TikTok 、メタ、VeVoが新たな広告プロダクトを発表:NewFronts Day4まとめ

DIGIDAY

インタラクティブ広告協議会(Interactive Advertising Bureau:以下、IAB)による2023年度ニューフロンツ(NewFronts)の最終日、ソーシャルメディア/動画プラットフォームのTikTok、メタ(Meta)、Vevoは新たな広告プロダクトおよびメディアプランニングツールを発表した。また、コンデナスト(Condé Nast)は人気ライブイベントへの独占アクセスを喧伝した。

主な要点

  • メタはインスタグラムのリール(Reels)、Facebookのリール(Reels)、Facebookのストーリーズ(Stories)にAR広告を導入
  • ブランド勢はいまや、特定パブリッシャーのTikTokコンテンツ上に広告枠を買える
  • 今年のニューフロンツでプレゼンをした数少ないパブリッシャーの1社、コンデナストはライブイベントへの進出を喧伝
  • VeVoは新たな広告ツールおよびプロダクトを発表し、自社ブランドを冠したコンテンツスタジオの可能性を匂わせた

各日程の詳細は、今回のニューフロンツの初日二日目三日目を簡潔にまとめたDIGIDAYの記事を参照してほしい。

メタはメタバースについてだんまり

5月4日に登壇した際、メタ幹部はインスタグラムおよびFacebookにおけるリールの成長ぶりや、さまざまな広告プロダクトへのAI統合の説明に多くの時間を割いた。また、TikTokが2022年秋に、スナップ(Snap)が2023年5月第1週前半に、ニューフロンツでそれぞれ発表したマーケットプレイスと競合する独自のクリエイターマーケットプレイスの成長も喧伝した。だが、「M」から始まる単語については、誰も口にしなかった――「メタバース」のことである。

今回のニューフロンツ中、メタはマーケター向けの新たな広告プロダクトの数々を宣伝した。リール広告をIn-App Reviews用にポーズする方法や、同じリール広告内で、ユーザーが複数のプロダクト画像をスワイプできるようにする方法だ。さらに、同社はAR広告のインスタグラムリール、Facebookリール、Facebookストーリーズへの導入を発表した。

これに先立ち、メタは2022年昨秋、インスタグラムのニュースフィードおよびストーリーズへのAR広告の導入を発表している。なお、いずれも、SnapchatがAR広告の先駆者として何年もおこなってきたことに酷似している。

ブランド勢はいまや、パブリッシャーのTikTokコンテンツ内に広告枠を買える

TikTokは5月4日、今回のニューフロンツにおける非公開プレゼンの席で、ブランド勢に向けた新たな広告プロダクトを発表した。パルス・プレミア(Pulse Premiere)と呼ばれるそれは、12以上のカテゴリー(ライフスタイル、スポーツ、エンターテインメント、教育など)において、TikTokパブリッシャーおよびメディアパートナーの動画直後の広告枠を販売する。

パブリッシャー勢はその収益の50%を得られると、ウォール・ストリート・ジャーナル(The Wall Street Journal)は報じている。

いま現在、ブランド勢がコンテンツ直後の広告枠を買えるのは、メジャーリーグサッカー(Major League Soccer)、UFC、WWEのほか、Buzzfeed、コンデナスト、ドットダッシュ・メレディス(DotDash Meredith)、ハースト・マガジン(Hearst Magazines)、NBCユニバーサル(NBCUniversal)、ボックス・メディア(Vox Media)といったパブリッシャーに限られている。

広告主はまた、TikTokにアップされる重要イベント関連のパブリッシャーコンテンツにも枠を購入でき、各パブリッシャーのオーディエンスにリーチするべく、期限のないいわゆるエバーグリーンキャンペーンを打てる。

多様な世帯へのリーチを可能にしたTikTokキャンペーン

IABのCEOデビッド・コーエン氏によれば、今回のTikTokのニューフロンツセッションに招待したのはわずか100人前後だった。メディアには非公開だったが、TikTok広報はパルス・プレミアに関する情報は提供した。

