いま 水分補給マーケティング が熱い。インナービューティは新しいレベルに【ビューティ&ウェルネスブリーフィング】

DIGIDAY

アメリカでは水分補給への意識が高まりつつある。

TikTokと新製品が推進するアメリカの水分補給

アメリカ人は過去10年ほどで甘い炭酸飲料を敬遠するようになり、炭酸水やフレーバーウォーターを好むようになっている。水は体内の異なる生理学的機能を維持する上で重要な役割を果たしている。人体の55~65%が水分であり、最近では健康と美容のコンセプトとしての水分補給に対する新たな注目が高まっている。それは、主にTikTokのハッシュタグ #WaterTokのおかげだ。このハッシュタグは3月に人気を集め、3億7500万回以上の再生回数を誇っている。タグあり投稿では、TikTokユーザーらが、フレーバーウォーターを作って、十分な水分摂取量と水分補給を目指す方法を詳しく述べている。この水分補給への新しいこだわりは、ウェルネスブランドが電解質フレーバーや経口の水分補給サプリメントを展開するようになり、また、夏に向けて水分補給マーケティングに注力しているためにかなり普及している。

今年の初め以来、ブランドはさまざまな方法で水分補給に対応している。従来の美容ブランドは何年ものあいだ、局所製品のマーケティングで、肌の水分補給、特に乾燥肌がどのようにシワやたるみになどの早期の老化につながるかを強調してきた。しかし、昨今、内側から外面への美容は新しいレベルに到達している。ビタミンブランドのリチュアル(Ritual)は、5月、肌に潤いを与えるセラミドとヒアルロン酸を配合した初のスキンケアサプリメント「ハイヤセラ(HyaCera)」を発売した。

ユニリーバの健康・ウェルビーイング分野への注力

従来の食品・飲料ブランドも伝統的な体内水分補給カテゴリーに機会を見出している。「体に良いエナジードリンク」を謳うジョイバースト(Joyburst)は、4月に、ジョイバースト・リニューハイドレーション(Joyburst Renew Hydration)飲料をコストコ(Costco)でローンチした。コカ・コーラ傘下のボディアーマー(BodyArmor)も4月にフラッシュI.V.(Flash I.V.)という水分補給製品を発売、これは2024年1月に全国の小売店で取り扱われるようになる。フラッシュI.V.は、ユニリーバ(Unilever)が2020年に獲得したブランド、リキッドI.V.(Liquid I.V.) の直接的な競合製品になる可能性がある。ユニリーバは、健康とウェルビーイングを将来の重要な成長分野と特定しており、ビタミン・ミネラル・サプリメント事業を売上高10億ドル(約1397億円)を超えるまでに成長させている。

ユニリーバのビタミン・ミネラル・サプリメントに特化した部門、ヘルス&ウェルビーイングコレクティブ(Health & Wellbeing Collective)のCEO、ヨースティン・ソルハイム氏は、「疲労や皮膚の健康といった美容上の懸念の背後にある根本的な問題として、(脱水症状への)意識が高まっている」と述べている。同コレクティブは、飲むサプリのリキッドI.V.、オリー(Olly)ビタミン、ニュートラフォル(Nutrafol)など7ブランドを抱えている。「また、我々が目にしているのは、健康イコール病気がないと考えることから、健康をライフスタイルとして捉えるという根本的な変化だ。この変化はZ世代とミレニアル世代が主導しており、これらの世代は自分で学び、TikTokの#WaterTokなどで共有している」。

リキッドI.V.の成長の軌跡と今夏のキャンペーン

業界トップのポジションを守るため、リキッドI.V.は5月1日、「リアルハイドレーティング(Real Hydrating、本当の水分補給)」という夏のキャンペーンを開始した。360度コミュニケーション戦略には、有料メディア全体での広告、ポッドキャスト、OTTテレビ、デジタルや屋外広告などがある。リキッドI.V.は2012年に「水分補給を倍増するもの」と銘打ってローンチし、細胞トランスポートテクノロジー(Cellular Transport Technology)を通じて迅速に水分を補給すると主張した。このCTTとは、水がナトリウムとカリウムとブドウ糖と組み合わさると消化器系での吸収が促進されることを説明するために同社が使っている用語である。ユニリーバは4月の最新収益報告書で、ヘルス&ウェルビーイング部門はリキッドI.V.とフィットネスサプリメントブランドのオンニット(Onnit)により、前年比2桁の成長を達成したと発表している。ユニリーバCFOのグレアム・ピットケスリー氏によると、これらのブランドは「力強く成長している」という。

