地球温暖化による海面上昇で100年後には1000万人を超えるアメリカ人が「孤立」してしまう可能性

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以前から、地球温暖化に伴う海面上昇によって海抜の低い地域が水没し、人間の生活空間が狭まることが懸念されてきました。新たな研究では、人間の生活空間が水没しなくても海面上昇によって道路や橋が使えなくなり、大勢の人々が「孤立」してしまう可能性があると指摘されています。

Risk of isolation increases the expected burden from sea-level rise | Nature Climate Change
https://doi.org/10.1038/s41558-023-01642-3


Mapping the risks of isolation due to sea level rise associated with global warming
https://phys.org/news/2023-03-isolation-due-sea-global.html

Rising Seas Threaten to Cut Off Millions of Americans This Century : ScienceAlert
https://www.sciencealert.com/rising-seas-threaten-to-cut-off-millions-of-americans-this-century

海面上昇に関連した研究の多くは「人々の財産」が水没してしまうことに焦点を当ててきましたが、これらの研究では誰かの所有物ではないものの社会的に重要な「道路」が水没し、通行できなくなってしまう可能性が考慮されていません。

常に一部の地域が海に取り囲まれてしまうほどではなく、単に主要な道路や橋が一時的に水没するだけでも、水が引くまでの間はその地域が孤立してしまいます。この現象はハリケーンのような大嵐が起きた時に起こり得るものですが、海面が上昇するにつれて満潮時にも頻発する可能性があるとのこと。

孤立によって主要なインフラストラクチャーへのアクセスが途絶えてしまうと、生活の質が大幅に低下します。たとえば、満潮のたびにある地域の道路が浸水して最寄りの食料品店へのルートが寸断されるようになると、その地域に住む人々は満潮のたびに食べ物を入手できなくなってしまいます。もちろん、満潮前に食料を買いだめしておくことはできますが、これは一時しのぎにすぎません。


ニュージーランド・カンタベリー大学とアメリカ・メリーランド大学の研究チームは、「財産の浸水に基づく指標は、海面上昇のより広範で連鎖的・間接的な影響を十分に捉えないため、リスクを過小評価する可能性があります」と述べ、海面上昇によって必要不可欠なサービスから切り離されて孤立してしまう人々を考慮した分析を行いました。

研究チームはオープンデータの地図プロジェクト・OpenStreetMapから取得したデータを利用してアメリカ本土の道路をマッピングし、海面上昇によって水没することが予測されている範囲と照らし合わせました。そして、「2100年までに0.5mの海面上昇」「2100年までに1mの海面上昇」「2100年までに2mの海面上昇」という3つのシナリオについて、消防署や小学校といった近隣の重要施設へのアクセスが海水によって寸断されるかどうかを分析しました。

海面上昇(横軸)によって「isolated(孤立)」するアメリカの人口(青色)と「inundated(浸水)」する人口(赤色)を比較した以下のグラフを見ると、住居が浸水するリスクがある人口と比べ、孤立するリスクがある人口は30~90%高いことがわかります。


2100年までに0.5m海面が上昇するシナリオで、孤立または浸水する人口をグラフにしたものが以下。2080年までに60万人以上が孤立する可能性があるとのことです。


2100年までに1m海面が上昇するシナリオのグラフを見ると、2080年までに孤立する人口は約90万人に達することがわかります。


2100年までに2m海面が上昇するシナリオでは、2130年までに1550万人近くが孤立する可能性があると示されました。


研究チームは、「孤立のリスクは浸水のリスクより数十年早く生じる可能性があることがわかりました。どちらのリスク指標も対応策を評価し、リスクのあるコミュニティへの支援を優先させる上で重要な情報となります」と述べました。

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