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3月上旬、新大統領政権がTikTokの禁止を警告したことで、2020年が再来したかのように少し感じられた。
筆者がTikTokの禁止の警告について最初の記事を書いたのは2年半前、ドナルド・トランプ大統領が、中国を拠点とするバイトダンス(ByteDance)に対して、TikTokの米国事業を45日間以内に売却するよう大統領令を発行したときだ。いうまでもなく、この行政命令は実現しなかった。しかし、ジョー・バイデンの大統領府がバイトダンスに対し、この短尺動画アプリの権利を売却しなければ、米国内でTikTokを禁止する手順を進めると圧力をかけたことを、複数の報道機関が報じた。
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もちろんこの禁止令は決定事項ではないが、このような動きは、TikTokのアプリを通じて広告を配信しているD2Cブランドに波及する可能性がある。TikTokはコメントの要請に応じていない。
筆者が話をしたD2C創業者たちは、TikTokを禁止しても自社のビジネスに大きな脅威を与えることはなく、TikTokの戦略をただちに変更する計画も当面ないと語った。これらの創業者たちは、小売店との提携やほかのソーシャルアプリなどを通した方法など、ブランドへの認知を築き上げるための方法をほかにも有している。しかし、TikTokはこの3年間、最近創業した新興企業がフォロワーをオーガニックに増やし、小売店のバイヤーの目を引くための場所としての地位を確立した。TikTok禁止令は、現行のD2C新興企業への脅威ではないとしても、若い新興企業がブランド認知を築き上げるための有望な方法を排除してしまうことになるだろう。
Z世代とつながる方法
UTI(尿路感染症)に対処するのを助けるサプリメントを販売している女性向け健康ブランドであるチーキーボンサイ(Cheeky Bonsai)を例に挙げる。同社の共同創業者であるエリーズ・オースウェイン氏によると、同社は2021年、まだ販売する商品もなかった頃にTikTokアカウントを作成したと語っている。
TikTokがパンデミックのあいだに爆発的な人気を博した後、同氏はTikTokが急速に、特にZ世代の女性のあいだで、「日常的な膣の健康に関するさまざまなタブーを打破する」動画を投稿するための場所になりつつあることに気づいた。
2年後の今、チーキーボンサイはTikTokに50万人以上のフォロワーを抱えている。「これによって、当社は女性にとって、日常的な性の健康について本当に信用できるブランドとして位置付けられるようになった」と、同氏は述べている。
オースウェイン氏は、同社が小売とのパートナーシップを確保することができたのもTikTokのおかげだとしている。たとえば同社の新しいグミは、全国のターゲット(Target)店舗で3月に発売される。「すべての大手小売業者はZ世代とつながる方法を模索しており、TikTokはそのためのもっとも確実なチャネルだ」と、同氏は述べている。
しかし、チーキーボンサイのような若いブランドがTikTokに可能性を見出しているとはいえ、D2Cブランドが選択するパフォーマンスマーケティングチャネルという選択肢としては、メタ(Meta)を超えたわけではない。同社の広告購入プラットフォームはまだ発展途上であり、Facebookやインスタグラムと同じターゲティング能力やリーチをまだ提供できていないからだ。
新興企業の成長に不可欠
パフォーマンスマーケティング代理店のテイクサムリスク(Take Some Risk)の創業者であるデュアン・ブラウン氏は、同氏のクライアントのうち約20%はTikTokで有料広告を行っているのに対し、約40%がTikTokでオーガニックな存在感を示していると推定している。同氏も、チーキーボンサイのTikTok上でのマーケティングの大部分が、オーガニックな投稿と、何人かのインフルエンサーとのパートナーシップで成り立っていると述べている。
この3年間で、TikTokは特定の新興企業の成長戦略においてより不可欠な要素となっており、TikTokが禁止されることは、TikTokアプリにそれほど依存していない新興企業にとっても、慎重に立てた計画を混乱させる可能性がある。
タンパク質が豊富に含まれたラーメンブランド、イミー(Immi)の共同創業者であるケビン・リー氏は、「2023年および来年における当社の中核戦略のひとつは、TikTokでのオーガニックなプレゼンスを強化することだった」と述べ、同社はフルタイムでTikTokアカウントを管理するためのクリエイターまで雇用したという。
TikTokは、同社の広告予算の15%から20%ほどを占めるにすぎない。しかし、同氏はより実績のあるブランドの創業者たちから、小売での売上を促進するためにTikTokが特に役立ったという話を聞いたという。ポッピー(Poppi)やバブル(Bubble)のようなほかのブランドも、特定のバイラルな動画が、小売での売上を促進するために不可欠だったと、以前米モダンリテールに対して述べた。
また、イミーにとって、卸売への展開は今年の大きな焦点となっている。同ブランドは、1000万ドル(約13億1000万円)のシリーズAラウンドを調達した。リー氏は、6月までに約1000店舗の小売店でイミーが販売されるようになると述べている。
ひとつのプラットフォームに依存しすぎない
同氏は、TikTokへの支出を停止したり、別のプラットフォームに支出を振り向ける計画はないと語る。最悪のシナリオとしてTikTokが禁止された場合、イミーは新たに雇用したコンテンツクリエイターをYouTubeショートやインスタグラムのリール(Reels)に特化させる可能性が高くなると語っている。
「当社は依然として、短尺動画に関するスキルと組織的な内部知識を磨きたいと思っている。それが引き続きトレンドであるためだ」と、同氏は述べている。
同様にオースウェイン氏は、チーキーボンサイのTikTok戦略を見直す予定はないと語る。同氏は、自社がすでにターゲットやアーバンアウトフィッターズ(Urban Outfitters)とのパートナーシップを確保できたため、TikTokが禁止されてもそれほど心配していないと述べている。しかし、これらの変化が、まだスタートしたばかりのブランドにどのような影響を与えるかについては気にしていると同氏は述べた。
「TikTokは、ブランドが大規模なコミュニティを築き上げるために極めて重要だったと思う」と、同氏は述べる。「もしTikTokがその役割を果たせなくなれば、ブランドが大規模小売に浸透するための方法が変化していくかもしれない」と、同氏は付け加えている。
これに対してブラウン氏は、この一件は、ブランドがひとつのプラットフォームに依存しすぎるべきではないという明白な事実をさらに補強するにすぎないと考えている。
「これは、ブランドがまだFacebookを使っていたときに、iOS 14.5が登場したのと同じような状況だ。Amazon、Google、Facebook、TikTokと、どのようなプラットフォームであっても、ブランドは単にそれを借りているにすぎない」と、同氏は述べている。
[原文:DTC Briefing: TikTok ban threatens to eliminate a channel of discovery for young startups]
Anna Hensel(翻訳:ジェスコーポレーション、編集:戸田美子)