サンバTV(Samba TV)のCMOであるメレディス・ブレイス氏は、TikTokと結んだ最近のパートナーシップについて、効果測定プロバイダーのツールを用いて測った、30以上におよぶTikTok視聴キャンペーンの結果を披露した。同氏によれば、TikTokキャンペーンの97%が、提携がなければ当該番組を視聴しなかったと思われる世帯の視聴数増に貢献しており、平均視聴増加率は159%だった。

TikTok視聴広告を見た後で視聴した世帯は、各番組を平均86分間視聴した――これは、広告を見ていないオーディエンスのそれに比べて26%高いと、サンバTVは発表した。

ただし、TikTokパルス(TikTok Pulse)を検討する広告主およびパブリッシャーは、TikTokトラフィックのクオリティも検討したいだろうと、偽トラフィックの検知および軽減に寄与するイスラエルのサイバーセキュリティ企業CHEQは指摘する。2023年度初頭の3カ月間、TikTokを起源とする3000万サイトへの訪問を分析したところ、TikTokからカスタマーウェブサイトに至った全世界のトラフィックの内、8.5%はおそらく、ボットやスクレイパー、クリックファームなどの無効なものであると、CHEQは判断した。

CHEQは、訪問者が本物か偽物かを判断するべく、数千ものリアルタイムセキュリティ手段を講じてトラフィックを調べ、米国におけるTikTokトラフィックの9.6%がフェイクであるとも同定した(なお、同社は同様のトラフィック分析をTwitterなどのソーシャルネットワークでもおこなっている)。

ライブを強化

コンデナストは今年のニューフロンツで大規模なプレゼンを行なった唯一のバブリッシャーだった。つまり、BuzzFeed社(BuzzFeed Inc)やバイス・メディア・グループ(Vice Media Group)といった大手デジタルメディア企業がIABのイベントの一環として、マーケターを集める派手な会合を催した日々はすでに過去のもの、ということだ。

コンデナストは今回、プレゼンの大半をライブイベントの話題に割き、なかでもファッションの祭典メットガラ(Met Gala)のレッドカーペットの報道(ヴォーグ[Vogue]の独占)、ヴォーグ・ワールド(Vogue World)や、ヴァニティ・フェア(Vanity Fair)によるアカデミー賞の報道、GQによるスーパーボウルといったスポーツイベントの報道に言及した。

ヴォーグ・ワールドは2022年のニューヨーク・シティにおける一大ファッションショーおよびストリートフェアに続き、2023年は9月にロンドンで開催され、ストリーム配信が予定されている。

ヴァニティ・フェアの2023年度オスカー・パーティ(Oscar Party)のライブ全世界視聴数は3億2900万に上り、前年比80%増を記録した。また、同イベントのライブニュースにおけるインプレッションは22億回に上ったと、コンデナストのグローバルチーフレベニューオフィサーで、米レベニューおよびAPAC(アジア太平洋)地区のトップであるパム・ドラッカー・マン氏は発表した。

広告主に向けた売り文句は「カルチャーは新たなKPI」

さらに、コンデナストは広告主に向けた以下の新たなプロダクトも紹介した。

  • カスタムブランデッド動画プロダクト、インサイド・ストーリー(Inside Story)
  • 顧客にファーストパーティ洞察とコンデナストのエディターおよびクリエイターへのアクセスを提供する新たなB2Bサービス、コンデナスト・コンサルティング(Condé Nast Consulting)
  • 新たなグローバルコントリビューターズネットワーク

コンデナストのグローバルコマーシャルレベニュー部門チーフビジネスオフィサーであるクレイグ・コステリック氏いわく、広告主に向けた鍵となる売り文句は「カルチャー(文化)は新たなKPIだ。カルチャーに合致していれば(中略)消費者は自ずと付いてくる」だという。

