こちらは、小売業界の最前線を伝えるメディア「モダンリテール[日本版]」の記事です
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多くのD2Cブランドにとって、もっとも必要とされるインフルエンサーは、地元の医師かもしれない。
ビタミン剤ブランドのペレレル(Perelel)は、医療従事者のネットワークを活用し、患者に製品を勧めたり、サンプルを配布している。妊産婦用ビタミンや不妊治療用ビタミンを含む同社の製品は、ロサンゼルスの30カ所を含む全米250カ所の医院に置かれている。ペレレルの医療専門家パートナーの多くは、産婦人科医や不妊治療専門医で、鍼灸師や自然療法医も少数いる。
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ペレレルの共同設立者兼共同CEOであるアレクサンドラ・テイラー氏は、米モダンリテールの取材に対し、「我々は、自分の体の中に何を入れるかという点で、顧客がどこに影響を受けるかを考えた。その顧客が、すでに自然に安全だと感じている環境にブランドを置くことが、我々にとっては不可欠だった」。
もうひとつのタッチポイント
ペレレルのように、多くのD2Cブランドは、サンプルを配布したり、クリニックを販売チャネルとして利用することで、医療専門家に製品を支持してもらえるようになった。医療従事者や「ドクフルエンサー」は、その専門性から人々の信頼を集めており、従来のコンテンツクリエイターが製品を宣伝する際に苦労するような特性を持っている。医療従事者は、製品が持つ科学的な効果について語ることができるため、製品を試してもらいたいブランドにとって人気のパートナーとなっている。
テイラー氏は、同社のソーシャルメディアチャネルに寄せられたレビューやコメントから、顧客の多くが医師のオフィスを通じて製品を発見していると述べる。同社は、サンプルを配るために医師に報酬を支払うことも、サンプルの入った箱を受け取るために医師が報酬を支払うこともない。しかし、医師には無料でサンプルが配られ、なくなると補充される。同社のパートナーには、サンタモニカ・ウィメンズヘルス(Santa Monica Women’s Health)、CCRM(センター・フォー・コマーシャライゼーション・オブ・リジェネレーティブ・メディシン)、リプロダクティブ・パートナーズ(Reproductive Partners)が含まれている。
「新しいブランドとの取引が成立するまでに、最終的に7回の接触を要する可能性があるが、我々はこれを、もうひとつのタッチポイントと捉えている」とテイラー氏は語る。「ペレレルは医者の診察室にある、という潜在的なつながりを持つことさえできれば、それは価値のあることなのだ。なぜなら、彼らをソーシャルで再ターゲティングしたり、彼らがインフルエンサーのチャネルでたまたまペレレルを見たりしても、すでにその信頼できるつながりがあるからだ」。
「ドクフルエンサー」の台頭
医療関係者をインフルエンサーとして起用することは、決して新しいことではない。インフルエンサーマーケティングのプラットフォームであるグリン(Grin)でマーケティング担当副社長を務めるアリ・ファザル氏は、「実際、インフォマーシャルが全盛だった頃から、ブランドはプロモーションのなかで医師を起用していた。当時、マーケティング担当者は、マーケティングのノイズを遮断するためにそうしていたが、今日では、ブランドが、買い物客を獲得するために同じ戦術を採用している」という。
さらに最近では、スキンケア領域において、皮膚科医がスポンサードコンテンツやその他の形式の有料広告を行うことが普通になってきている。TikTokのフォロワーが1800万人近くいる皮膚科医のムニーブ・シャー氏は、皮膚科プラットフォームのコーティナ(Cortina)で医療コンテンツアドバイザーを務めているほどだ。シャー氏は、コーティナのソーシャルメディアコンテンツにアドバイスを行っている。
「その根拠はよく似ている」とファザル氏は話す。「このようなことは、市場が混み合い、多くのブランドが世間の注目を浴びるために競合する時によく起こるものだ」。
D2Cメディカルウェアブランドのフィグス(Figs)の場合、その医療従事者アンバサダープログラムは、S-1によると、2018年から2020年のあいだに顧客獲得コストを61%下げて39ドル(約5300円)にすることに貢献した。医師は、職位とソーシャルメディアのハンドルネームを尋ねるフォームに記入することで、プログラムに応募することができる。フィグスのアンバサダーのなかには、10万人以上のフォロワーを持つ人もいる。
効果的な販売チャネルに
しかし、こうした医療関係者は、ソーシャルメディアのフォロワーが多くなくても、効果を発揮することができます。
口腔内ケアブランドのボカ(Boka)は、同社の歯科卸売業者の多くは、同社の製品に関心のある個人診療所であると、以前、米モダンリテールの取材に対して語っていた。「歯科医がストーリーを語り、患者を興奮させる方法は、非常に信頼性が高く、その信頼性こそが、ブランドのバイラリティにつながる」と、ボカのブランドディレクターであるニーシャ・カーナ氏は語った。「彼らは、いろいろな意味で、我々の代わりに苦労してくれているのだ」。
クリニックも効果的な販売チャネルになり得る。ボカでもっとも急成長している販売チャネルは、歯科用卸売事業で、前年比150%の伸びを示している。歯磨き粉、デンタルフロス、歯ブラシのチューブを販売する同ブランドは、1345人の歯科の顧客を抱えており、ボカのフルサイズ製品を購入して再販したり、患者さんにサンプルを提供したりしている。
靴の中敷きメーカーのフルトン(Fulton)と提携したカイロプラクター、理学療法士、足病医は、患者に直接製品を販売することはないが、フルトンのサイトに誘導して購入してもらっている。フルトンによると、2023年1月には、2022年1月から8月までの販売数と同数のペアが売れたという。ブランドのパートナーは、フルトンから報酬をもらったり、売上の一部を受け取ることもないが、展示やプロモーションのための無料サンプルを受け取ることができる。
こうした医院は、人々が新製品を試すのに十分な安心感を与えることもできると、グリンのファザル氏は述べる。同氏は、「オンラインで何かを購入する場合、それは本当に多くの点において未知の分野だ。私たちにとっては、少し危険で、少し信頼性に欠けるように感じるかもしれない。だから、医療従事者が関わることで、信頼性が増すと思っている」とも語る。
パートナー医師の審査も
マーケティング会社ジ・インフルエンサーマーケティング・ファクトリー(The Influencer Marketing Factory)のCEO兼共同創業者であるアレッサンドロ・ボグリアリ氏は、ほかのインフルエンサーとの契約と同様、ブランド側は医師のパートナー候補からの警告に注意する必要があるという。その医師が過去に推薦した製品を調べることは、有用な指標になると同氏は説明した。
「すべてを支持してくれる人を探したくはない。なぜなら、製品の価値がゼロになってしまうからだ」 とボグリアリ氏は話した。「その人物が過去に不祥事を起こしていないことを確認したいのだ」。
ペレレルの場合、医療関係者であれば誰でも応募できるが、一定の資格を満たす必要があるため、審査を行っている。
「初日から、医師をブランドの一員として迎え入れた」とテイラー氏は話した。「医師は、我々の健康をサポートするために、私たちの体内に何を取り込むべきかをもっともよく知っている人たちだからだ」。
[原文:The rise of docfluencers: Why DTC brands are increasingly tapping medical professionals]
Maria Monteros(翻訳・編集:戸田美子)
Image via Perelel