ワシントン・ポスト（The Washington Post）は3月上旬、瞑想アプリのヘッドスペース（Headspace）とのサブスクリプションバンドルの提供を開始した。同紙は最近、ウェルネス関連コンテンツを拡大している。同社の最高サブスクリプション責任者を務めるマイケル・リベロ氏は、「これらを定期読者以外のオーディエンスに売り込み、購読者層を政治・ニュース記事以外のバーティカルに関心をもつ人々に拡大することが目的だ」と語る。
「ワシントン・ポストは別の入口を検討している。長いあいだ、我々は端的に言って、ひとつの入口しか用意してこなかった。ひとつの価格に、政治や論説というひとつの報道分野だった」とリベロ氏はいい、「人々が購読を始める入口をもっと増やしたい。硬派でないニュースはそのひとつとして最適だと考えている」と続ける。
初年度の割引価格とコンテンツの行き来が強み
バンドルプランは新規購読者に適用され、ワシントン・ポストの1年間のデジタルサブスクリプションとヘッドスペースの1年間のサブスクリプションのセットを、70ドル（約9300円）という定価より60％以上も安い価格で利用できる。別のオプションとして、新規購読者は最初の1年間、ワシントン・ポストを4週間につき4ドル（約530円）の価格で購読し、さらにヘッドスペースの30日間の無料体験も得ることができる。それぞれのサブスクリプションは別々に更新され、2年目以降はワシントン・ポストは年120ドル（約16000円）、ヘッドスペースは年69.99ドル（約9300円）の通常価格が適用される。
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2社に購読者データを共有する予定はない。ワシントン・ポストを通じて購読した場合でも、ヘッドスペースのユーザーは新たにアカウントを開設する必要がある。ワシントン・ポストは、ペイウォール上のポップアップ広告、ペイドメディア、Eメールを通じて、同紙とヘッドスペースの両方を宣伝する予定であると、リベロ氏は言う。
バンドルプランでの購読者は、ワシントン・ポスト記者のアマンダ・モリス氏がホストを務めるヘッドスペースの日刊動画コンテンツ「ザ・ウェイクアップ（The Wake Up）にアクセスできる。また、同紙コラムニストのグレッチェン・レイノルズ氏も、ヘッドスペースのマインドフルネスに関する日刊ポッドキャスト「ラジオ・ヘッドスペース（Radio Headspace）」に出演し、5エピソードにわたってゲストホストを務める予定だ。購読者はまた、ワシントン・ポストの「ウェル＋ビーイング（Well+Being）」セクションに掲載される瞑想エクササイズを試すこともできる。
硬派なニュースへの入り口を作る
この戦術は明らかにほかのパブリッシャーの成功にならったものだ。たとえばニューヨーク・タイムズ（The New York Times）は、非ニュースコンテンツのサブスクリプション販売によって購読者層を拡大したと、マザーエコノミクス（Mother Economics）でプロダクト担当シニアバイスプレジデントを務めるアルビド・チブシェル氏は指摘する。マザーエコノミクスはパブリッシャーを顧客とし、サブスクリプション管理と顧客データ分析を手掛ける企業だ。報道によれば、ワシントン・ポストのサブスクリプション事業は伸び悩んでおり、購読者数は2021年から変わらず300万人のままだという。
「この（ウェルネス）市場の見通しについて（ワシントン・ポストが）何らかの予測を立てているのは確実だ。そう考えると、同紙のサブスクリプションが急増するのは間違いないだろう」と、チブシェル氏は言う。バンドル購読者の解約率はおそらく「通常の」購読者よりも「わずかに高い」と考えられるが、それでもこのプランは「収益増をもたらすはずだ」と、同氏は述べた。
ワシントン・ポストの戦略は、ヘッドスペースとのバンドルプランを通じて購読を促し、新たな読者をそのほかの「硬派でない」ニュースセクションのコンテンツへと誘導し、ゆくゆくは同紙の通常のニュース報道にも引き込むというものだと、リベロ氏は言う。同氏によれば、ワシントン・ポストの「優良顧客」、すなわちリテンション率とエンゲージメント率が高い読者には、複数のバーティカルのコンテンツに目を通しているという特徴がある。リベロ氏は、購読者が消費する硬派でないニュースコンテンツの数と多様性は増加傾向にあると述べたものの、具体的なデータは提示しなかった。
バンドルプランの効果は依然未知数
バンドル購読者の定着率、すなわちプロモーション期間の終了後に彼らがサブスクリプションを更新するかどうかは未知数だ。ペイウォール技術に特化した企業であるピアノ（Piano）で戦略およびソーシャル担当エグゼクティブバイスプレジデントを務めるマイケル・シルバーマン氏によれば、これまでに複数のクライアントがバンドルプランを試したものの、確実な知見はまだ得られていないという。
リベロ氏は「ワシントン・ポストの戦略は、バンドルプランによって門戸を広げ、その後の1年をかけて、購読者に通常価格での更新に価値があることを説明し納得してもらうというものだ」と語る。
「我々は自社データから新規顧客がとる行動について多くを学んできた。プロモーション終了後も顧客で居続けてもらえる確率を高めるためにすべきことはわかっている」と同氏は話したうえで、新規購読者に同紙に慣れ親しんでもらう「オンボーディングのプロセス」を完了させることや、サイトを頻繁に再訪させ、多様なセクションのコンテンツに複数のデバイスからアクセスさせることの重要性に言及した。「新規顧客にこうした習慣を身につけてもらうまでに、我々には1年の時間がある」。
［原文：The Washington Post offers bundle subscription with Headspace app］
Sara Guaglione（翻訳：的場知之／ガリレオ、編集：島田涼平）