婚礼サービスのゾラが挑む、「回復期」のマーケ戦略とは?

DIGIDAY

コロナ禍のピークには延期が相次ぎ低迷していた婚礼需要が、2022年は大幅に回復する見通しだ。米ニューヨークに本社を置くスタートアップ企業のゾラ(Zola,Inc.)は、結婚を控えたカップルが必要な情報をすべて入手できるワンストップ・ショップ的な存在を目指している。

ウェディング・レジストリ(wedding registry:新郎新婦が用意したリストから結婚祝いを選べるサービス)で知られるゾラは最近、業容を拡大し、パーソナライズ化したウェブサイトの制作、各種業者の検索、招待客に予定を空けておいてもらうためのセーブザデート(save the date)カードや招待状の作成、ハネムーンの計画といった新たなサービスを導入した。

ゾラの最高マーケティング責任者、ヴィクトリア・ヴェインバーグ氏によると、同社は広告とマーケティング活動を通じてこれらの新サービスを訴求し、差別化を図ろうとしているが、同時にブランドイメージの刷新にも取り組んでいるという。「我々は、婚約したふたりのパートナーとして、結婚に至るまで、そしてそれ以降の道のりを支えていく」。

さまざまな広告チャネルにトライ

ゾラは広告費のうち25%から40%をテレビ広告につぎ込み、ブランド認知度向上を狙って、恋愛リアリティ番組「バチェラー(The Bachelor)」などでCMを流している。しかし30秒のスポットCMではブライダル関連サービスの全容を紹介しきれないため、消費者が自らアクションを起こす可能性がより高いチャネルも利用してきた。たとえば検索エンジンでは、結婚式会場やカメラマンなど、ウェディング関連キーワードが使われた場合、自社サイトが検索結果の上位に表示されるよう最適化しているほか、屋外広告、オーディオアド、TikTokといったチャネルを試験運用している。

「昨年来、さまざまな広告チャネルを試してきた」とヴェインバーグ氏はいう。「予算配分はとくに決めていない。たとえば、ポッドキャストとオーディオアドを合わせてひとつのチャネルとして試験運用中だが、実際に起きた犯罪を扱うポッドキャストと、文化とライフスタイルを扱うポッドキャストにおける広告効果を比較分析している。我々は、消費者の日常生活の一部となったチャネルの重要性を認識している」。

ヴェインバーグ氏は広告支出内訳については明らかにしなかったが、調査会社カンター(Kantar)によると、ゾラが2021年に投じた広告費は810万ドル(約8億9100万円)で、前年の2820万ドル(約31億円)より減少した。ただしこの数字にはソーシャルメディア関連支出は含まれていない(ソーシャルメディア広告費はカンターの調査対象外)。米DIGIDAYが2020年7月に報じたように、ゾラはコロナ禍初期にTV広告費を削減したが、その後、婚礼需要の回復にともない、徐々に増やしてきた。

ゾラの競合となるサイトは、同じくウェディング・レジストリから出発して結婚式のプランニング支援を含むブライダル関連サービスに手を広げたザ・ノット(The Knot)など。この市場は2022年に入って活況を呈し、競争が激化しつつある。ウェディングレポート(The Wedding Report)発表のデータでは、全米の婚姻組数は2020年の120万組から21年には190万組と回復、22年にはさらに増えて、240万組を超える見通しだ。また、調査会社のイビスワールド(IbisWorld)によれば、ブライダル産業の22年の売上はおよそ570億ドル(約7兆円)に上る見込みだという。

TikTokマーケティングの狙い

ゾラの場合、TikTokのプラットフォームを通じたマーケティングは社内制作コンテンツと有料広告の両輪で進めている。社内で制作したコンテンツを自社チャネルで配信し、効果が上がったものを有料広告に展開する方法だ。マーケティング担当者とブライダル専門職が協力して開発したTikTok専用コンテンツは、#WeddingTokや#WeddingPlanningTokといったハッシュタグ付きで、結婚式のプランニングに関心が高いユーザーが集まるコミュニティに公開される。

TikTok上でゾラが目指すのは、派手な演出の挙式や披露宴の紹介より、専門知識を活かしたブランドの差別化だ。結婚式の準備段階でカップルが経験する浮き沈みに関する情報や助言の共有、ミーム(memes)やトレンドの拡散を通じて、コミュニティ意識を醸成することで、複数の投稿動画がそれぞれ100万回以上再生されるという成果につながった。

戦略コンサルタント会社のプロフィット(Prophet)でシニアパートナー兼マーケティング・営業部門共同責任者を務めるマット・ザッカー氏は、ゾラの取り組みを評価して次のように述べている。「ゾラはオーディエンスがいる場所でブランドを訴求する戦略をとっている。どの企業も、新たなチャネルの発見と試験運用向けの特別予算を組むべきだ」。TikTokのユーザーの多くを占めるZ世代の大半は、結婚式について具体的に考えるにはまだ若すぎるが、ゾラがTikTokにおけるブランド構築と「長期的な施策」に注力すれば、「ゾラというブランドにとってTikTokが『若すぎる』という評価にはならないだろう」とザッカー氏は語った。

ゾラは今後も引き続き、TikTokなどのチャネルを通じ、ブランド認知度向上と需要喚起を狙ってコミュニティづくりに取り組むだろう。その結果、「婚約した時点ですでにゾラの存在を意識している潜在顧客が生まれる」とヴェインバーグ氏は指摘する。ブランド認知度が高まれば、婚約したカップルにもメリットがあるはずだという。「結婚式のプランニング支援をまかせるのにふさわしい会社はどこか、迷わなくてすむからだ」。

[原文:How Zola aims to communicate expanded wedding offerings, boost brand awareness as nuptials make a comeback

Kristina Monllos(翻訳:SI Japan、編集:猿渡さとみ)
Illustration by IVY LIU

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