ファッション界の新興起業家や投資家は「 メガインフルエンサー 」:数多くのコラボで学んだこととは?

DIGIDAY

ファッションインスタグラマーの大御所たちは、帝国を築くと同時に、業界を超えてその影響力を高めつつある

ダニエル・バーンスタイン氏(インスタグラムのフォロワー数270万人)やロッキー・バーンズ氏(インスタグラムのフォロワー数250万人)といったメガインフルエンサーたちは長年ファッション業界の仕組みを学んできたが、ブランドにあまり依存しないというキャリアから卒業し始めている。こうしたインフルエンサーたちは次の段階に進むべく自分の能力とコミュニティを活用し、実際のビジネスパートナーとの取引を推進し、業界の方向性やみずからの情熱に基づいて焦点を進化させている。バーンスタイン氏とバーンズ氏の新たな成果としては、初期の成功に基づいて拡大している投資ポートフォリオや個人的に支援するブランドがある。

投資を行い起業するインフルエンサーたち

「計画は成長すること、大きくね」とバーンスタイン氏はいう。「私はシリアルアントレプレナー(連続起業家)なので、常に新しいビジネスやカテゴリーを自分のブランドに導入したい。それに私はエンジェル投資をしたり、多くの企業の顧問委員会に参加したりしている。既存のフォロワーのコミュニティを作って活用し、さらにそれをどうやって収益化するかを考えること、これがクリエイター経済の未来だ」。

2019年、バーンスタイン氏は、ニューヨークを拠点とするアパレル企業オニア(Onia)とライセンス契約を結び、展開中の彼女自身のブランド、ウィーウォアワット(We Wore What)のファッションコレクションを掲載したeコマースサイトとなるショップウィーウォアホワット(Shop We Wore What)をローンチした。そのコレクションは、模倣のデザインが含まれているとされて、最近、多くの論争の的になっている。バーンスタイン氏によると、インスピレーションの源はヴィンテージのアイテムやエディトリアル、旅行だとのこと。またバーンスタイン氏は、ヘアサプリメント企業のウェルベル(Wellbel)やCBDブランドのハイライン・ウェルネス(Highline Wellness)に投資してアドバイザーも務めている。5月にはパトレオン(Patreon)での活動を始め、コミュニティの有料メンバーに限定動画コンテンツを提供している。

さらにバーンスタイン氏は、自身の会社の慈善事業部門となるウィーゲイブワット(We Gave What)を率いている。2019年にはインフルエンサー向けのプロジェクト管理ツールを提供するテック企業モーアシスト(Moe Assist)を立ち上げたが、そのソーシャルアカウントは2カ月以上運用されていない。コメントを求めたところ、モーアシストは新たな資金調達の段階にあり、「まもなくニュースを伝えることができるはずだ」と広報担当者は述べている。

コンテンツ制作の経験をビジネスに活かす

一方、バーンズ氏は、12月にリユナイテッド・クロージング(Reunited Clothing)と提携して自身のアパレル会社となるザ・ブライトサイド(The Bright Side)を創業した。最近、彼女は設立して6カ月のSMSショッピングプラットフォーム、カッチ(Qatch)の初めての投資家兼アドバイザーとなり、10月22日月曜日のインスタグラムの投稿でこの提携を発表している。

「大人になった気分」と話す彼女は、さらに多くの企業への投資に興味があると述べた。「自分のビジネスを多様化することは、私にとって本当に大きな焦点だった。日常的にさまざまなブランドや企業に接している。ほかの人たちの役に立てるようなやり方でマーケットに関する知識を活用することは、刺激的だし充実している。特に気に入っているのは、最初からひとつの企業に関わることができることだ」。

ふたりとも、ファッションのコンテンツ制作者としての役割を足がかりにすることは自然な流れだという。そしてそれは、多くの業界の変化にもハマっている。ハーバード・ビジネス・スクールやウォートンスクールの卒業生たちが、マーケティングを多用したプラグアンドプレイのビジネスモデルでブランドをローンチし、ファッションのD2Cは大いに活気づいたが、その時代も落ち目になりつつある。より多くの消費者が質の高い差別化された製品を優先するようになり、インサイダーの間では業界経験やスタイルの専門知識がさらに大きな美徳とされている。同時に、消費者は権威のあるエディターやより閉鎖的なセレブリティからシフトして、関連のあるプラットフォームネイティブなセレブリティから買い物のヒントを得るようになりつつある。

