昨年、タイのバンコクから、チェンマイまで、700キロメートルほどの距離を、スクーターで移動してきた。
その時の話をまとめるので聞いてほしい。
前回までのあらすじ
(前編はこちら! 後編から読んでも十分お楽しみいただけます!)
旅先でバイクを借りて乗り回すとなかなかおもしろいことに気づいた私、西村。渋滞するバンコク市内をグルグル走り回るうちに、あることを思いつく……。
せっかくだから長距離移動でもするか
バンコク市内をバイクでもってぐるぐる走り回るのもおもしろいのだけど、このスクーターに乗って遠くまで行きたい……。
『水曜どうでしょう』ではハノイからホー・チ・ミンまで1800キロを原付で走っていたけれど、タイだったらどこに行けるだろうかと考え、チェンマイまで行ってみることにした。
タイ第二の都市で、寺や遺跡の多い古都である。行ったことがないというのと、700キロというのが、片道の距離としてちょうどよい。
ストリートビューで下調べすると、バンコクからチェンマイまでは、立派できれいな国道が整備されているので、そんなに難しい道でもない。
所要時間は、高速道路を使わないルートで、自動車で約9時間前後と出た。
グーグルマップの「自動車で◯時間」という所要時間は、長距離になるほど不正確になり、バイクだとこれの1.5倍〜2倍の時間がかかると思ってよい。
つまり、バンコクチェンマイ間は、バイクで14時間〜18時間ほどで行けることになる。とはいえ、日が落ちてからは走りたくないし、余裕を持って急がずに移動したい。そう考えると、1日だいたい350キロぐらいづつ、2日かけて移動すれば余裕をもって行ける距離だ。
バンコク―チェンマイ行き1日目
まだ夜が明け切らないうちに、ホテルをチェックアウトして準備をはじめる。
でかい荷物は、前日にバンコク在住の友人に預かってもらったので、リュックには2日分ほどの着替えと、カメラとパソコンやらの機材しか入っていない。
昨晩のスコールで路面が濡れており、払暁の街明かりが道路に映り込んで、なんだかエモい景色になっているが、うっかり半袖で出てしまったので、寒い。7月だと思ってナメていた。
今日は、バンコクを出発し、カムペーンペットという町まで行く。グーグルマップでは376キロ、約5時間で到着すると出ている。
どこをどう走ればよいかは、グーグルマップ頼りだ。あまり信用したくないが、タイで使えるナビアプリはこれぐらいしかないので頼るしかない。
グーグルマップは、何も言わないと高速道路を使うルートを必ず出してくるポンコツなので、オプションで「高速道路、有料道路、不使用」というチェックボックスを入れなければいけない。
するとなぜか、なんど検索しても、いったん郊外に出てから北上する道に入るちょっと遠回りのルートを出してくる。なんか納得いかないが、仕方なくその通りに行くことにする。
高速道路不使用のチェックボックスを入れたはずなのに、なんだかだんだん高速道路っぽいところを走っている……。
止まってマップを確認したいけれど、ここで停まるわけにはいかないのでそのまま走る。
たまにバイクが追い抜いていくので、バイク走行が禁止されているわけじゃないのだろう。
小型とはいえ110ccなので、6、70キロは普通に出せる、車のスピードに合わせて走れば問題はない。こちらの気の持ちようだ。
しばらく行くと、グーグルマップはジャンクションで右折しろという。
右折しろと申しましても、どのレーンに行けば良いのかがわからない。看板のタイ語を瞬時に読み取って判断するのは正直難しい。
レーンが右と左に別れている。どっちに行くか……。
ジャンクションでよくある「右折する場合は左レーンに入る」みたいな感じかな〜と思って左に入ったら、不正解だった。アメリカ横断ウルトラクイズの泥んこクイズみたいなことになっている。
まあ、しばらく行ってUターンすればいいので別にどうってことはないけど、看板が緑色なのは安心できた。タイは高速道路が青い看板、一般道が緑色の看板だ。
いい機会なので、いったん停まって防寒用のカッパを着込んでもう一回さっきのジャンクションにアタックすることに。
今度はさっきのジャンクションを逆方向から攻めることに。逆方向なので左折しなければいけないわけだが、看板がチラリとしかみえないうえにタイ語。やっぱりわからぬ。
今度は三択だ。右、真ん中、左。えいっままよ、と真ん中に入ったところ……。
残念、不正解でした〜。なんぼ行ったり来たりしたら曲がれるんだ! ジャンクション、下から見上げるとかっこいいけど、実際に走るとむずい。
今こうやって、静止画を切り出してじっくり看板をみると、どこに行くべきかはわかるけれど、走行中に、読めない言語の看板をチラリとだけみて咄嗟に判断するのは至難の業だ。
交通量の少ない時間帯でよかった。
ひたすら北上する
クイズみたいなジャンクションを三度目の正直で乗り越えると、郊外っぽい景色の道が続く。
暁光に照らされたチャオプラヤー川に掛かる橋に差し掛かった。
川の水位が高くて両岸が湿地みたいになっているのが、日本の河川とは違うな、なんて思いながら走っていると、いきなり、凛々しい王様の立ち姿の看板が現れてタイっぽさのダメ押しがでてきておもしろい。
この橋を渡りきって、野良犬がやたらいる角を左折すると目的地まで300キロ以上、ほぼ右左折はない。ひたすら北上するのみだ。
似たような景色が5時間ぐらい続きます
というわけで、タイの国道1号線をひたすら北上するわけだが、さっきまでとはうってかわって、ずーっと似たような景色が続くことになる。
なにもいわれないと、埼玉あたりの国道4号線のバイパスかな? みたいな風景が延々と続く。
道はしっかり舗装されているうえに、まっすぐなので、道路事情はまったく心配ない。ただ、どれほどスピードだしてよいのかよくわからないので、自動車に合わせて進む。
制限速度っぽい表示をみると、右側が120、真ん中が100、左端が80とある。国道でこのスピード制限なのがすごい。左端によって80キロで飛ばす。
タイの国道脇には、ガソリンスタンドと食堂とコンビニがまとまっているパーキングエリアのような場所が一定間隔である。
アユタヤを過ぎてしばらく行ったアントン県のチャイヨーという町で、ガソリン補給のついでに、食事をとることにした。
社食タイプの注文しづらいレストランだ。英語のメニューもないので何が食べられるのかもわからない。他の人が食べているものや注文するのをみて、カタコトの英語とタイ語を使って見様見真似で注文する。
で、出てきたのがこれ。
まぜそばと、ご飯入りのスープだ。どう見ても二人前である。食べきれない……。
本当はラーメンライス的なものが食べたく、ヌードルとライス。を頼んだはずなのだが、何がどう間違ったのかはわからないけれど、結果は上記の通りである。
この「食べたい物が素直に出てこない」というもどかしさとおもしろさ。これこそ海外旅行の醍醐味だ。この感覚を味わいに海外旅行に来ているところもある。
というわけで、もったいないので頑張って食べたが、食べきれない部分は申し訳ないけれど、少し残してしまった。
1日めの宿に到着
朝、6時前にバンコクのホテルを出発してから、タイの国道をひたすら北上し、16時前にホテルに到着。
総移動距離およそ388キロメートル。バイク移動のみの所要時間は、6時間半。途中の休憩を入れた所要時間は約10時間だった。