フェイシャルサービス の売上を2桁アップさせた方法:スキンケアブランド、イミッジ・スキンケアがスパ全米チェーンと提携

DIGIDAY

スパ・エステサロン向けスキンケア製品で知られるイミッジ・スキンケア(Image Skincare)は2022年、マッサージとフェイシャルスパの全米チェーン、ハンド&ストーン(Hand & Stone Massage and Facial Spa)と提携してサービスの試験運用を開始した。

米フロリダ州に本社を置くイミッジ・スキンケアは20年の歴史をもつ業務用スキンケアブランドで、2022年7月、ハンド&ストーンが展開する全米22店においてトリートメントプログラムを試験導入した。新プログラムは酸素フェイシャル(oxygenating facial)、ビタミンCピーリング(Vitamin C)、オーガニックフェイシャル(organic facial)の3種類。12月初旬には第二段階として、これらのプログラムの取り扱いが44店に拡大された。ハンド&ストーンのエステティック部門ディレクター、ジャクリーン・パルミエリ氏によれば、同社はかねてから、環境や健康に配慮した「クリーンビューティー」をうたうオーガニックフェイシャルトリートメントでZ世代の顧客に好評だったが、酸素フェイシャルとビタミンCピーリングについては初めての試みだという。これら3種のサービスは2023年5月初旬、ハンド&ストーンの全500店舗に導入された。

世界60カ国でフェイシャルケア製品事業を展開するイミッジ・スキンケアは、スパやエステティックサロン向け卸売販売が主だが、7年前からD2CのECサイトも運営している。創業者は美容外科医の資格をもつエステティシャンで、同社の売れ筋は、Vital Cシリーズのハイドレーティング・アンチエイジング美容液(hydrating anti-aging serum)、Clear Cellシリーズのサリチル酸配合ジェルクレンザー(salicylic gel cleanser)、Ormedicシリーズのバランシング・アンチオキシダント美容液(balancing antioxidant serum)など。マーケティング担当ディレクターのクリスティーン・ビッグズ氏によれば、業務用製品の売上は全体の80%を占め、残りの20%がD2CのECサイトからの売上だという。典型的な顧客の年齢は、イミッジ・スキンケアが34歳、ハンド&ストーンが33歳。ハンド&ストーンの最高マーケティング責任者であるジャック・バチンスキー氏は、同社サロンで提供する施術全体の35%がフェイシャルであると述べ、以前からフェイシャルサービスに使用してきたスキンケアのブランドとしてダーマロジカ(Dermalogica)やクラリティ(Clarity)を挙げた。

ハンド&ストーンは今後5年間で、フェイシャルサービスの売上構成比を50%に増やす計画だ。スタッフに関しては、マッサージセラピストの需要はあるが、人材不足で採用が進まないとバチンスキー氏はいう。一方、エステティシャンの戦力は十分で、それも同社がフェイシャルに注力する理由のひとつだ。加えて、フェイシャルサービスに対する若い世代の顧客の関心がこれまでになく高まっている。意欲的な売上増計画を達成するため、ハンド&ストーンはイミッジ・スキンケアと協業する道を選んだ。

「若い消費者にとって、スキンケアはいま、健康とウェルネスを支える重要なルーティンのひとつで、そのためスキンケアにつぎこむ金額が相対的に多くなっている」とバチンスキー氏は指摘する。

ハンド&ストーンにおける試験運用の成果としては、開始後6週間で、対象店舗のフェイシャルサービス予約件数とフェイシャル製品の平均売上が前週比と前年比の両方で伸びを見せた。また、Vital C、Ormedic、Clear Cellなどイミッジ・スキンケアの製品販売とトリートメントサービス両方の取扱店では、非取扱店に比べ平均51%の売上増を記録した。2022年通年の売上では、試験運用対象店舗が前年比で平均26%増加したのに対し、非対象店舗は平均16%の伸びにとどまった。イミッジ・スキンケア製品を使ったフェイシャルトリートメント提供店舗では、予約件数が非提供店舗を平均で17%~18%上回り、フェイシャルサービス売上も18%~19%上回った。

「ハンド&ストーンでは『アクセシビリティ』に関して社が定めた方針があり、いい方針だと自負している」とビッグズ氏は語る。「スキンケアに関しては数多くの選択肢があるが、我々はこの道のプロとして専門知識を活かし、ありとあらゆるタイプの消費者を対象に、肌のお手入れや美容に関するサービスやアドバイスを提供したい」。

イミッジ・スキンケアは今回の試験運用向けに、複数のタッチポイントを通じてターゲットオーディエンスに訴求する「360度マーケティング」キャンペーンを立案した。主な施策は、独自のコンテンツや素材を活用したメールマーケティング、デジタル広告、ソーシャルメディア、店頭イベントなどで、ビッグズ氏によると、これらはすべて、試験に参加する44店の地域特性を考慮した施策だという。デジタルアクティベーションの一例として、ECサイト上にハンド&ストーンとイミッジ・スキンケアの共同ブランディングによるバーチャル店舗、イミッジ・スキンケア・バイオスフィア(Image Skincare Biosphere)がある。これはもともと2022年春にイミッジ・スキンケアが開設したバーチャル店舗で、豊かな緑と流れる滝に彩られた熱帯のリゾート施設を模している。指定の箇所をクリックすると、製品の詳細を紹介する画像や動画が閲覧できる。

新プログラムの試験運用期間中は、2社がそれぞれ雇ったインフルエンサーも活躍した。イミッジ・スキンケアは今回、ハンド&ストーンでのフェイシャルトリートメントと試供品を、250人以上のインフルエンサーに提供した。一方、ハンド&ストーンには常時運用のインフルエンサープログラムがあり、契約インフルエンサー数は非開示だが、インスタグラムとTikTokをスキンケアパートナー各社の製品プロモーションに利用している。同社は従来、パートナーブランドの新製品発売のスケジュールに紐づけたカレンダーをもとにプロモーションを実施してきたが、今回、イミッジ・スキンケアの活動予定をこのカレンダーに追加した。

インフルエンサーマーケティングの分析・測定を専門とするトライブ・ダイナミックス(Tribe Dynamics)が公表したデータによると、イミッジ・スキンケアとハンド&ストーンの提携コンテンツは、インフルエンサー/クリエイターによるソーシャルメディアへの投稿を介して900万を超える人々が閲覧し、4万8000件のエンゲージメントを生み出した。また、250人以上のインフルエンサーによるキャンペーンを通じて、43万ドル(約5600万円)のアーンドメディアバリュー(Earned Media Value:以下EMV)がもたらされた。一方、ハンド&ストーン単体でも、2022年8月22日から2023年3月23日までの期間にEMVが130%向上し、ソーシャルメディアにおいては、同社アカウントのフォロワーなどコミュニティの規模が235%増大した。

ビッグズ氏によれば、イミッジ・スキンケアは、試験運用向けに立案・着手したデジタルアクティベーションを今後は定常的に実施するという。その一方で同社は、新たなビジネスチャンスは対面のイベントにあるとして、実店舗での販促活動、店舗装飾、スパの顧客向け情報提供目的での人員配置といった取り組みに関心を示している。

「試験運用前は、我々のブランドはバーチャル世界を中心に事業を展開していた」とビッグズ氏はいう。「しかしフェイシャルプログラムのハンド&ストーン全店導入をきっかけに、今後は各地のスパとの提携で、共同ブランディングによるイベント開催のチャンスが大きく広がるだろう」。

[原文:How Image Skincare boosted its spa partner’s facial bookings by double digits

(翻訳:SI Japan、編集:山岸祐加子)

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