ダイレクト広告 キャンペーンのクリック率を高めた「データ」の価値

DIGIDAY

「長期的な利益のために、短期的な痛みを我慢する」という言葉は、ビジネスの常套句だ。しかし、オンライン広告サイトのガムツリー(Gumtree)のダイレクト広告ビジネスを見ると、それが間違いではないことが分かる。

同社の成長を詳しく見る前に、それを達成するために何が必要だったのかを見てみよう。それは2021年に、ガムツリーの幹部たちが広告取引でデータをもっと活用したいと考えたときに始まった。

パートナーの変更による成長

同社には、サイトを訪れる視聴者と広告主をよりよくマッチングさせる技術が必要だった。これは簡単な問題ではなかったが、何か変革が必要だった。ガムツリーの広告チームは昨年1月に、古いデータ管理パートナーから新しい契約先のパーミューティブ(Permutive)へと移り変えた。

「その(以前の)データ管理プラットフォームでのマッチ率は40%未満となっており、スケールの問題が発生していた」と、ガムツリーのアドテックおよび運用責任者であるヴィクトリア・トレビリオン氏は言う。ガムツリーは、新しいマッチ率がどの程度かは明らかにしていないが、同社の成長がかなり高いことを示唆している。

ビジネスの世界の冷徹な数字で、これがどのように現れたか見てみよう。今年の最初の3カ月間に実施されたダイレクト広告キャンペーンのクリック率は、2022年全体のものより約36%高かった。これにはプログラマティックギャランティード、プログラマティックダイレクト、インサーションオーダーが含まれており、プライベートマーケットプレイスは含まれていない。この同じ期間におけるダイレクト広告の平均千インプレッション当たりのコストは、1年前の同じ期間と比較して14%上昇している。

これらの結果はインパクトこそ大きいが、この変更がもたらす長期的な利益はまだはっきりしない。確かに、これらの数字は、広告主がガムツリーのデータを使用してそのサイトで広告することにさらに興味を持ってもらうことに繋がっている。しかし、その興味が必ずしも意図的なアクションへと変わるわけではない。実際、ガムツリーが受け取る広告費のほとんどは、オープンなプログラマティックマーケットプレイスからのものだ。結局のところ、プログラマティックの方が安価で、物流面でも簡単だからだ。

「オープンマーケットは私たちの事業の約60%を占めており、それにはアプリの在庫も含まれている。(アプリでは)オープンマーケットがより支配的だ」とトレビリオン氏は言う。「残りの40%が直接取引となる。なお、直接取引の内訳は、70%がインサーションオーダーやプログラマティックギャランティードで、30%がプライベートマーケットプレイスだ」。

データの価値を認識する広告主の数は増えている

この状況は変わるだろうが、変化は急速ではない。マーケターは習慣の生き物である。新しいことを取り入れるのに時間がかかり、そして取り入れたとしてもすぐに完全にコミットするわけではない。

ガムツリーの広告ビジネスにおいて、この問題(変化が遅いこと)があったとしても、対処可能な問題ではある。変化が起きるかどうか、ではなく、いつ変化が達成されるか、が問題だからだ。ガムツリーは昨年のあいだに十分な成果を見ており、同社のデータの価値を認識する広告主の数は増えると信じている。「過去1年間で、私たちは約400の異なるオーディエンス(セグメント)を追加している」とトレビリオン氏は意気込む。

とはいえ、この数字の一部は同じものを複数のバージョンでまとめたものであることは特筆すべきだろう。たとえば、特定のオーディエンスセグメントに対して30日間版や60日間版などが存在する。それでもガムツリーは、新しいルックアライクセグメント(特定の顧客層と類似の行動を示すセグメント)から、以前のキャンペーンをクリックした人々で構成されたセグメントまで、さらに多くのオーディエンスタイプを追加している。その結果、より多くの広告主がそれらを購入しようと考え、場合によっては支出を増やすことになった。

ガムツリーは前述の変更の影響を分析した後、昨年11月にダイレクト・キャンペーンの料金を10%引き上げることで、その需要が実際にどれほど大きいかをテストした。「これまでは、私たちの収益の50%以上が自動車クライアントから来ており、そのことが明らかに課題だった。しかし、オーディエンスと分析を使ってそこから多様化することができた」と同氏は述べた。

それでも、自動車広告主はガムツリーの広告ビジネスにおいて未だ、重要な役割を果たしている。実際、同社からの変更に適応するという点では、最も早かった広告主分野が自動車業界であった。

マーケターのひとりは(名前は明らかにされなかった)、ガムツリーから電気自動車購入の可能性が高いユーザーに関するインサイトを共有してもらったことで、クリエイティブを変更した。通常、マーケターがガムツリーに対してインサイトを共有した結果としてフィードバックを提供するようなことはまれであり、クリエイティブ変更のようなアクションに繋がることはさらにまれだ。

代替データ戦略がパブリッシャーにとって重要に

多くのマーケターにとって、この種のデータを最大限に活用する道筋はまだ完了していない。サードパーティによるトラッキングが徐々に消えていくため、いつかこの問題は解決されるだろう。これが進む(サードパーティトラッキングが減る)ほど、ガムツリーのようなパブリッシャーからのデータを活用するように、代替データ戦略を探求し、実装することがパブリッシャーたちにとってますます重要になるだろう。

「マーケターたちは、ファーストパーティ戦略を適応するにあたって、Googleがサードパーティのアドレサビリティに変更を加えるのを待つべきではない。なぜなら、ファーストパーティのデータであれファーストパーティのIDであれ、それは第3者のクッキーやIDを使用する広告キャンペーンよりもはるかに効果的な方法だからだ」と、アドテックベンダーのアドフォーム(Adform)でカントリーマネージャーを務めるフィル・アクトン氏は言う。「この方法では、マーケターは第3者トラッキングに依存している場合よりも、より多くの情報やデータを得ることができる」。

[原文:Gumtree is seeing positive results from using first-party data in direct deals

Seb Joseph(翻訳:塚本 紺、編集:島田涼平)

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