深い眠りが足りなくなる睡眠時無呼吸症候群は、脳の健康の悪化と関連があることが最近の研究でわかりました。
研究によれば、重い睡眠時無呼吸症候群の高齢患者には、認知症や脳卒中のリスク上昇に結び付く脳バイオマーカー(生理学的指標)が多数見られたとのこと。
しかし、この因果関係を理解するにはさらなる研究が必要そうです。
睡眠時無呼吸症候群とは
睡眠時無呼吸症候群とは、睡眠中に呼吸が止まってしまう病気です。
脳が目覚めて呼吸を再開させるものの、また眠りに落ちると呼吸が止まるというサイクルを繰り返します。
睡眠時無呼吸症候群には大別して閉塞型と中枢型の2つの種類があり、前者は気道の筋肉が物理的に呼吸を妨げられた際に発生し、後者は脳が呼吸する信号を出し忘れた際に発生します(3つ目の混合型は両方の特徴を備えています)。
睡眠中に気道が狭くなると生じるイビキは、この疾患ではよく見られる症状です(だからといって、すべてのイビキが閉塞型の無呼吸症候群に結び付くわけではありません)。
無呼吸によって睡眠が絶えず中断されるという点も夜間の安眠を困難にしており、心身の健康にさまざまな影響を与える可能性があります。
どんなリスクがあるのか
無呼吸症候群は特に重度だと、循環器疾患を含むさまざまな別の健康問題のリスク増大に結び付くとされています。この病気が脳に与えうる影響を調べた研究が先日、科学ジャーナルNeurologyに発表されました。
この研究で調べたのは、脳MRI検査と睡眠検査室で夜間のモニタリングを受けたことのある高齢の閉塞型無呼吸症候群患者140名から収集したデータ。
研究の開始時及び終了時まで全員に認知症の発現は見られず、診断された重症度に基づいて3つのグループに分けられました。
研究者たちは、無呼吸症候群が軽度あるいは中程度の人々と比べ、重度の人々は大脳白質病変が増加していたことに気付きました。
大脳白質病変とは脳の白質にある小さな病変(病気により起こる心身の変化)のことで、MRIで確認できます。
さらに重度の無呼吸症候群の人々は徐波睡眠、つまり深い睡眠が乏しい傾向にもあり、それとは別に深い睡眠の不足と大脳白質病変の増大も関連性があるそう。
大脳白質病変は年を取るにつれてよく見られるようになってくるものです。しかし、このような病変が多数あることは、認知症や脳卒中といった病気になるリスクの高さと結び付けられてきました。ですからこの潜在的な関連性には警戒すべきだと、研究の著者らは言います。
慎重に扱うべき兆候
「こうしたバイオマーカーは早期の脳血管疾患の慎重に扱うべき兆候」だと、研究の著者でミネソタ州ロチェスターにあるメイヨー・クリニックの研究員Diego Carvalho氏はアメリカ神経学会のリリースの中で述べていました。
脳内のこうした変化に対する治療法がないからこそ、重度の睡眠時無呼吸症候群及び徐波睡眠の減少とこのようなバイオマーカーとの関連性を発見したことは重要で、発生や悪化を防ぐ方法を見つける必要がある。
その一方で、睡眠時無呼吸症候群とこれらのバイオマーカーとが実際にはどんな性質の関係なのかはまだ分かっていません。
このデータからは、重度の睡眠時無呼吸症候群の罹患が実際に大脳白質病変の増加を引き起こすかどうかは判断できないからです。
病変が前から存在する、睡眠時無呼吸症候群の悪化に一役買う、はたまた別の要因がどちらかのリスク上昇を促している可能性もあります。研究者たちいわく、因果関係の立証や他の疑問を解くには、より長期的な研究が必要になるそう。
睡眠の問題がこういった脳バイオマーカーに影響を及ぼすかどうか、あるいはその逆なのかを見極めるにはさらなる研究が必要。
とCarvalho氏。「睡眠の質を向上させる計画または睡眠時無呼吸症候群の治療が、このようなバイオマーカーに影響するかどうかを調べる必要もあります」と述べていました。
睡眠時無呼吸症候群の治療が認知症のリスクを下げる可能性があるという研究も出ていますし、因果関係の解明を願うばかりです。
Source: Cleveland Clinic, Johns Hopkins Medicine, Neurology Journal, The BMJ, Michigan Medicine,