おこづかいの決算報告書(デジタルリマスター)

デイリーポータルZ

自由研究の宿題になやむ子どもたちに、おこづかい帳を決算報告書風にしてみる、という研究を提案します。

おこづかいを決算報告書にまとめてみましょう。これを機にお金についてキチンと考える。それがこの研究のテーマです。

2007年8月に掲載された記事を、AIにより画像を拡大して加筆修正のうえ再掲載しました。

子どものお金についての調査を参考にしよう

まずはサンプルとなるおこづかい帳が必要であるが、僕には小中学生の知り合いがいない。なので、一般的な小中学生のおこづかい状況について調べる事にした。インターネットで検索すると「子どものくらしとお金に関する調査」という調査結果が見つかった。金融広報中央委員会という組織が平成17年度に行ったアンケート調査だ。小学校1年生から高校生までを対象として、協力校の数は506校、サンプル数の合計は87,447に及ぶ。

調査の詳細は下記のサイトに詳しいが、今回は中学生のおこづかい状況に注目する事にした。

「子どものくらしとお金に関する調査(平成17年度)」

中学生のお財布状況を調べよう

今の中学生たちはどれくらいのおこづかいをもらっているのか?

上記の調査結果によると、平均値で2738円らしい。もらっている相手は、1位が「親」で2位が「祖父母」、3位が「親戚」で4位は「その他」となっている。「親戚」までは分かるが「その他」が少し気にかかる。誰だろう?

そんな「その他」も含め、集まったおこづかいを中学生たちは何に使っているのか?
上位10位までをピックアップしてみた。

1位 まんが
2位 おやつなどの飲食物
3位 CD・MDの購入
4位 小説や雑誌
5位 文房具
6位 友人との外食・軽食代
7位 休日に遊びにいく交通費
8位 ゲームソフトやおもちゃ類
9位 映画やライブのチケット
10位 親へのプレゼント

まんがとおやつとCDが上位を占めている。おやつを食べながらまんがを読んで、BGMに好きな音楽を流す。確かに中学生っぽい過ごし方だ。いや、大人になった今でもそれは変わらず至福の時だろう。

ちなみに14位には「携帯電話などの使用料」が入っている。中学生の携帯電話所有率は50.4%で、1ヶ月の使用料の最頻値は「5000円~10,000円未満」であった。そのうち自分で支払っている額は「2000円未満」が最も多い。

以上の要素を考慮して、一般的な中学生のお金の使い道をシミュレーションする事にした。

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税理士さんに協力してもらおう

一般的な中学生のお財布状況をシミュレーションする事は出来そうだが、それを決算報告書にまとめるにはプロの手が必要である。そこで、税理士さんにご協力いただく事にした。

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税理士事務所の桑野さん

森川暁税理士事務所の桑野さんだ。主婦でもある桑野さんは小学6年生のお子さんをお持ちである。子どもたちの買い物の傾向を熟知しているので、もし僕のシミュレーションに無理があれば訂正してもらえる。まさに今回の企画にうってつけの人物なのである。

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ソフトに入力していく

普段の業務でも使用している「財務応援」というソフトに、僕がシミュレーションした中学生のおこづかい帳を入力してもらう。まずは決算報告書の元となる総勘定元帳を作っていくのだ。

総勘定元帳を作ろう

お金を使った日付と用途、そして金額を入力するのだが、その際に「科目」というものを付けていかないといけない。例えば会社の場合、1人5000円以下の飲食は「会議費」となり、それ以上だと「接待交際費」となる。その「会議費」や「接待交際費」が科目にあたる。

今回は子どものおこづかいを対象とするので科目に振り分けるのは難しいが、桑野さんと相談の上、何とか割り振っていった。以下がその結果である。

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総勘定元帳(資産の部)8月1日~18日
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総勘定元帳(資産の部)8月20日~31日

