2023年、Amazon出品者がAmazon以外のマーケットプレイスに商品を持ち込もうとしている背景

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Amazonの積み上がったフルフィルメント料金に落胆し、eコマース大手企業である同社への依存を減らそうとする出品者が増えてきている。

調査・助言会社のガートナー(Gartner)の一部門であるオンラインマーケットプレイスベンダーのキャプテラ(Capterra)が発表した最近の調査によると、現在Amazonで販売している中小規模の小売業者の99%が、来年は別のeコマースマーケットプレイスで販売したいと考えている。

調査に応じた出品者の半分が、Googleショッピング(Google Shopping)、eBay、Facebookマーケットプレイス(Facebook Marketplace)での販売を開始するとしている。さらに、回答者の47%が、ウォルマートマーケットプレイス(Walmart Marketplace)で販売すると答えている。2022年のAmazon出品者アンケート(Amazon Seller Survey)でも、回答したフルフィルメントby Amazon(FBA)ユーザーの31%が現在、Amazon以外のマーケットプレイスでも販売していると答えている。キャプテラは、10月から11月のあいだに、1年以上Amazonで商品を販売している306社の小売業者を対象に聞き取り調査を行った。

マーケットプレイスの多角化を検討するAmazon出品者

米モダンリテールが取材した出品者は一様に、販売経路となるマーケットプレイスの多角化を真剣に考えていると述べている。一部の出品者は、FBAのコストが高いことにうんざりしている。eコマースインテリジェンス会社のマーケットプレイスパルス(Marketplace Pulse)のデータによると、Amazonはフルフィルメント料金を2020年以降30%以上値上げした。一方で、単純により多くのマーケットプレイスを通じて販売すれば、より早く成長できると考えている出品者もいる。

「小売業者が、ホリデーシーズンに値上がりするロジスティクスコストを負担するのはいつものことだが、今シーズンは特にひどい」と、キャプテラのシニアアナリストで、小売業と飲食業を専門とするモーリー・バーク氏は語る。さらに同氏は、「Amazonにとって今までになかったことだ。2023年にどこで販売するかを検討する上で、一部の小売業者が足踏みしていることは、データを見れば明らかだ」と付け加えている。

バーク氏によると、このような小売業者はGoogleショッピング、Walmart.com、Facebookなどほかのマーケットプレイスに参加するかもしれないが、Amazonでの販売を継続する限り、必ずしもほかのマーケットプレイスでより安い価格で販売することはできないという。ただし、ほかのプラットフォームでブランド認知度を高め、新しいオーディエンスにリーチし、料金を少し節約することはできるだろうと、同氏は付け加えている。

コスト値上げへの不満

この数カ月、Amazon出品者に課せられる料金はますます高くなった。Amazonは1月、FBAフルフィルメント料金を5.2%値上げした。4月には、出荷サービスを利用するオンライン出品者に、5%の燃料およびインフレサーチャージも課した。サプライチェーン全体のコスト上昇もあり、FBAの利用コストにそれだけの価値があるかを考え直す出品者が出てきた。

「不満を持っている出品者は多い」と、粉末状スーパーフードブランドのアップリフトフローラ(Uplift Florae)の創設者で、収益加速エージェンシーのクランチグロース(CrunchGrowth)のCEOを務めるフィル・マシエロ氏は米モダンリテールに語った。「どこに価値があるのか。もうAmazonとFBAから利益を出すことはできない」。

マシエロ氏は、オンラインで200万ドル(約2億6000万円)ほどの売上を達成しているCPGクライアントは50社近くいるが、そのすべてが来年はAmazon以外にも展開することを計画しているという。特に、あるクライアントはホットソースとパスタのメーカーで、長年FBA出品者であったが、このクライアントでさえ、2022年の第1四半期にAmazonが今年最初の料金値上げのあと、Walmart.comなどでの販売を開始した。

「Amazonに顧客がいるのは事実だ。だが、コストを引き上げたらどうなると思うか。コストを回収するには商品の価格を値上げするしかない」と、マシエロ氏はいう。しかし、Amazonは出品者に、Amazonでの販売価格を最安値にするよう求めているため、値上げは難しい。

キャプテラの調査は匿名で行われたが、バーク氏は、回答者の多くはアパレル業界で、その次に電子機器業界、ビューティーおよびパーソナルケア業界が多かったという。「小売業者が販売する製品カテゴリーのなかで、特に売れ筋なのは衣類とアクセサリーだが、そのほかに消費者向け電子機器もある。電子機器は、衣類やアクセサリーよりも重く、専門的な技術が関係するので、Amazonで販売するのは少々難しい。Amazonで競争することが難しいカテゴリーだろう」と同氏は述べている。

それでもAmazon離れが急速に進行しない理由

マシエロ氏は、同氏のクライアントの多くが、特にWalmart.com、フェール(Faire)、ボナンザ(Bonanza)で商品を販売しようと目論んでいるという。また、年間売上が100万ドル(約1億3200万円)を超えるようになれば、異なるマーケットプレイスに多角化した方がフルフィルメントをより簡単に処理できるようになるため、ブランドにとってメリットが生じると、同氏は付け加えている。

「違った経済的方程式になる」と、同氏は述べている。

2010年からAmazonで健康と美容に関する商品を販売しているレスリー・ヘンセル氏が戦略を変えたのは、コストの高さだけが理由ではない。「独自のShopify(ショッピファイ)ストアなどを展開している出品者のほとんどは、多角化して複数の販売経路を利用できるようにすることを目的としている」。

一方でヘンセル氏は、出品者のAmazon離れが急激には進んでいない理由をいくつか指摘している。まず、すべてのマーケットプレイスが出品者向けのフルフィルメントサービスを提供しているわけではない。「出品者が商品をターゲットプラス(Target Plus)や、Shopify、eBay、ウェイフェア(Wayfair)で売ろうと思ったら、自社でも、サードパーティの物流会社でもよいが、すべてのフルフィルメントを処理する出荷オペレーションを用意しなければならない」とヘンセル氏は述べている。さらに、ウォルマートなどほかのマーケットプレイスで商品の販売を開始した出品者でも、売上の最大の割合を占めるのはAmazonだ。「ウォルマートのオンライン販売も成長を続けているが、それでも、通常は出品者の売上の10%以下にしかならない」と、同氏は付け加えている。

結局のところ、フルフィルメントと出荷のコストの観点から言えば、Amazonは出品者にとって最適なのだとヘンセル氏はいう。「これらのコストを洗い出していくと、最終的に、Amazonは良心的だということになる」。

[原文:Why more Amazon sellers are looking to bring their products to rival marketplaces in 2023]

Vidhi Choudhary(翻訳:ジェスコーポレーション、編集:戸田美子)
Illustration by Ivy Liu

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