スマホの充電器の定番といえばAnker(アンカー)。
さらに家電用のポータブル電源も忘れてはいけません。Anker PowerHouse 767は、Anker製品の中でも最も大きなバッテリーで、万が一の停電時にも安心、キャンプにも大活躍します。
Anker最大級のポタ電って実際どうなん? 米ギズモードが家庭の非常用電源としてレビューした結果をお届けします。
Anker PowerHouse 767 Portable Power Station
これはなに?:Anker最大級のポータブル電源。モバイル機器の充電を数週間維持できるほか、停電時に冷蔵庫のような大型家電に対しても数日間電力を供給し続けることができる。
値段:2,000ドル(日本では29万9900円で販売)
良いところ:グランピングや災害時・停電時の電源バックアップとして活躍。オプション・アクセサリーがあれば、ガス発電機なしでも、その代わりになる。
残念なところ:ソフトウェアのバグにより、時々充電量と残使用量の見積もりの表示が不正確になる。
私のアメリカの自宅は地下電線で安全な地域ですが、強靭なインフラであるとはいえません。
ここ数年、何回か嵐で送電線が倒れ、数日間電気が使えないことがありました。そして過去には、冷蔵庫3台分の食料が失われるほどの停電に見舞われたこともありました。
嵐で家が破壊されることと比べたら、食料がダメになるくらいまだマシなもんなのですが、この経験から非常用電源を探していました。
Anker PowerHouse 767は、自分が理想とするソリューションに限りなく近いものでしたが、その価値は使用目的や停電時の深刻さによって異なります。このクーラーボックスのようなサイズのポータブル電源で、非常時にどれくらいの期間電気を維持できるかというのは、どこまでの快適さを確保したいかによって決まります。
非常用電源としては燃料いらずで取り回しがラク
Anker PowerHouse 767は、ACコンセント、USB-A、USB-C、シガーソケット、ソーラーパネル用、拡張バッテリー用など、必要なあらゆるポートを装備しています。
私のニーズでは、PowerHouse 767のようなポータブル電源の最大の魅力は、シンプルに使い勝手の良さにあります。
ガス発電機も同じように持ち運びができる機種がありますが、ガソリンを保管する安全なスペースが必要かつ、騒音やガス臭が発生するため屋外でしか使用できず、よって家の中に電力を運ぶには長い延長コードが必要になるなど、それなりの制約と、定期的な手入れが必要になります。よって、ガス発電機の選択肢はありませんでした。
それに比べて、バッテリー式のPowerHouse 767は当然屋内のどこででも利用可能で、よほど電力を食う家電を接続しないかぎりファンはほぼ完全に無音で動作します。重量が約30.5kgとかなり重いため、持ち運びしやすいようにデザインされています。
スーツケースのような伸縮式ハンドルと、4.72インチのホイールで、小さな障害物やフローリングの急な段差でも、比較的簡単にゴロゴロ持ち運ぶことができます。
しかし約30.5kgのPowerHouse 767を持ちながら階段を昇り降りする必要があるときは少し大変。両サイドに頑丈なハンドルがあり、気合で持ち運びができるようになっていますが、腕力に自信がなければ2人で運ぶことをおすすめします。PowerHouse 767は、落としても大丈夫なように設計されているかもしれませんが、誰かの足の上に落ちてしまったら大惨事です。
冷蔵庫を34時間稼働させることができた
PowerHouse 767の使い方はとても簡単。
前面には、4つのアース付きACコンセント、大型TT-30Rコンセント(日本仕様にはないもの)、2つの12Vカーソケット・コンセント、USB-Aポート2つ、USB-Cポート3つがあり、それぞれ最大出力100Wで、ノートパソコンなどの大型電子機器の充電に使用することができます。
各種USBポートは、機器を接続すると自動的に給電を開始します。その他のコンセントはボタンを押す必要がありますが、接続した機器が電力を消費しない状態が15分続くと自動的にオフになり、ポータブル電源のバッテリー寿命を延ばすことができます。
各種コンセントの上には大きなLCDスクリーンがあり、充電残量がパーセント表示でわかるようになっています。また、接続された機器に給電しているコンセントをしめすアイコンや、PowerHouse 767のバッテリー持続時間の推定値も表示されます。