入金(借方)の方から解説しよう。
1ヶ月のおこづかい2738円をまずは売り上げとして計上した。8月9日に友人と映画に行く際、母親から借りた3000円は長期借入金とした。お盆の時期に父方と母方両方の祖父母からもらったおこづかいは雑収入として処理している。更に携帯電話の使用料5000円のうち母に出してもらっている3000円も長期借入金にしている。

以上で8月度の借方金額の合計は18,738円となった。

次に出金(貸方)であるが、前述の使用目的トップ10を踏まえ、それぞれの項目でお金を使った事にした。まんが、おやつ、CD、小説、文具、外食、交通費、ゲームソフト、映画、親へのプレゼント。全ての要素をバランス良く振り分けたつもりだ。

貸方での注目ポイントは8月25日の「ガンダム無双」を「工具器具」としている点である。この中学生はプレステ3を所有していて、そのプレステが「工具器具」として減価償却対象になっているのだ。その為、プレステのソフトも減価償却の対象として処理されている。

このようにして入力した総勘定元帳は、科目毎にページ分けされるので全部で19ページにもなった。全体をPDFファイルにまとめたので、そちらを参考にしてもらいたい。

総勘定元帳PDFファイル(1.7MB)

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仕事中にすみません

次はいよいよ、決算報告書をつくる。

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決算報告書をつくろう

総勘定元帳の入力が済んだので、あとはソフトの機能を使って決算報告書にまとめればいい。

8月1日から8月31日までのおこづかいを決算報告書にまとめると、以下のようになった。

まずは表紙から。

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決算報告書/表紙

中学2年生と想定しているので、決算報告書を年齢と同じ第14期とした。もしこの自由研究を採用しようと考えているお友達が中学3年生だったら、第15期としよう。

下部のクラス名と名前を変更する事も忘れずに。

表紙の次にくるのは賃貸対照表だ。

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賃貸対照表/資産の部、負債の部

8月末に手元にある現金113円と、普通預金25000円の合計が「流動資産」として計上されている。流動資産とは今すぐに使えるお金の事を指す。

普通預金の25000円はお年玉の貯金を想定している。前述の同調査にて「お年玉」についての結果も載っていた。それによると約半数の中学生が10000円から50000円のお年玉をもらっているのだ。間を取って25000円をお年玉貯金とした。

「固定資産」にはプレステ3を新品で購入してから6ヶ月減価償却された金額と、ガンダム無双の金額が計上されている。

それらすべてを合計して資産の部は合計77,031円となった。

また「固定負債」には母親からの借入分、6000円が計上されている。

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賃貸対照表/純資産の部

ここではプレステの新品代金と普通預金を合算して「資本金」としている。
また、「剰余金」1081円は8月分の収支合計である。

次のページは「損益計算書」だ。

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損益計算書

祖父母からの雑収入を除くと、純粋な売り上げはおこづかいの2738円だけなので、そこから「販売費及び一般管理費」を差し引くと8,919円のマイナスとなる。

そこに雑収入分を足すとプラス1,081円なので、この中学生の8月度は黒字決算という事になる。このまま黒字をキープ出来れば、次の借入交渉の際に有利であろう。

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報告書

最後のページに報告書をつけて、決算報告書の完成である。本来であれば、税務申告書、勘定科目内訳書とセットで税務署に提出するが、今回は決算報告書のみとした。

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ファイルに閉じよう

最後に、決算報告書と総勘定元帳をファイリングして完成だ。

さあ、今からでも間に合うぞ。
急いで夏休みの決算報告書を作ろう。

わかったこと

・中学生の頃から総勘定元帳をつけてたら、将来立派な税理士さんになれると思う。
・3期分くらいあると比較が出来て面白いかもしれない。

苦労したところ

・いちいち言葉が難しいので内容を理解するのが大変だった。

感想

決算報告書は会社にとって通知表のようなものだ。僕は会社を経営しているので、毎年自分の会社の決算報告書に目を通さなくてはならず、それはとても気が重い。しかし、今回のように子どものおこづかいの使い道を考えたり、それを無理矢理科目に当てはめたりするのはとても楽しかった

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