仏フレグランスブランドのディプティック、米で直営店出店を加速:「消費者はオムニチャネル視点で買い物と検索を行う」

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ディプティック(Diptyque)は高級百貨店の定番ブランドとなったが、このフランスのフレグランスブランドは現在、顧客とより直接的な関係築きたいと考えている。パンデミックの期間間、前年比3ケタのD2C売上増を記録したディプティックは、米国内の独立型店舗を増設する一方、既存の店舗の一部を新しいモデルに刷新することに注力している。

実店舗開設に再投資

同社は1961年、フレグランスとキャンドルの店としてパリで創業した。しかし、同ブランドは2019年、北米および中国という最大の市場をターゲットに、リニューアルされたD2Cウェブサイトを公開した。パンデミックのあいだ、同社は前年比で3ケタのD2C売上増を達成し、D2Cは米国における売上のうちの60%以上を占めた。多くの人々が店舗でのショッピングに戻ってきた現在、同社は自社の実店舗を増やすために再度投資している。同社は現在、全世界で90を超えるブティックを運営しており、2018年には70店舗だった店舗数は、2022年の末には100店舗を突破する予定だ。

ディプティックアメリカ(Diptyque Americas)のプレジデントを務めるジュリアン・ゴミション氏は、フレグランスブランドとして、独立型店舗のプレゼンスはブランド認知と商品のエクスペリエンスの両方の目的に「不可欠」だと、米モダンリテールに語った。ディプティックにとって、店舗は、ノードストローム(Nordstrom)やサックスフィフスアベニュー(Saks Fifth Ave)などの小売業者に卸売販売することとは異なる目的も果たす。また、同ブランドはブルーミングデールズ(Bloomingdale’s)内でも店舗内ストアを構えている。

ゴミション氏は次のように述べている。「ブティックは、顧客ともっとも親密に関われる、我々の権威ある足跡であると考えている。また、ブランドのルーツに立ち返る方法でもある」。これは、同ブランドが生地や織物を販売するコンセプトストアとしてはじまったためだ。

フレグランス&ホームブランドへの転換

ディプティックといえば、サイズによって1瓶40ドル(約5400円)から72ドル(約9720円)で販売されているラグジュアリーキャンドルの商品ラインが代表的だ。しかし現在のディプティックは、本格的なフレグランスとホームインテリアブランドになるという野心を抱いている。同社は2021年2月には、トレイやコースター、装飾物などのテーブルウェアを取りそろえたホームデコレーションコレクションを発売し、今後も引き続き拡大することを計画している。さらに多くの自社店舗を開設することで、自社の品揃えを充実させることにも注力する。

新しい一連の店舗は、ディプティックの複数年にわたる展開戦略の一環であり、店舗もこの戦略に従い、同ブランドがフランス発祥であることを反映した、顧客を引き寄せるような魅力的な空間へと転換してきた。この戦略のもとで開設された最初の店舗はニューヨークのノリータ地区にあり、2021年中盤に再オープンした。

これらの新しい店舗では、ほかの美容・ライフスタイル関連の高級ブランドの近くにある、人通りの多いショッピングハブをターゲットにしている。また、この活動の多くは忙しいホリデーシーズンの前に行われる予定だ。

実店舗は顧客獲得として機能

ディプティックは10月、ブルックリンのウィリアムズバーグ地区にある店舗を改装し、新規オープンした。また、サンフランシスコのフィルモアストリートにも新しいブティックを開設した。この店舗はパリ風の黒と白のタイルによるフロアと、石造りの暖炉が特徴で、これは、同ブランドのフラッグシップデザインの中心的存在になっている。

ゴミション氏は次のように述べている。「どの店舗も独自のデザインなので、すべての店舗で同じ内装やアートワークは使用しない。これによって、ブランドが最初に創設されたときのブティックのような雰囲気をかもし出している」。

先月には、ワシントンD.C.のジョージタウン地区にホリデー用のポップアップ店舗も公開した。この店舗は、宇宙をテーマとした同ブランドのホリデーコレクション「マップオブスターズ(Map of Stars)」を中心に特別に設計されたものだ。同店舗はホリデーシーズン終了後に閉店し、2023年3月には常設店舗として再オープンする予定だ。別の独立型店舗は、ラスベガスにあるカジノホテル、シーザーズパレスのザ・フォーラム・ショップス(The Forum Shops)内にあり、同様に2022年末にオープンする予定だ。今秋には、ザ・リッツ・カールトン(The Ritz-Cartlon)と共同のポップアップ店舗を発表し、ホリデーシーズン中、一部のホテルの店舗で限定ギフトセットを販売する予定だ

また、ディプティックは独自の店舗、限定商品、ギフト用ラッピングやフレグランスの詰め替えステーションなど、特別なサービスを組み合わせることで、D2Cの成長を継続させることに期待している。

「我々には香りの膨大なコレクションがあり、人々は使ってみる前に香りを確認することを望んでいる。店舗はそのために大きな役割を果たしている」とゴミション氏は述べ、同社の店舗は今後、最大の顧客獲得ツールとして機能すると付け加えている。一方、eコマースチャネルは、すでに好みの香りが決まっている既存の顧客を対象としたチャネルと位置づけている。

大都市以外にも出店

これまでディプティックの北米部門は、ニューヨークやロサンゼルスのような大都市を重視してきた。しかし、近年、米国市場は、同ブランドにとって中国以外で最大の市場となりつつあるため、来年にはさらに店舗を増やすことを予定していると、ゴミション氏は語る。「シカゴ、ダラス、ヒューストン、アトランタ、マイアミ、さらに、ノースカロライナなどの2次的な市場も視野に入れている」と、同氏は付け加えている。

アルバレズ・アンド・マルサル・コンシューマリテールグループ(Alvarez & Marsal Consumer Retail Group)のディレクターを務めるデビッド・シュナイドマン氏は、この数年間、eコマースがショッピングを支配しているため、各ブランドは実店舗のエクスペリエンスを再構築しようとしていると語る。

「消費者はオムニチャネルのレンズでショッピングと検索を行うので、持続可能な成長を続けるには、ある種の物理的なプレゼンスが不可欠だ」と、シュナイドマン氏は述べる。ディプティックのようなレガシーブランドの場合、これは百貨店のような卸売パートナーとの関係を維持しながら、独自の店舗も成長させることを意味している。

ディプティックにとって、独立型店舗の増加は、拡充され続けている商品のコレクションの多くを展示するためにも役立つ。

「新しいパーソナルフレグランスのオルフェロン(Orpheon)を2年前に発売したが、このカテゴリーは我々にとって大きな焦点であり、今後も重視していく」と、ゴミション氏は述べている。「また、ホームデコレーションの分野にも進出し、これらのセレクションのさらに多くを展示することで、買い物客が店舗で実際にその商品を触って試せるようにしていく」と、同氏は述べる。

[原文:French fragrance brand Diptyque plans more standalone stores across the U.S.]

GABRIELA BARKHO(翻訳:ジェスコーポレーション、編集:戸田美子)
Image via Diptyque

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