赤肉アレルギーがアメリカで急増中。原因はダニ。

アメリカで約45万人が発症中。

新しい研究によると、大好きなステーキを食べられなくなっているアメリカ人が増えているそうです。原因は小さなダニ。ダニの咬傷によって「Alpha-gal症候群」が発症し、赤肉アレルギー反応が出てしまうとのことです。

赤肉アレルギーはどう起こる?

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Image: CDC/Michael L. Levin

Alpha-galはほとんどの哺乳類の筋肉に存在する糖分ですが、人間は持っていません。人間が他の哺乳類の動物から臓器移植ができないのは、体内に「Alpha-gal」を持っていないことが理由の一つです。Alpha-galが私たちの体に入ってくると重度の免疫反応(アレルギー反応)を起こす可能性があるということです。

ちなみに最近は、遺伝子編集技術でAlpha-galを持たない豚を生成できるようになっているので、豚から人間への臓器移植の試みもあったりします。

通常、人間は食べ物に含まれるAlpha-galに対しては免疫反応を起こさないのですが、マダニや他のダニに咬まれると、何らかの理由でAlpha-galとそれを含む赤肉や乳製品に対して体が過剰反応を引き起こすことがあります。

この過剰反応は、典型的な食物アレルギーと同様に、免疫グロブリンE抗体を作り出すことが引き金となり、症状が起こります。

これは認知されている唯一の炭水化物食物アレルギーなんだそうです。症状は通常、他の食品の場合は数分で現れるのに対し、Alpha-galのアレルギーの場合は摂取後何時間か経ったあとに出てくることが多いようです。

研究が追いついていない

ダニがAlpha-gal症候群を引き起こす可能性があると発見されたのは約20年前。しかし、いまだにこの症状についてはよくわかっておらず、どれくらいの人が患っているのかもわからないのが事実です。

今回の研究では、疾病管理予防センター(CDC)のチームとのAlpha-gal専門家たちが協力して、Alpha-gal症候群について詳しく調べてみることになりました。

まず、2017年から2022年までにアメリカで収集されたAlpha-gal抗体検査のデータを調査。特筆すべきは、アメリカの中でAlpha-galのデータはたったひとつの研究所にしかなかったのです。というのも、最近までアメリカでAlpha-galの検査が可能だったのは、その研究所のみだったからです。

アメリカの中で10番目に多いアレルギーに?

研究期間中に29万人以上の検査が行なわれ、その結果、約9万人にアレルギー反応陽性が出ました。また、以前の検査データを組み合わせることで、研究チームは2010年から2022年検査記録すべての中から、Alpha-gal症候群と思われる症例を11万229件特定しました。

陽性結果の中には、実際に症状が出ていない可能性もあります。しかし、同時にアレルギーを発症した多くの人が、検査を受けていない、もしくは一切医療機関に相談することもないままという可能性があるそうです。

研究チームは、2010年以降にアメリカでダニから発生した赤肉アレルギーを発症した人は、最低でも9万6,000人、最大で45万人にもおよぶとしていますが、実際はもっと数が多いと考えられています。疾病管理予防センターによって今週発表された研究では、調査対象だった医療専門家のうち42%が、この症状の存在さえ知らなかったことがわかりました。

この研究の著者であり、ノースカロライナ大学医学部のアレルギー・免疫学のScott Commins教授は、「もし我々の出した推定症例数の約45万件が正しい場合、アメリカで10番目に多いアレルギーとなります。9番目は約50万人の胡麻アレルギーです」とCNNに語っています。


この推定数を確実にするためには、さらなる研究が必要ですが、Alpha-galの年間陽性結果の数は、2022年までどんどん増加しているため、状況はあまりよくないと言えるでしょう。

他の研究によれば、アメリカ南部や中部でマダニの分布範囲が拡大し続けているとされています。気候変動などが要因となり、さらに感染機会が増えることが懸念されています。

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