ファッションの再販がブームになるなか、ストックX（StockX）、ザ・リアルリアル（The RealReal）、eBay（イーベイ）、ファッションファイル（Fashionphile）といったプラットフォームのバリュープロポジションにおいて、引き続き重要な役割を果たしているのが認証である。特に当てはまるのが時計やスニーカー、ハンドバッグのようなカテゴリーで、熱心な顧客は商品の種類について百科事典並みの知識があり、入手する商品がまさしくその商品であることを絶対に確実にしたいと考えている。
再販カテゴリーが拡大するにつれ、新規顧客を獲得し、他のプラットフォームと競争し、ブランドイメージの安全を保証するために、こうしたプラットフォームは認証や偽造防止、水面下の技術に対してこれまで以上に投資を行っている。
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たとえばストックXでは、過去1年間で3カ所に新しい認証センターを開設している。8月にベルリンのセンターがオープンし、続いて10月に東京、1月にはメキシコシティにオープンした。新しいセンターをすべて合わせると18万平方フィート（約1.7万平方メートル）の認証スペースが追加されることになった。
ストックXでブランド保護を統括するポール・フォーリー氏は、必要性から投資したと話す。再販は世界的に3500億ドル（約49.4兆円）規模の産業に成長しており、米国だけでも700億ドル（約9.9兆円）の再販売上を占める。そしてストックXのようなプラットフォームを流れる商品の量は、つねに増加している。ストックXは月に100万点以上の商品を認証しているが、昨年1年間で同社は認証基準を満たさない1億2000万ドル（約169億円）以上の商品を拒否している。
そのすべてが模倣品というわけではない。たとえば、鑑定士は商品の状態やサイズもチェックし、売り手が指示したものと一致しているかどうかを確認する。ストックXが何かを拒否する理由で2番目に多いのが偽物で、拒否全体の約20％を占める。もっと一般的なのは不良品である。
偽造防止のためにブランドとマーケットプレイスが協力する必要性
フォーリー氏によると、認証は再販に関わるすべての関係者にとって重要な要素だという。すなわち、顧客は正しい製品を手に入れたい、プラットフォーム側は偽物を売っていると非難されたくない、そしてブランドは二次市場における自社のイメージを守りたいのだ。
「ブランドと顧客の双方が安心できることがきわめて重大であるため、認証は大切だ」とフォーリー氏は言う。「理想的には、ブランドと当社のようなマーケットプレイスが協力する必要がある。両者とも偽造者が誰であるかについて、多くの情報を持っている。我々が共同で模倣品を追いかけるには、協力しなくてはならない。多くの人が、新品でも再販でも同じブランドを購入するので、我々は顧客を共有している。ブランド保護や模倣品対策について連携するために、当社はつねにブランドに働きかけている」。
フォーリー氏いわく、模倣品が再販プラットフォームに出回る主な原因は3つある。情報に乏しい顧客が偽物と知らずに販売する、大量に販売するセラーが時間的な制約からすべてのアイテムを認証できずに売る、そして悪意のある業者が故意に模倣品を販売するというものだ。多くの場合、模倣品は本物の商品を製造しているメーカーから直接送られてくるが、それらは余った材料で作られ、ブランドに知られることなく不正に販売される。あるデザイナーは名を明かさない条件で、ブランドはまさにこうした問題を防ぐために、工場内に人を潜入させて捜査していると教えてくれた。
有害な偽造品を排除し、マニアックな顧客に対応
もうひとつの主力の再販業者であるeBayも、昨年から認証の取り組みを拡大している。5月、eBayはSupreme（シュプリーム）やオフホワイト（Off-White）など9つのブランドのストリートウェアの認証を追加した。さらに今年後半には、アディダス（Adidas）、グッチ（Gucci）、ジョーダン（Jordan）を含む21のブランドの認証を追加する予定だ。
