴出物(“鍵穴”のような形の部分)が見て取れます。“鍵穴”部分にはJWSTの鋭い観測力でも透過できないほど高密度の塵とガスが存在しています。
宇宙望遠鏡科学研究所(STScI)のリリースによると、この天体の赤道リングは超新星爆発の何万年も前に星から放出された物質でできているとのこと。環に含まれる明るい輝点は、超新星の衝撃波が外向きに広がりリングにぶつかって生じたものです。
SN 1987Aは、天の川銀河の伴銀河である大マゼラン雲に存在します。大マゼラン雲内には、巨大なガス雲が重力崩壊を起こして新しい星を誕生させる星形成領域が散らばっています。
しかし超新星のSN 1987Aは星が死を迎える際の爆発によって輝くので、星の一生の反対側にいると言える存在です。
超新星は長波から短波、ガンマ線などさまざまな電磁放射線を放出します。NIRCamという名前が示すように、JWSTの観測では超新星残骸からの近赤外線を捉えました。
JWSTの高解像度画像から、超新星によって生じたガスの外層だと思われる三日月型の構造が明らかになったのです。
JWSTがSN 1987Aを観測したのは今回が初めてですが、大量の塵が含まれる別の超新星を観察したことも。
7月に発表された2つの超新星の観測に携わったSTScIプロジェクトリーダーOri Fox氏は、JWSTがSN 2004etで「SN 1987A以来の、超新星から検出した最も大きな塵の質量」を観測したと述べていました。
SN 1987Aに関しては、その中性子星の存在など依然として未解決の疑問もあります。この超新星をさらに調べるにしろ、他の天体を見るにしろ、JWST による今後の観測は謎の解明に役立つでしょう。
Source: Webb Telescope, NASA, The New York Times,