自社独自の マーケットプレイス を立ち上げる専門店が増えている:専門性を活かした新たな収入源

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オンラインマーケットプレイスにもっとも新たに参入したのが、専門店だ。

アート&クラフト用品小売のマイケルズ(Michaels)は2月27日、オンラインマーケットプレイスの開始を発表した。このマーケットプレイスでは、買い物客がサードパーティーの出品者が厳選した75万点の新商品にアクセスできるようになる。10年以上にわたってオンライン招待状の送付を中心に事業を続けてきたペーパーレスポスト(Paperless Post)は、イベント関連商品用のオンラインマーケットプレイスを7月に公開した。デビッズブライダル(David’s Bridal)は1月、結婚式の会場や、写真家、ケータリング業者などのサービスを見つけるために役立つプランニングプラットフォームとベンダーマーケットプレイスであるパール(Pearl)を公開した。

最初にオンラインマーケットプレイスを立ち上げた実店舗小売業者は、ターゲット(Target)やウォルマート(Walmart)のような大手小売業者で、Amazonのオンラインならではの「エンドレスアイル(無限の通路)」に対抗できる方法を探し求めていた。しかし現在、あらゆる業界の専門店がマーケットプレイスを立ち上げ、それぞれのカテゴリーでの優位性を活用しようとしている。しかし、数多くのマーケットプレイスが立ち上がっている以上、そのすべてが成功するわけではない。サードパーティーの出品者を適切に審査しなければ、買い物客からの評判を落とすリスクもある。

低コストで新たな収入源を創出

小売業者が独自のマーケットプレイスを立ち上げることを支援するテックベンダーは以前にも増して増えており、市場の動向を追ってマーケットプレイスを立ち上げる小売業者の多くは、ミラクル(Mirakl)やビッグコマース(BigCommerce)といったサードパーティー製のSaaS(ソフトウェア・アズ・ア・サービス)型ソリューションを利用して、マーケットプレイスの管理と運営に取り組んでいる。オンラインマーケットプレイスを持つことで、小売業者は自社の流通網に大きな負荷をかけることなく、多くの商品を品揃えできるという利点がある。

カンター(Kantar)のグローバル小売担当シニアバイスプレジデントを務めるデビッド・マルコッテ氏は次のように述べている。「扱い方によっては最低限のコストで済む。買い物客に別のオプションを提示することで、買い物客をウェブサイトに留めることができる」。

マイケルズのサードパーティー出品者の商品は、Michaels.comから購入できる。同社はeコマースプラットフォームを開設すれば、キャンドルや石鹸づくり、革細工などのさまざまなカテゴリーを通じて、オンラインの品揃えが実質的に4倍以上増えることになる。同社は、出品者からサブスクリプションや登録料金を取る代わりに、標準の手数料を受け取る予定だ。

「アート、クラフト、インテリアのためのマイケルズのキュレーションマーケットプレイスの立ち上げは、すべてのクリエイティブな人々が触発され、学び、買い物し、制作するための目的地となるために我々が継続して進めている、デジタル変革の次のフェーズだ」と、同社のマーケティングおよびeコマース担当エグゼクティブバイスプレジデントを務めるヘザー・ベネット氏は発表で述べている。

マルコッテ氏は、オンラインのマーケットプレイスを持つことで、小売業者はどの商品がよく売れているのかを調査し、その結果に応じて品揃えを調整できると語る。そして、マーケットプレイスは低コストであるにもかかわらず、ベンダーから手数料を徴収することで、小売業者にとっては新たな収益源にもなる。

専門店ならではのレリバンシー

たとえば、デビッズブライダルのマーケットプレイスであるパールでは、登録を希望する業者は月額49ドル(約6560円)から119ドル(約1万5900円)の会員プランを支払うことになる。

