インナーアウター美容の次のフェーズはスキンケア用サプリメント:2030年まで5.1%の年平均成長率で拡大予想【ビューティ&ウェルネスブリーフィング】

DIGIDAY

外面と内面の完璧な美容ルーティンが追求され続けているなか、スキンケア用の経口サプリメントは次世代の製品群を率いる準備が整っているようだ。

2020年以来、ニキビ対策や老化防止、あるいは一般的な美容法をサポートすることを謳ったスキンキンケア用サプリメントがいくつか米国市場に登場している。それらのブランドには、ムラド(Murad)、エンボディ(Embody)、ザ・ニュウコー(The Nue Co.)、ドクターバーバラシュトルム(Dr. Barbara Sturm)などがある。これらのサプリメントは通常、カプセルかグミビタミンの形であり、過去10年間で人気だったコラーゲンやビオチンといった成分を超えて、局所スキンケア製品に使われているヒアルロン酸やセラミド、レチノールなどの成分を含有している。

ビタミンブランドのリチュアル、スキンケア用サプリをローンチ

この分野に最近参入したブランドにはリチュアル(Ritual)がある。同社は、成分の追跡可能なサプライチェーンへの注力で知られているビタミンのブランドだ。同社は、5月2日、肌の水分補給のためにセラミドとヒアルロン酸を配合したハイヤセラ(HyaCera)という初のスキンケアサプリメントを発売した。30日分の小売価格は54ドル(約7300円)。Glossyの以前のレポートによると、リチュアルは2021年に1億ドル(約135億円)以上を売り上げたという。

リチュアルの創業者CEO、キャット・シュナイダー氏は次のように述べている。「このスペースに注目したのは、当社の顧客から求められていたからだ。大まかに言えば、局所的で摂取可能な(美容は)既存の顧客ベースのインサイトを検討するときに最初に思いつくものだ。さまざまな年齢層が(美容サプリに)求めているものは少しずつ異なってはいるが、あらゆる人に共通しているのは内面からの水分補給に対する(必要性と欲求)だった」。

リチュアルは、3カ月前から、インフルエンサーパートナー、ポッドキャストパートナー、メディア担当者、アフィリエイトパートナーにハイヤセラを無料で配布していた。同社の成長担当バイスプレジデント、ジャスティン・フレドレンダー氏によると、この3年間でコンテンツクリエータープログラムを構築し、現在は毎月200~300人が作業しているという。ローンチの最初の週に、有料ソーシャル、インフルエンサーパートナー、アフィリエイトマーケティングを展開する予定だ。そして、約1カ月後には、ポッドキャストホストのプロモーションを含むポッドキャスト広告が開始される。フレドレンダー氏はマーケティングキャンペーンは「重要な投資」であると述べたが、具体的な数字やパーセンテージは共有されなかった。

「必要とされている学びは多くあるだろう。(我々の仕事は)製品のメリットだけではなく、この製品をスキンケアルーティンに取り入れる方法に関しても、どう消費者に伝えるのが最善かということが中心になっている」とフレドレンダー氏は語る。

製品の売上とは別に、リチュアルはハイヤセラだけを購入するためにD2Cのeコマースサイトに来る新規顧客の割合も追跡している。リチュアルのクリエイティブ担当バイスプレジデント、フィエル・バルデス氏は、この新製品カテゴリーに対する顧客のセンチメントに特に関心があると述べている。このキャンペーンのアセットには、年配の女性、若い女性、プラスサイズの黒人女性の3人のモデルが含まれている。

「当社のキャンペーンは個性にあふれているので、文化的に共感されることを願っている」とバルデス氏は語った。

米国の数年先をゆくアジア市場

ほかの多くの美容トレンドと同じように、スキンケア用サプリメントは米国では目新しいものかもしれないが、アジアでは数年前に始まっている。ザ・カット(The Cut)の2015年の記事では、摂取可能なコラーゲンは、米国でサプリメントとして登場する20年前にアジアで入手可能であったことが挙げられている。グランドビューリサーチ(Grand View Research)によると、女性の健康・美容向けサプリメントの世界市場は2022年に534億ドル(約7.2兆円)の価値があり、2023年から2030年の間に5.1%の年平均成長率で拡大すると予想されている。アジア太平洋地域は2022年に最大の市場シェアを持ち、売上高の38.8%を占めている。さらに、グランドビューリサーチはニュートリコスメティクス(栄養コスメティクス)とも呼ばれることがある美容サプリメントセグメントは(2023〜2030年の)予測期間に大幅な年間成長率が見込まれると述べている。この調査では、現在、米国の女性の美容消費者の90%が一般的な健康目的でビタミンやミネラルを毎日摂取していることが判明している。パンデミックが美容サプリメントへの関心に貢献したことは言うまでもない。健康をサポートし、美容ルーティンを改善するための製品に人々が殺到した。

オンライン販売限定にしたムラドの戦略

ムラドのCMO、ジニー・チェン氏は次のように述べている。「我々は常に韓国のスキンケアトレンドに注目している。(スキン用サプリメントが)アジアの数カ国で展開していることを知っていたし、アジアのスキンケアトレンドが3~5年後に(欧米に)来るのを知っていたので、それがインスピレーションになった。この点はサプリメント3点をローンチするかどうかについて、当社の視点に絶対的な影響を及ぼした」。

ムラドは、2022年6月、ブライト&イーブン(Bright & Even)サプリメント、抗ニキビのクリアスキン(Clear Skin)サプリメント、アンチエイジングのユースリニューアル(Youth Renewal)サプリメントの3点からなるセットを発売した。30日分がMurad.comで45~55ドル(約6000〜7400円)で独占販売されている。ムラドは最終処方製品の臨床試験を行い、結果の一部を自社サイトで公開した。