コラボレーションからビジネスを学ぶ

コラボレーターから創業者への移行は、いまに始まったことではない。長年活躍してきたインフルエンサーでこうした方向転換を行っているのは、サムシングネイビー(Something Navy)のアリエル・チャーナス氏、ソングオブスタイル(Song of Style)のエイミー・ソング氏、アーユーアムアイ(Are You Am I)のルミ・ニーリー氏など、枚挙にいとまがない。また、これらのブランドを立ち上げた人々は、デザインやビジネスに関する正式なトレーニングを受けていないことがほとんどだ。バーンスタイン氏の場合は、「FITに2年間通ったが、デザインやプロダクションは学んでいない」と語っている。しかし、これらのインフルエンサーたちは長年にわたり、企業と手に手を取ってビジョンを実現してきた。そしてその過程で、マーケティングからマーチャンダイジングやプロダクトにいたるまで、自分たちの広大なコミュニティで何が一番共感されるのかを知るようになった。

「もっとも成功したコラボレーションが、私のビジネスの最大のシェアにつながっている」とバーンスタイン氏は語る。

バーンスタイン氏は2019年5月に、オニアとのスイムウェアのコラボレーションを行った。コラボの発売日には200万ドル(約2億2800万円)の売上を記録し、含まれているスタイルは同ブランドでその夏ベストセラーのスイムウェアとなった。また2019年にはバーンスタイン氏はジョーズジーンズ(Joe’s Jeans)と複数のデニムコレクションでコラボレーションしている。2019年3月の第1弾の発売日には、ジョーズジーンズで過去最高の売上を記録したと、10月のGlossyポッドキャストで同ブランドのマーケティング・アンド・イノベーション・シニアバイスプレジデントのジェニファー・ホーキンス氏は語っている。

積極的に関わることでコラボを成功させる

すべてのコラボレーションがそうだが、どちらのケースもバーンスタイン氏にとって学ぶ機会となり、その機会を最大限に活用したという。「ただ投稿を(アップロード)して、それで終わりということは決してしなかった」と彼女は話す。「販売に関しては成果がどうだったのか常に知っておきたいので、『分析結果を教えてもらえるか』『あなたの方ではどうだったか』『何がうまくいって、何がうまくいかなかったか』と質問していた」。

バーンスタイン氏は「自分が何を売ることができ、市場に何が足りないのかという点で、大量のデータを提供してくれた」と付け加えている。

同様に、彼女は自分の投稿に関するインスタグラムのインサイトやGoogleアナリティクスの数値を常に追いかけ、パートナーブランドと共有していたと話す。そうすることで、すべての関係者がコラボレーションの成功を360度見渡すことができる。

「最大の投資利益を得るのにブランドにとって何が有効かを学んだ」と彼女は述べた。

たとえば、デザインプロセスではインスタグラムを通じてオーディエンスからフィードバックをもらうことで、自分の好みに頼るのではなく、オーディエンスの好みに依拠することをバーンスタイン氏は学んだ。そこには生地や色の選択、モデルとのフィッティングセッションなどが含まれる。信頼性を高める方策として、自分のSNSでは好みのスタイルや自分が着ているものだけを紹介している。

バーンスタイン氏によると、インフルエンサーとのパートナーシップやマーケティング、メッセージングなど、ブランドとのコラボレーションでアドバイザーとしての役割を果たすことができ、常に大いに成功しているという。そして、それらはしばしば、さらに長期的な投資やアドバイザー・パートナーシップへと発展している。

オニアなら品質とフィット感を重視し、手頃な小売価格を維持できているという点を根拠に、バーンスタイン氏はウィーウォアホワットのコレクションで同社と提携することを選んだ。現在、ウィーウォアホワットのサイトでは、シュシュが20ドル(約2280円)、ヴィーガンレザーのジャンプスーツが228ドル(約2万6000円)となっている。

アイデアを市場性のあるものにするために

バーンズ氏も、適切なパートナーを見つけ、独立する準備ができていた。リユナイテッド・クロージングとのパートナーシップは、彼女のエクスプレス(Express)の製品でのコラボレーションを実現したのち、2019年初頭に実現している。

2019年第1四半期の収支報告で暫定CEOのマシュー・C・マウラリング氏は「店頭とオンラインの両方でコレクションが好調なスタートを切り、新たなオーディエンスにブランドを紹介するのに役立っていると信じている」と述べた。「自分のブランドを持つのは怖い」と、バーンズ氏はいう。「でも自分でコントロールできて、ほかの会社を宣伝するために日々の投稿をすることにさほど依存しないというのがいい」。

だが彼女は次のようにも付け加えた。「さまざまなプロジェクトでさまざまなブランドと仕事をすることの大きなメリットのひとつは、コンスタントに新しい人々を紹介してもらえること、一緒に仕事をしたいと思える人を見つけられることだ」。

バーンズ氏の社内チームは「ビジネスのブレーン」である彼女の夫と、アシスタント1名で構成されているという。

バーンスタイン氏と同様に、バーンズ氏も生産過程における外部からのサポートの必要性を強調している。「私自身は奇抜でクレイジーなものが大好きだが、バイヤーや服を買う普通の女の子にとって何が現実的かということも理解している」と、彼女は話す。「ビジネスを始めて習得していったことは、アイデアをより多くの人々に生かすという経験だった。自分のアイデアを市場性のあるものにしてくれる、優秀で多様性に富んだチームを持つことが重要だ」。