デビッズブライダルのCEOを務めるジム・マーカム氏は以前、米モダンリテールの取材に対し、このプラットフォームがあることで、買い物客のあいだで同社がトップオブマインド(第一に想起する)を維持できると語った。「パールがロスリーダーになるとは考えていないが、ここで収益予測を立てることはしていない。信じられないかもしれないが、当面のところそれは重要ではない。我々にとって重要なのは、花嫁とのレリバンシー(関連性)だ」。

ガートナー(Gartner)のディレクターアナリストを務めるマット・ムーラット氏は、これらの専門店がそれぞれのカテゴリーにおける自社のレリバンシーも活用しているという。各カテゴリーにおけるブランドの評判によって、専門店は大手のeコマースマーケットプレイスより優位を得ることができると、同氏は付け加えている。

同氏は次のように述べている。「専門店ができることは、これまで常に提供してきたサービスの自然な延長線上に、このサービスを提供することだ。ある意味、専門店はAmazonや同類の業者などにはできない方法で、自分たちのブランドの信頼性を大いに活用することができる。そして、こうした巨大規模のマーケットプレイスのような規模拡大ができないため、専門店はそうせざるを得ないのだ」。

実際にこれらの専門店は、自分たちがもっとも得意とするものを実際に取り入れている。マイケルズは、画材、ジャーナリング用品、ベーキング用具など、アート&クラフトのカテゴリーに属する販売者をひとつにまとめたいと考えている。一方で、独立系の家具小売業者であるマシスホーム(Mathis Home)も12月に独自のマーケットプレイスを立ち上げ、あらゆる家具やインテリア商品をワンストップで販売するショップとしてデザインされている。

取り扱いカテゴリーを増やす専門店も

また、マーケットプレイスを利用して、隣接するカテゴリーの商品を増やしている専門店もいる。1-800-フラワーズドットコム(Flowers.com)はフラワーアレンジメントで知られているが、1月に、地元の出品者からのギフト可能なアイテムを集めたマーケットプレイスプラットフォームのギフツ・アンド・モア(Gifts & More)をリリースし、ギフトのカテゴリーに進出した。

同様に、ペーパーレスポストは2009年の創業以来、オンラインの招待状を販売してきたが、イベントのカテゴリーでシェアを拡大したいと考えている。パーティーショップ(Party Shop)と呼ばれる同社のオンラインマーケットプレイスは、ディナープレート、引出物、風船などパーティーをテーマにしたさまざまな商品を販売している。

同社の共同創業者でCEOを務めるジェームズ・ヒルシュフェルト氏は以前、次のように米モダンリテールに語った。「招待状が送られてから後に、プランニングの全期間がスタートする。招待状は、人々が楽しみ、買い物を行うイベントに繋がる、プランニングのプロセスのはじまりということだ」。

批判が集中することも

ガートナーのムーラット氏は、このようなニッチなプラットフォームは競合が少ないため、サードパーティーの出品者も、そのプラットフォームに加わることで恩恵を受けられると語る。出品者にとって、小規模のマーケットプレイスは、Amazonやウォルマートよりも安価な選択肢でもある。

ただし、オンラインマーケットプレイスにはこうした多くの可能性があるにもかかわらず、すべてが成功するわけではないと、ムーラット氏は語る。これだけ多くのマーケットプレイスが存在すると、専門店が、顧客や質の高いベンダーを集めるのが難しくなる可能性もある。そして、サードパーティーの出品者が買い物客の期待するサービスの水準を満たしていない場合、専門店に非難が集中することもある。

同氏は次のように述べている。「これらの業者が単に座視しているなら、最初から失敗が見えている。単に競合が激しくなるだけではなく、専門店は、最終的に自社にとってもっとも効率的で有効な方法を取る必要があるため、険しい道になることは間違いない」。

[原文:More specialty retailers are launching their own marketplaces]

Maria Monteros(翻訳:ジェスコーポレーション、編集:戸田美子)
Illustration by Ivy Liu

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