リキッドI.V.のマーケティング担当副社長、ステイシー・アンドレイド氏は、水分補給飲料はこれまでアスリート向けにマーケティングされてきたが、アスリート以外の一般の人々に向けてはるかに大きなチャンスがあると語っている。7月に開始されるキャンペーンの第2弾は、リキッドI.V.の主力製品であるハイドレーションマルチプライヤー(Hydration Multiplier)が2012年に新発売されて以来、もっとも実用的な製品の発売に関連するものである。

リキッドI.V.には消費者に伝えたいコアの柱が4つある。それらは、製品の機能、楽しめる風味、ブランドのインクルーシビティ、きれいな飲み水に関連するCSRへの影響である。広告動画では、空港のバゲージクレームにいる人、ゲームをしている人、コンサートを楽しんでいる人などよくある状況が描かれており、それらがあたかもスポーツイベントであるかのようなナレーションがついている。キャッチフレーズは「リアルな生活はタフだ」。このリアルハイドレーティングには、2022年に実施された前回の完全統合の全国キャンペーンよりも43%多いマーケティング投資が費やされている。

アンドレイド氏は次のように述べている。「このキャンペーンと当社のプラットフォームではユーモアを取り入れて、水分補給カテゴリー内の従来のマーケティングをアレンジした。主なフォーカスは普通の人々の日常の一瞬に(注目すること)。…これは、水分補給が必要な瞬間と、その瞬間にリキッドI.V.がサービスを提供するという同社のユニークなポジションを強調できる機会だ」。

このキャンペーンの屋外マーケティングには、ビルボード、大規模なサンプル配布、話題のイベントでの統合マーケティングなどがある。リキッドI.V.は5月末に行われた実写映画『リトル・マーメイド』のプレミアに関与し、コーチェラでは来場者にサンプルを配った。また、今夏、ボンナルー(Bonnaroo)フェス、ローリングラウド(Rolling Loud)フェス、アウトサイドランズ(Outside Lands)フェスにも関与する予定がある。さらに、音楽デュオとのプロモーション提携を近日中に発表する予定もある。

クリニークのキャンペーン

クリニーク(Clinique)も、多角的マーケティングキャンペーンで水分補給を強調して、肌の内外を保護して日常の脱水症状や加齢の悪影響に対処するように消費者に訴えている。コーチェラでは「クリニークハイドレーションハウス」とデイクラブを立ち上げ、フロリダ大学とアリゾナ大学の学外ではプールパーティを主催。このキャンペーンは、クリニークのモイスチャー サージ 100H モイスチャライザー(Moisture Surge 100-Hour moisturizer)と新しいモイスチャー サージ SPF28(Moisture Surge SPF 28)の発売をサポートするために実施された。

幅広い消費者層を対象にした水分補給マーケティング

「マーケティングファネル全体をつなげることに注力しているため、異なるタッチポイントで消費者にリキッドI.V.を知ってもらえるようになった」とアンドレイド氏は語る。「有料メディア、OTT、デジタルプラットフォームでフットプリントを拡大することに重点を置いている。当社が(支出を)倍増すると決めた箇所は多い」。

リキッドI.V.は、家族、男性、文化的に多様なグループなど、水分補給への関心に基づいた特定のオーディエンス層にリーチすることに注力した。

「電解質製品のマーケティングはこれまで嘔吐する子どもやエリートアスリート向けだったが、当社はそのようなカテゴリーに当てはまってはいなかった」と、ムーンジュース(Moon Juice)の創業者、アマンダ・シャンタル・ベイコン氏は語っている。

ムーンジュースは、7月に、日常使いのためにデザインされた新しい電解質パウダーを発売する予定だ。適切な水分補給と塩分の摂取によって認知機能とエネルギーの維持、髪と肌の質の向上に役立つと謳っている。複数の研究によると、わずか2%でも脱水状態になると、注意力、精神運動能力、瞬間記憶能力を必要とする認知能力が低下するという。

水分補給とダイエットとの関連性

しかし、オンラインで水分補給が注目されていることにはマイナス面もある。それは、水分補給がダイエットと関連して考えられている点である。

ハッシュタグ #WaterTokは#WeightLossと並んでよく使われており、TikTokユーザーは満腹感を感じて減量するために必要な要素として、水分補給や水の摂取について議論している。しかし、世界保健機関は、減量目的での人工甘味料の摂取に対して、継続的に摂取すると成人の2型糖尿病や心血管疾患、死亡率が高まる可能性があるとして警鐘を鳴らしている

「適切な水分補給をすると気分が良くなる」とベイコン氏。「すぐに満足感が得られることのひとつであり、労力も少なくて済み、水分補給が必要なことは誰でも直感的に理解している。ウェルネスにおいて最大のもののひとつになるだろう。いま、間違いなく水分補給が注目されている」。

[原文:Beauty & Wellness Briefing: It’s the summer of hydration

EMMA SANDLER(翻訳:ぬえよしこ、編集:山岸祐加子)

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