冒頭からいきなりではあるが、あなたは「葬儀屋は儲かる」という話を聞いたことは無いだろうか? 私(サンジュン)自身はこれまで何度か「葬儀屋は儲かるらしい」という話を聞き「確かに葬式代って結構するもんなぁ」と納得していた。だがしかし……。
つい先日、知り合いの葬儀屋さんと立ち話をしているときのこと。図々しく「葬儀屋って儲かるんでしょ?」と聞いてみたところ、驚きの事実が判明した。さらには「コロナ禍で葬儀屋が激減した」というのである──。
・儲かるんでしょ?
私が、というより父が喪主を務めたのはこれまでの人生で1度だけ。12年前に母が亡くなったときのことであった。バタバタとせわしなかったため記憶が定かではないものの、葬儀代は100万円以上かかったハズだ。
そう、私に限らず葬儀はあまりにもせわしないため「言われるがまま払った」という方が多いのではないだろうか? 比較対象も少なく「どれくらいが相場なのかわからない」という要素もあるだろう。
さて、今回は話を聞かせてくれたのは私のポケモンGO友達のAさん。関東近県を飛び回っている葬儀屋さんで、この日も近所に立ち寄ってくれたタイミングでポケモンを交換をしていた。その際、持ち前のコミュニケーション能力を発揮し「葬儀屋」について聞いてみたところ……
──そういや葬儀屋さんってだいぶ儲かるって聞くんですけど、マジですか?
「いや、それは本当にそうでも無いですね。そもそも葬儀屋って仲介業なんですよ。喪主さんがお寺・火葬場・弁当屋・花屋なんかを別々に手配するのって現実的ではないですよね? その仲介をするのが葬儀屋なんです」
──なるほど。
「一昔前なら近所や親族、町内会に “施主” と呼ばれる仕切り屋さんがいたんですよ。そういう人たちがいなくなって葬儀屋が増えた感じでしょうか? 今でも地方では花屋さんが施主というか、葬儀屋を兼ねてることも結構ありますね」
──ふむふむ。寅さんみたいな仕切り屋ですね? でも仲介業って儲かるんじゃないですか?
「正直、想像されているより遥かに儲かってないと思いますよ。というのも、葬儀屋って喪主さん側に手数料をのっけることがほぼないんです。手数料をいただくのは、お寺や弁当屋、お花屋さん側からなんですね」
──へぇ~! そうなんですか。
「だって、例えばサンジュンさんが喪主になるとしますよね? どこで葬儀を執り行いますか?」
──まあ、それは親の実家の近所かな?
「ですよね。そこに複数の葬儀屋があるとします。でも結局その近隣で使われるお寺や弁当屋、花屋って限られてくるんですよね。そうなってくると喪主さん側に手数料をのっけた場合、おのずと他社より総額が高くなっちゃうんです。同じ内容だったら普通は安い方を選びませんか?」
──確かに。言われてみればそりゃそうだ。
「もちろん会場を持ってる葬儀屋さんは会場代が入ったりしますが、葬儀屋はあくまで仲介業なんですね。お寺・火葬場・弁当屋・花屋側から手数料をもらうのがビジネスモデルなんです。ぶっちゃけ、想像されてるよりは全然儲かってないと思いますよ」
──それは知らなかった。メッチャ儲かってるもんだと思ってました。
「よく言われるんですが違うんです(笑)。それにコロナ禍でだいぶ葬儀屋も潰れましたしね」
──え! そうなんですか?
「はい、激減したと言っていいと思います。まあコロナ前までが新規参入が多くて飽和状態だったというのはあるんですが、それが淘汰された感じでしょうか」
──え、なんでコロナ禍で葬儀屋が減ったんですか? むしろ増えててもおかしくなさそうなのに。
「簡単に言えば人が死ななくなったんですよ。みんな外出しなくなったので、まずは事故死が激減しました。それに伝染病などで亡くなる方も激減しましたね」
──へぇ~。それは説得力ある。でもコロナがありましたよね?
「コロナは風邪で亡くなる方と同じ程度の割合だったので、事故死などと比較するとそこまでは多くありませんでした。時期によっては死因がコロナだと、まともに葬儀を出来ないケースもありましたし」
──なるほど~。
「でもそれよりも事故死などがかなり減ったことが大きいですね。適切な表現かはわかりませんが、外出しなくなったおかげで “不用意な死” がだいぶ減ったのではないでしょうか。その結果、葬儀屋も激減したという……」
──まあ、人が死なないと仕事が発生しないですもんね。
「最近はまた以前と同じくらいのペースになってはいますが……因果な商売です」
・聞いてみないとわからない
話を聞く前までは「葬儀屋は儲かるんだろうなぁ」と思っていたが、なるほど言われてみれば理屈は通ってる。また「コロナ禍で葬儀屋が激減した理由」も大いに納得できた。何事も聞いてみないとわからないもんだなぁ~。
というわけで、もし「葬儀屋は儲かるらしいぜ?」なんて話を小耳に挟んだら「そうでもないらしいよ?」とドヤっていただきたい。そう考えると葬儀屋さん、なかなかヘビーなお仕事である。本当にご苦労様です。
執筆:P.K.サンジュン
Photo:RocketNews24.