顧客側では、単に偽物を手に入れるだけでは済まない懸念があるとフォーリー氏は言う。偽造品業者は、当然ながら正規のメーカーと同じ倫理基準や規制基準を守る必要がないため、製品が本物でないだけでなく、有害な可能性もあるのだ。昨年のアメリカン・アパレル＆フットウエアー・アソシエーション（American Apparel & Footwear Association）の調査によると、偽造ファッションには正規のメーカーは使用しない安価で低品質の染料が使われており、ヒ素といった有害な化学物質が含まれている可能性があるという。
だが、この認証の最大の魅力は、マニアックな顧客に向けたものだ。ラグジュアリー再販プラットフォームのファッションファイルの創業者サラ・デーヴィス氏は、これが同社のようなラグジュアリープラットフォームとスレッドアップ（ThredUp）のような大衆向けプラットフォームとを分かつ点だと述べている。
「私はスレッドアップの大ファンだ。いつもそこで買い物をしている」とデーヴィス氏は言う。「でも、スレッドアップでバーキンのバッグを見つけたとしても、それはおそらくただ『ピンクのバーキン』とか何とかいう表示がされるだけだ。当社の顧客に対しては、それだけでは済まされない。顧客は本当に詳細を気にする。それはただの『ピンクのバーキン』ではなく、エルメス（Hermés）のローズティリアンバーキン（Rose Tyrien Birkin）なのだ。当社の顧客は自分が何を求めているのかを正確に把握している。ゴートスキンではなく、ラムスキンが欲しいのだ。だから私たちは（あらゆるディテールについて）超詳細でなければならない」。
eBayもまた、探している商品について深い知識を持つ最高レベルの愛好家たちから、もっとよい認証を求められていると感じている。
「eBayには、1993年だろうが2023年だろうが、これまでに起こったほぼすべての有名なストリートウェアのドロップのアイテムがある」と、eBayのスニーカーとストリートウェアのグローバルゼネラルマネージャーであるギャリー・サニエル氏は言う。「我々は愛好家のコミュニティから、スニーカーで行っているのと同じようにシームレスな方法で、eBayでアパレルを売買できるようにしてほしいという強い要望を聞いている」。
視覚認識ツールやAI技術を導入する再販業者
各バッグの詳細な情報と認証への意欲は、ファッションファイルを新しい技術の導入へと向かわせている。デーヴィス氏によると、同社では人間の鑑定士と並行して、バッグを識別するプロセスをスピードアップする視覚認識ツールの使用を開始した。例を挙げると、多くのバッグには複数のサイズがあることが多い。通常、同じバッグの異なるサイズは寸法以外の違いが最小限であるため、正しいサイズを特定するには、たとえばバッグの各面にあるキルトの数を手で数えるなど、間違えやすい手作業をいくつか行う必要がある。
「コンピュータならそうしたことが数秒でできる」とデーヴィス氏は言う。
デーヴィス氏は、ファッションファイルでは何千枚もの写真で視覚認識ソフトウェアを訓練してきたと話す。そして自社で撮影した写真よりも、顧客が提供した写真に重きを置いている。
「当社の写真は、同じ照明、同じ場所に置かれたストラップなど、どれもすべて同じに見える。でも、人々はキッチンカウンターの上などに置いたバッグを撮った写真を当社に送ってくれる。そういう写真はさまざまなアングルで撮られていて、実際に活用する上で本当に役に立つ」。
フォーリー氏によると、ブランド側の技術的な変化も認証に役立っている。バーバリー（Burberry）やボッテガ・ヴェネタ（Bottega Veneta）のようなブランドは、製品にRFIDタグやNFCチップを追加し、認証を容易にしている。
「この種の技術に移行するブランドは増えており、そうした機会を活用することは当社としても理にかなっている」とフォーリー氏は述べた。
AI技術もまた、多くの再販業者の意向の最先端にある。eBayは2月にAIを搭載した不正検知会社の3PMシールド（3PM Shield）を買収し、デーヴィス氏とフォーリー氏の両氏もまた同様にAIを使った実験を行っていると話す。
「だが人間の鑑定士がつねに関与することにはなるだろう」とフォーリー氏は述べている。
[原文：Fashion Briefing: Inside the rapidly evolving world of resale authentication]
DANNY PARISI（翻訳：Maya Kishida 編集：山岸祐加子）