「ウェルネスの爆発がパンデミックと同時に起こって以来、サプリメント(の売上)は伸びている」とチェン氏。「だが、スキン用サプリメントの摂取はまだ必ずしも消費者の直観的な行動ではないとわかっていたため、販売は意図的にMurad.com限定にした」。

この製品はオンライン限定なので、ムラドのデジタル広告ではサプリメントは常に強調されており、製品のeコマースサイトに人々を誘導するようになっている。また、サプリメントは、ムラドが近年注力している内外面の美容アプローチを体現しているため、ムラド所有のソーシャルチャネルにも頻繁に登場している。また、D2Cのeコマース限定セットにも含まれている。チェン氏はサプリメント関連の売上の詳細については共有してくれなかったが、3点のあいだで売上はかなり均等に配分されていると述べた。また、今後2年以内に追加のサプリメントとフォーマットがローンチする可能性については認めた。

サプリメントの効果の証明が課題

スキンケア用サプリメント分野とその人気が直面している最大の問題のひとつには有効性がある。なぜなら、サプリメントは、機能して優れた効果があることを裏付けるためのデータと証拠が不十分である点が長年揶揄されているからだ。それでも、この分野は大規模なイグジットと大きなリターンを得るのに最適である。ユニリーバ(Unilever)は2019年にオリー・ニュートリション(Olly Nutrition)を非公開の価格で買収し、ネスレ(Nestlé)は2021年にザ・バウンティフル・カンパニー(The Bountiful Company)を57億5000万ドル(約7751億円)で買収している。

バルセロナ大学の2022年の論文の著者らは次のように書いている。「(皮膚の老化における)全身療法の利点に関する証拠はいくつかの理由から限られている。(その理由は)ほとんどが小規模で主に女性のサンプリングへの依存、短い研究期間、方法論のばらつき、結果測定が臨床的に関連性があるかどうかについてのコンセンサスの欠如である。経口加水分解コラーゲンと経口ヒアルロン酸は忍容性が高く、多くの臨床試験で皮膚老化の兆候を軽減できることが示されている」。

2015年から2021年のあいだに実施された5つの研究では、1日あたりヒアルロン酸120~450mgの4~12週間の投与により、皮膚がさまざまなレベルで改善されたことが示されている。たとえば、60人を対象に1日200mgの経口ヒアルロン酸を28日間使用した2021年の二重盲検無作為化の対照試験では、肌の水分量と弾力性が大幅に向上し、表皮からの水分損失と顔のしわが客観的に減少したことが示された。その参加者の63%からは顔のしわの減少が、90%からは弾力性の向上が報告された。

皮膚にはケラチノサイトと線維芽細胞によって合成される体のヒアルロン酸の50%が含まれている。ヒアルロン酸は水分バランスを調節して皮膚構造を維持する。その吸収率は分子量に依存している。リチュアルの場合は120mgの低分子ヒアルロン酸を使用している。同社はハイヤセラの臨床試験を実施中だが、完了日と(結果の)公開日は未定である。臨床試験の費用は10万ドル(約1350万円)から100万ドル(約1.35億円)を超える場合もある。

「当社はクリーンと臨床を融合させることで、摂取可能なスキンケアのスペースの基準を高めようとしている。(クリーンと臨床の融合は)局所分野ですでに見られるが、摂取可能なスキンケア分野では発展のスピードはもっと早い」とシュナイダー氏は述べている。

エンボディのグミサプリメント

レチノールの経口サプリメントに関して、メイヨークリニック(Mayo Clinic)は「経口ビタミンAサプリメントの大量摂取はニキビに影響を与えるとは思われない」と報告している。創業3年のエンボディのレチノールグミは、その最終処方のためにアンチエイジングのメリットにフォーカスした臨床試験を実施した。8週間にわたる非無作為化、非対照の介入治療治験に35人が参加した。有効性を判断するために前後の写真を使ったこの治験では、参加者の83%が、肌が明るくなり、潤いが増し、全体的に健康に見えるようになったことに同意している。

2020年にレチノールグミでローンチしたエンボディは、現在、肌の水分補給グミサプリメントも販売している。7月には全国展開しているある小売業者を通じて肌弾力グミを発売する予定である。顧客は、同社のD2Cのeコマースで毎月のリフィルを10%割引でサブスクリプションできる。現在、顧客の35~40%がサブスクリプション加入者である。エンボディの創業者、ジェン・チョン氏によると、同社の顧客は時間効率の良い美容ルーティンを求めるミレニアル世代のビジネスウーマンだという。2022年10月以降、エンボティはJCペニー(JCPenney)のサーティーンルーン(Thirteen Lune)のショップ・イン・ショップ350カ所で取り扱われている。

ムーンジュース(Moon Juice)が1月にアルタビューティーに、ブルーム・ニュートリション(Bloom Nutrition)が2月にターゲット(Target)に、4月にはリチュアルがターゲットに進出しており、サプリメント分野は小売業者から注目されている。

チョン氏は次のように述べている。「当社は、人々が理解できる方法で局所的なスキンケア製品と体内栄養のあいだのギャップを埋めている。小売業者はこれを見て、当社製品をサプリメントセクションではなく、局所用製品セクションに配置している。自分が何を求めているのかはっきり理解していない限り、女性はサプリメントセクションでスキンケア製品を探したりはしない。当社は美容サプリメントのことをまだ知らない女性へのアプローチを試みている」。

[原文:Beauty & Wellness Briefing: Skin-care supplements are the next phase of inner-outer beauty

EMMA SANDLER(翻訳:ぬえよしこ、編集:山岸祐加子)

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