芸術もAIに取って代わられちゃう?
AIによる「創造性」って可能なんでしょうか? ChatGPTなどのAIが急速に進化を遂げていますが、創造性は人間だけが持つスキルなのでしょうか? たとえば、以下の例。これはどう捉えるべきでしょうか?
・AIが描いた「Edmond de Belamy, from La Famille de Belamy」という名前の絵画。43万2500ドル(約4900万円)で落札されています。予想落札価格の45倍の値段です。フランスの芸術家グループObviousが過去600年間に描かれた1万5000の本物絵画を使ってAIで作成したもの。
・グラミー賞にもノミネートされたプロデューサーAlex Da Kidが、AIとコラボしてヒット曲を大量制作。
この2例の場合は、AIを使って人間が作り出しているものですね。
でもたとえば、DALL-Eにテーマだけを与えて小説を書いて、と頼めば数秒で書いてくれます。もちろん過去の創作物をスキャンしてAIが学習して作り出すものですが、小説でも写真でも音楽でも、過去のものを盗作しているわけではありません。
たくさんのアーティストたちが生み出した作品を少しずつ使っているわけで、でも特定の誰かのものを使っているわけでもなく…。そうなってくるとまたややこしくなります。
じゃあ元となる「創造性」について考えてみましょう。
創造性ってなに?
サセックス大学情報学部の認知科学者マーガレット・ボーデン教授によると、創造性には3つのタイプがあるそうです。
いろんなアイデアを組み合わせる「組み合わせ型」。内容、境界線、可能性を考えながら受け入れられるかどうかを試しつつ新しいアイディアで作る「探査型」。
このふたつのタイプは、AIのアルゴリズムによる制作とまったくかけ離れているわけではありません。これまで存在しているものを参照して作り出している「総合的な創造性」タイプです。
そして3つ目は、すでにあるものを飛び越して完全に新しくオリジナルのものを作り出す「変革型」です。
変革型としてAIが学習をしてまったく新しいものを作り出している場合は、著作権などはどうなるのかですが、法律がまだ定まっていないこともあって、この辺はまだフワフワしている状態ですね。
アーティストとAIの違い
AIが何かを作り出す場合、特定の検索にかけて既存の情報を使って総合的に創造するわけです。ここがアーティストとAIの大きな違いかもしれません。
アーティストは自分から進んで何かを作りますが、AIはカスタマーがいて、市場のために作ります。AIは私たちが頼んだアートしか作りません。
なのでAIは人間とパートナーになって指示をもらって何かを創造するものです。
でもAIの総合的な創造性は、私たち人間の創造性を推し進めるきっかけになるかもしれません。これまでの芸術の歴史でも、テクノロジーが人間の仕事と完全に置き換わってしまったことはあまりないんです。
たとえばカメラ。肖像画を描く画家に恐れられていた存在ですが、やっぱり人間の描く絵は絵で存在し続けていますもんね。
では、AIの総合的な創造性で置き換わるビジネスってなんでしょうか?
・AIによる広告。Dall-Eを使ってフランスのネスレがフェルメールの名作「牛乳を注ぐ女」の周りの絵を作りあげています。
・AIによる家具。デザイナー、家具メーカー ソフトウェア企業が共同でAIデザインによる椅子を発表しています。
・AIによるスタイリング。カスタマーの好きな色、生地、スタイルをもとにその人に合った服のスタイリングを提案してくれます。
こんな感じで使える場面というのは無限にあるのですが、AIだけではできないこともあります。人間のキュレーションが必要なのです。
AIは合ってるか間違っているかの判断はつかないので、すごく変なものを出してくるときがあります。たとえば、できあがった絵で足に手の指がついているなどは、AIでは判断できませんもんね。
人間の「道理にかなっているかを見る」というスキルはやはり必要になってきます。AIの創造性、これからも議論は続きそうです。