前面には長いLEDライトあり、でっかい懐中電灯のような役割も兼ねることができます。LEDライトは、3段階の明るさ設定が可能で、緊急時にはS.O.S.点滅もできます。
しばらく使ってみた上での要望としては、停電が検知されたとき(例えば充電しているコンセントから電力が供給されなくなったときなど)に、自動で点灯する機能があれば、夜中に電気が全部つかなかくなったときでも場所を特定しやすくなると思いました。
背面にはヒンジ付きパネルに隠れて、リセットボタン、オプションのソーラーパネル接続用ポート、そして電源ケーブル用ポートがあります。コ
ンセントに接続した場合、PowerHouse 767はバッテリーをフル充電するまでに2時間しかかかりませんが、Ankerによれば、1時間で80%の容量に達するとしています。
さらに背面には、追加オプションのポートがあります。セカンドバッテリーとしてのAnker 760 Expansion Batteryに接続することで、容量は実質的に2倍になります。
さらに、AnkerのモバイルアプリとBluetooth接続することができます。バッテリー寿命を長く保たせるために、Bluetooth機能を完全にオフにすることも可能です。
このアプリでは、バッテリーの遠隔操作やモニタリング、さらにスクリーンの点灯時間などの設定を行なうことができます。ある朝、一晩中電源に繋いでいたにもかかわらず、バッテリー容量がわずか33%で、推定充電時間が293日以上であることを発見したときの謎のバグを早期に発見し解決するのに役立ちました。
私がテストで接続していた冷蔵庫は、地下にあったのですが、アプリのおかげで、毎回階段を上り下りする必要なく、パワーステーションの状態を把握するのにとても便利でした。
いっぽう「残り使用時間」の表示はかなりばらつきがあるのもわかりました。例えば冷蔵庫は庫内の設定温度を維持するために、冷却機能のオン・オフを繰り返します。そのため、オンの時の消費電力で残り時間を単純計算してしまうと、「残り使用時間」の予測は大きく外してしまうのです。しかしアプリ側で学習されるのか、時間が立つにつれ精度はあがっていきました。でも完全に信頼できる値ではないことは確かです。
PowerHouse 767は、残量5%になるまで、フルサイズの冷蔵庫に約34時間電力を供給し続けることができました。これには驚きました。スマホやタブレットの充電だけなら、数日どころか1週間以上は電力が持ちそうです。
さらに、卓上エアフライヤーと冷凍の卵焼きの調理を試してみました。エアフライヤーは1,620W以上を消費するので、たった20分でパワーステーションの容量の20%を消費しました。そして冷凍のチキンウィングの調理では、25分間のエアフライヤーの稼働で、充電容量はあっという間に50%になりました。エアフライヤーを停電時に稼働させると、1.5時間で電気を使い切ることになるため、後悔する未来が見えました。
非常用電源はバッテリーとガス発電機、どっちが良い?
暴風雨や、猛暑の電力網の過負荷など、停電対策が必要な全ての人は、ガス発電機の代わりにAnker PowerHouse 767のような大型バッテリーは選択肢としてどうなのでしょうか。
状況やニーズは人それぞれです。ガス発電機の大きなメリットは、停電が復旧するまで何度でも備蓄したガソリンを補給できる点にあります。そもそもバッテリーは充電するための電力源が必要で、PowerHouse 767の場合、長時間の停電時にはソーラーパネルからの電力が必要となります。
非常用電源としてバッテリーを使用するにもコストがかかります。PowerHouse 767は、現在2,000ドル(日本では約30万円)で販売されており、容量を2倍にするオプションの拡張バッテリーにはさらに1,000ドル(日本では約19万円)、ソーラーパネルにはさらに2,500ドル以上(日本未発売)かかります。小型のガス発電機は、アメリカだと近所の金物店で1,000ドル以下で買えて、プラスでガス代がかかります。
壊滅的なハリケーンや、1週間の停電が日常茶飯事のような地域なら、Anker PowerHouse 767が理想的なバックアップ・ソリューションにはならないでしょう。
しかし筆者が在住しているようなアメリカの地域であれば、停電が24時間以上続くことはめったになく、食べ物が腐るのを防ぐのに冷蔵庫に電力を供給したり、スマートフォンやタブレットが充電できれば良いくらいのニーズであれば、PowerHouse 767はぴったりなソリューションだと思います。コンセントにつないだままどこかに置いておけば、すぐに必要な機器が使えるようになるでしょう。