6月25日の日曜日、1年間の火星生活をスタートさせた4人の研究者がいます。火星といっても擬似火星。火星を想定して地球に作られた特別空間ですけれど。
擬似火星生活は、NASAのプロジェクトCHAPEA(Crew Health and Performance Exploration Analog)の一環で、将来的な火星ミッションにむけた模擬実験であり、参加者の健康状態やパフォーマンスの調査を行ないます。擬似火星空間滞在期間は378日。
擬似火星空間へと入っていく4人の研究者。ドアは閉められた!
CHAPEA’s 4 person crew just entered their home for the next year. They’re simulating a Mars mission to help assess health and performance in relation to Mars resource limitations in isolation and confinement. The door is officially closed and the mission has begun. Go Crew 1! pic.twitter.com/KKWKQ1opwg
— NASA’s Johnson Space Center (@NASA_Johnson) June 25, 2023
メンバーの1人、科学者のKelly Haston氏はミッション開始前のプレス取材でこう語っています。
このミッションのメンバーとして参加できて本当に光栄です。科学者として、被験者として、私のキャリアと私生活のハイライトになりそう。より安全な宇宙旅行や新たな手方を可能にするデータがとれればと思います。
メンバーはHaston氏の他に、建築工学者のRoss Brockwell氏、救急医療医のNathan Jones氏、米海軍微生物学者のAnca Selariu氏。2021年、NASAが3回の長期実験の第1回目メンバーとして募集していた30歳から55歳の健康かつ意欲的なアメリカ国民から選ばれた4人です。
3Dプリントで制作された1,700平方フィート(約158平方m)の擬似火星空間が設置されているのは、テキサス州ヒューストンにあるNASAのジョンソン宇宙センター。
中には個人の寝室、バスルームが2つ、キッチン、オフィスエリア、そしてレクレーションエリアが設けられています。
この閉ざされた空間において、限られたリソースのなか、設備が故障したりコミュニケーションに遅延がでたりなど、さまざまな環境ストレスとともに火星ミッションの模擬実験を行なうのが狙いです。
また4人の被験者は、宇宙遊泳シミュレーション、ロボオペレーション、居住地のメンテナンスに自分自身の衛生管理、運動、作物の栽培など、火星にいるつもりでいろいろなミッションに臨みます。
NASAの先端食物テクノロジー研究を担当する科学者Grace Douglas氏は、このミッションについてこう語っています。
火星に住む上での複雑なニーズを理解し、解決策を探る非常に重要な実験です。実際に(火星に)行く前に地球上でシミュレーションすることで、フィジカルそしてメンタル面での宇宙飛行士の問題を理解し、対処するのに役立つでしょう。
火星の住環境は地球とは異なり、二酸化炭素の薄い大気がある乾燥砂漠です。冬には氷点下にもなります。
Douglas氏いわく、今回の擬似実験でフィジカル面&メンタル面のパフォーマンスデータを収集することで、人間が火星に赴くミッションをより的確に計画するのに役立つとのこと。
それでは、4人の研究者のみなさん、374日後にお会いしましょう! Source: NASA