ついにAIが法廷へ、と思ったら訴えられる方でした。
今年にはいってさらなる加速を見せるAI業界ですが、AI弁護士は窮地に立たされています。AI企業DoNotPayの「世界初のロボット弁護士」が、ユーザーをミスリードしているとして集団訴訟を起こされてしまいました。
3月3日、AIによる交渉をサービスとして提供する、スタートアップ企業DoNotPayに対する訴状がサンフランシスコ裁判所に提出されました。
原告側の言い分は、高品質の法的サポートや書類が得られるような宣伝をしているが、実際にはそれがないこと。
つまり、消費者を欺いているというのです。
残念ながら、利用者にとってDoNotPayはロボットでなければ弁護士でもなく、弁護士事務所でもありません。DoNotPayは法学位を有さず、法的資格も持たず、弁護士による監督もありません。
DoNotPayは、標準以下レベルの法的ドキュメントをファイリングするただのウェブサイトでしかなく、利用者が入力した情報に対して、法律に基づいたアドリブを発するのがせいぜいでしょう。
と、サービスの質にとどまらず、資格なしで法的仕事を行なっていると、根底からDoNotPayのあり方を厳しく批判しています。
訴状の詳しい内容
訴状にはDoNotPayのカスタマーレビューも引用されており、中には2つの交通違反切符に関して依頼したものの、DoNotPayが裁判所からの召喚に応じなかったため罰金が上乗せされたうえ、サービスキャンセル後もサブスク料金が引き落とされているとの声もあがっています。
(アカウントキャンセルやレスポンスの悪さについては、AI弁護士というよりスタートアップ企業でよくあることな気もしますが、だからいいということでもありません。)
集団訴訟の発起人であるJonathan Faridianさんは、今年1月までDoNotPayユーザーだったものの、あまりの質の悪さに利用を停止しました。
DoNotPayが然るべき書類を提出しなかったこと、DoNotPayから受け取った書類(有料)があまりに不出来&不正確で使用すらできなかったことを訴えています。
最近のDoNotPayの動き
DoNotPayといえば、AI交渉でネット料金の割引に成功し注目されました。今年に入って、交通違反の切符案件でDoNotPayのAI弁護士が法廷に立つというのも話題になりましたし、AI弁護士と議論してくれる弁護士には100万ドル出す!といったことも話題になりましたね。
が、その後、カリフォルニア州弁護士会から6ヶ月の禁固刑の可能性を指摘され、結局AI弁護士が法廷にたつことはなく…。
以来、法律関係者から批判を受けていたAI弁護士ですが、ついに出廷し、リアル弁護士の代わりになるというミッションから、消費者の権利をサポートする方向にDoNotPayはシフトしていました。ただ、公式ウェブサイトの「世界最初のロボット弁護士」の謳い文句は変わらずでした。
創業者は猛反論
集団訴訟を受け、DoNotPay創業者兼CEOのJoshua Browder氏はTwitterで猛反論。集団訴訟を担当するのは、GoogleやApple、Amazonなどの大手テック企業を相手取ったアグレッシブな裁判で知られるJay Edelson弁護士であり、ツイートは主にこの弁護士に対する批判となっています。
現在はEdelson弁護士のような人がばかりが儲かる仕組みになっていて、一般市民には還元されない問題のある構造になっています。
2015年にEdelson弁護士がFacebookの裁判でボロ儲けしていて、この裁判こそがDoNotPay創業のきっかけでした。
原告であるFaridianさんが、LinkedInプロフィールによれば法律を学んでいたことから、法的な教育を受けた人がオンラインサービスを利用して請求書状を作成することはヘンでは?という声も一部で浮上。
ただ、これについては法律に関する授業を受けたことがあるだけで、法的資格は有していないことが、Edelson弁護士から明らかにされています。
今回の集団訴訟について、DoNotPay側が弁護士団を雇うのか、世界初のロボット弁護士で戦いに挑むのか…。Browder氏は「このケースでうちのロボット弁護士使うかも」とツイートしていましたが、さて。