コンデナストの動画コンテンツ(ライブに限らない)の視聴数は、全プラットフォームを通じて計148億を数え、前年比10%増を記録したと、同社は発表した。YouTubeでは、コンデナストのサブスクライバーは6500万人を越え、前年比12%増を達成。それらサブスクライバーのコンデナストコンテンツに費やす合計視聴時間は、毎月15億分間を超えるという。

同社によれば、ヴォーグのビューティ・シークレット(Beauty Secret)、GQのテン・エッセンシャルズ(10 Essentials)、ADのオープン・ドア(Open Door)の合計視聴数は、年間7億回を超えるようだ。

音楽動画およびアーティストを巡る新たな広告機会

VeVoは今回のイベント中、自らを音楽動画ネットワークと称してマーケターに売り込みをかけており、新たなメディアプランニングツールと広告プロダクトを発表。さらに、ブランデッドコンテンツスタジオの設立を匂わせた。

VeVoのブランデットコンテンツスタジオ「オン・セット(On Set)」は、ライブパフォーマンスや舞台裏を見せる動画、音楽アーティストのインタビュー動画内に広告主が有料で登場できる機会を提供するという。

VeVo・インテリジェンス(The Vevo Intelligence)のツール群は「オーディエンスとその視聴行動、コンテクスチャルおよびクリエイティブな洞察、そしてブランドキャンペーンパフォーマンスを融合し、カスタムなメディア機会を創造する」と、同社のメディアおよびディストリビューションマーケティング部門VPアネッサ・スタイレン氏は話した。

まずは、そのツール群でビジュアルとオーディオの両コンテンツを分析し、同様の雰囲気を有する音楽動画と広告との親和性を見定めるという。同氏はまた、FAST(広告付き無料ストリーミングTV)チャンネルにおいて、広告主が枠を購入し、ブランド名を埋め込める音楽トリビアQ&A広告ブロダクトも実演して見せた。

なお、2023年度のVeVoのグラミー賞番組の視聴者数は1000万人に上ったと、同社のエージェンシーパートナーシップ部門トップであるビンディ・パテル氏は話し、セールス/ディストリビューション部門長であるケヴィン・マクガーン氏は、「TVインベントリーは前年比40%増を記録した」と言及した。VeVoは今回のイベントをコロンビアの音楽アーティストであるJ・バルヴィン氏のパフォーマンスで締め括っている。

プライバシー関連の話題の欠如

メタとスナップの幹部は5月第1週のニューフロンツで、スティーヴ・ジョブズ氏の言葉を引用した。業界最大のアドテク2社の口からその名が出たことは、ジョブズ氏がユーザーの個人情報保護と、データへの透明性付与を擁護していたことを考えると、とりわけ皮肉に思えた。なお、そうした話題は今回のイベントにおけるどのプレゼンにもほぼ存在しなかった

5月4日、Apple元CEOの名前こそ出さなかったものの、メタのグローバルパートナーシップ&エンジニアリング部門VP兼トップであるアルヴィン・ボウエルズ氏は、「メタは人々が欲しかったことにおそらくは気づいていないものを与える手助けをする」と語った。これは、ジョブズ氏の有名な発言である「人々はそれをかたちにして見せられるまで、自分が欲しいものに気づかない」に酷似している。

なお、5月2日にスナップ・アメリカズ(Snap Americas)のトップであるロブ・ウィルク氏がSnapchatの新たなチャットボットのアップデートを紹介する際、その前置きとして「ジャスト・ワン・モア・シング(それと、もう1つだけ)」と発言している。これもまた、Appleの新製品/サービス発表の締め括りに好んで口にしたジョブズ氏の口癖とほぼ同じものだ。

[原文:TikTok, Meta, Vevo announce new ad products and planning tools on NewFronts’ final day

Sara Guaglione and Marty Swant(翻訳:SI Japan、編集:島田涼平)

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