自分のブランドでインフルエンサーのパワーを実証

ウィーウォアワットは新しいカテゴリーに進出したことで、バーンスタイン氏いわく「昨年は200倍の成長を遂げた」とのこと。同ブランドのプレタポルテ(ready-to-wear)、スイムウェア、リゾートウェア、アクティブウェアは、現在「世界中の数々の小売店」で販売されており、その多くがリボルブ(Revolve)、ブルーミングデールズ(Bloomingdale’s)、インターミックス(Intermix)などに限定スタイルを提供している。

「製品を販売するということに関しては、自分のブランドをローンチしたことがインフルエンサーのパワーを実際に証明することとなった」と彼女は語る。

ジョーズやオニアとのコラボレーションのように、バーンスタイン氏はウィーウォアワットの商品ドロップへの買い急ぎを経験している。「最初の10分が、コレクション全体の売上でもっとも大きな割合を占めている」。

バズを生むために、ショップ・ウィーウォアワットのインスタグラムアカウント(フォロワー数21万3000人)では、発売間近のスタイルのラインシートをストーリーズで紹介することで、顧客がじっくり購入計画を立てられるようにしている。バーンスタイン氏いわく、そうすることが返品率の低下につながっている。また同社のマーケティングミックスには、テキストメッセージや電子メール、VIP割引、ユーザー生成コンテンツなども含まれている。

バーンスタイン氏には、チーフ・オペレーティング・オフィサーとブランド・コーディネーターを含む4名のスタッフがいる。自分が持っていないスキルや専門知識のあるパートナーと組むことを優先していると彼女は言う。理想を言えばテックパックやフィッティング、生産物流などを学校で学びたかったところだが、彼女は現場で学んでいる。

今後、バーンスタイン氏は、現在XSからXXLサイズで展開しているウィーウォアワットのスタイルのサイズ展開を拡大し、コラボレーションによるコレクションをローンチしてD2Cサイトでの独占販売を行う予定だ。さらにポップアップを皮切りに最終的には「実験的な」実店舗のオープンも目指している。

また投資顧問をしているポートフォリオについては「自分のクローゼットを売ったり、レンタルしたりすることもできる」というコンセプトを中心とする企業と話を進めている。バーンズ氏のブライトサイドについては、「今年は多くの新規小売店」を見つける予定とのこと。

ファッションを超えて

ショップ・ウィーウォアワットで次に控えているのは、ホリデーシーズン前に発売される新しい商品カテゴリーだ。彼女のインスタグラムのアカウント@homeworewhat(フォロワー数7500人)やソーホーにある彼女の新しいロフトに関する最近の報道、彼女のホームファニシングとデコレーションに対する情熱などからして、間違いなくホーム関連のカテゴリーとなりそうだ。

同様にバーンズ氏も、最近2年間かけて行った自宅のリフォームに続き、将来的にブライトサイドのホームコレクションを作ってソーシャルメディアでデビューさせることを示唆している。

明らかにライフスタイルブランドを目指している。「レイチェル・ゾー氏とマーサ・スチュワート氏を組み合わせたような存在になりたい。自分の手であらゆることをやって、人を楽しませることができて、ファッショナブルでもある、本当に美しいライフスタイルを作りたい。それが夢だ」とバーンズ氏は話す。

また彼女は次のようにも述べた。「私の心の拠り所は常にファッションだが、ひとりの人間として成長していて、いま、私の人生には家族に家庭など、たくさんのことがあるし、年齢を重ねていくにつれて美容(やスキンケア)も理にかなっている。それらをみんなと共有することはとても自然なことだし、ファッションだけをやっているのも変な話だ」。

今後の投資については、ファッションテクノロジーに特化したバーンズ氏の世界にカッチはぴったり合っているが、チャンスがあると思えばどんな会社にも投資したいと語る。

さらにTikTokにはまだ取り組んでいないバーンズ氏だが、ソーシャルメディアから引退する予定はないという。

「人々のコンテンツに対するニーズは高まる一方なので、いままで以上にコンテンツの投稿や作成をしている」と、バーンズ氏はいう。「だがブランドに対してもっと厳しくなることも学んだ。私と一緒に仕事をしたいと思い、できるだけ信頼性の高い関係を築こうとしてくれる企業なら、ともに前に進むことができる」。リユナイテッドはそれを証明している。

[原文:Fashion Briefing: Fashion’s emerging founder-investors are mega-influencers]

JILL MANOFF(翻訳:Maya Kishida、編集:山岸祐加子)

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