ブロックチェーンを用いた無線アクセス共用技術をNTTが開発、増大する無線通信の需要に対して設備コストや消費電力を削減しつつ対処可能

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日本電信電話(NTT)が、都市の至る所に設置された無線アクセス装置を、ブロックチェーンを用いることで誰でもその都度契約して利用可能とする個人間の無線アクセス共用技術の実証実験に成功したことを発表しました。

世界初、ブロックチェーンを用いた無線アクセス共用技術の実証実験に成功~社会全体の設備コストや消費電力の削減につながる個人間のICTリソース共用の実現に貢献~ | ニュースリリース | NTT
https://group.ntt/jp/newsrelease/2023/04/26/230426a.html


Surplus Wi-Fi Access points should be shared, says NTT • The Register
https://www.theregister.com/2023/04/27/ntt_network_sharing_blockchain/


NTTによると、2030年には2020年と比較して無線トラフィックが約80倍に増加するとされており、無線アクセスのさらなる高度化に加え、全ての無線トラフィックを処理するための無線リソースの確保が急務とされています。無線リソースの確保には、無線基地局などを大幅に増設する方法がありますが、全ての無線トラフィックを処理する設備を増設した場合、コストの高騰が課題となります。

個人や企業が保有する無線LANやローカル5Gなどの無線リソースを有効利用することができれば、コストを抑えつつ無線リソースを確保することが可能となります。東京都内には推定約500万台の無線LANアクセスポイントが稼働しており、必要な無線トラフィックに対して約20倍のアクセスポイントがすでに設置されています。余剰なアクセスポイントを他者と共有することができれば、最小限の無線設備や消費電力で、将来的に見込まれる無線トラフィックの増大に対応することが可能となります。

しかし、従来の無線アクセスを共用する方法では、セキュリティや利用効率の低下、通信品質の劣化といった課題が存在していました。


そこで、NTTはブロックチェーンを用いることで無線アクセス共用技術に存在した課題を解決するべく実証実験を行いました。

NTTのブロックチェーンを用いた無線アクセス共用技術では、まずユーザーが持つデバイスは、Wi-Fiなどの無線信号を観測した周囲の無線基地局のリストと自身のデジタル署名を付与し、通信契約に関するトランザクションを発行します。

その後、ブロックチェーンネットワーク上でデジタル署名を検証することで、本人確認を行うとともに要求内容に改ざんなどの不正がないことを確認します。さらに、個人のデバイスが送信した周囲の無線基地局のリストから各基地局の混雑状況を考慮し、適切な接続先を決定します。

アクセスポイントの運営者、つまりは自身の保有する無線アクセスを共有する側は、サービスの利用者から報酬を受け取ることが可能となります。


NTTが行った実証実験では、それぞれ管理者の異なる3台の無線基地局と10台のデバイスを用意し、ブロックチェーンを用いた無線アクセス共用技術を用いることで、さまざまな管理者の無線アクセスが混在している場合でも、各デバイスがその都度契約を結び、無線アクセスを利用できることが確認されています。

また、通信品質の優れた無線アクセスポイントにデバイスが集中してしまう問題について、NTT独自の無線リソース利用向上技術を用いることで解決しています。この無線リソース利用向上技術を用いてブロックチェーンネットワーク上の通信契約履歴を参照することで、各無線基地局に接続しているデバイスの数と混雑状況を把握。そして混雑している無線基地局ほど通信料を高く、混雑していない無線基地局ほど通信料を安くするように制御することで、一部の無線アクセスポイントに人が集中することを抑制しています。NTTが行った実証実験の様子が以下。無線リソースの利用効率向上技術を用いることで、無線基地局に接続するデバイスの数を分散型かつ自律的に平準化することが可能です。


この無線リソース利用向上技術を用いることで、結果的に混雑が解消され、無線アクセス全体の無線リソース利用効率が向上するとされています。無線リソースの利用効率向上技術の有無による全デバイスのデータ量やデータ転送速度を表す「スループット」を示したグラフが以下。利用向上技術を用いない場合、総スループットは約139Mbps、中央値は約12.6Mbpsだったのに対し、利用向上技術を用いた場合、総スループットは約175Mbps、中央値は約18.6Mbpsと大きく向上しています。


NTTは今後の展望として、無線接続に対する需要が急増した場合でも、無線アクセス共用技術と無線リソースの利用効率向上技術をスケールアップさせることができれば、Wi-Fiアクセスポイントや移動基地局を増設する必要がなくなると予測しています。また、エネルギー消費量を増加させることなくネットワークの拡張が可能になることで、これまで使用されていた周波数帯も他の用途に用いることができるようになると推測しています。

さらに、災害時の無線アクセスが途絶した場合でも、これらの技術を適用することで、他の無線アクセスへのシームレスな移行が可能となり、災害時においても途切れにくいネットワークの提供が期待されています。NTTは「無線アクセス提供者へのインセンティブを通した、将来の新たな無線アクセス共用の実現をめざして、2024年度の技術確立に向けてさらなる検討を推進します」と述べています。

一方で海外ニュースメディアのThe Registerは「公共ネットワークを利用することの危険性などの、セキュリティに関するさまざまな反対意見に対処する必要があります。これらの問題は、ブロックチェーンという新技術をもってしてもすべて解決することは困難です」と指摘しています。

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