米 TVCM 枠の先行販売、焦点は契約条件の「柔軟化」:バイヤーたちの武器は「プログラマティック」

DIGIDAY

今年のアップフロント(米国におけるTVCM枠の先行販売)交渉は、同じフレーズを繰り返す「壊れたレコード」か、もしくは広告バイヤーたちが歌う「柔軟性」の大合唱になりそうだ。ただし、2023年の旋律にはプログラマティックという新たなトーンが加わるかもしれない。

今年のアップフロント(米国におけるTVCM枠の先行販売)交渉は、同じフレーズを繰り返す「壊れたレコード」か、もしくは広告バイヤーたちが歌う「柔軟性」の大合唱になりそうだ。ただし、2023年の旋律にはプログラマティックという新たなトーンが加わるかもしれない。

ここ数年、広告売買の柔軟性に関する議論は、主に従来型テレビのキャンセル条件に焦点が当てられてきた。その議論の中心が、今年は動画配信サービスにシフトするもようだ。

キーポイント:

  • 広告主とその取引エージェンシーは、ストリーミング在庫の契約条件について、売り手側に柔軟化を求めることを検討している。
    • 売り手側のテレビネットワークは、ここ数年、アップフロントで契約したストリーミング在庫の解約に際して、従来型テレビに準ずる厳しいキャンセル条件を適用してきた。
      • 条件の柔軟化を迫る買い手側にとって、プログラマティック取引は有利な交渉材料となりうる。

      交渉は買い手有利に

      複数のエージェンシー幹部の話によると、2023年のアップフロントの交渉事項として、一部の広告主とその取引エージェンシーがキャンセル条件の緩和について協議しているという。ここ数年、テレビ網運営の動画配信サービスの広告解約には、従来型テレビに準ずる厳しいキャンセル条件が適用されてきたが、先行契約に含まれるストリーミング在庫のキャンセルには、もっと緩やかな条件を採用してほしいと要求する計画のようだ。具体的には、米インタラクティブ広告協会(IAB)が定める柔軟性の基準に従って、配信開始予定日の14日前までに通知すれば、予約型のデジタル広告を100%キャンセルできるという条件で合意したいと考えている。

      「今年の交渉では、このレベルの柔軟性を提示できるものが、より大きな成功を手にするだろう」と、あるエージェンシー幹部は述べている。

      なるほど。しかし、昨年のアップフロント交渉の前にも、バイヤーたちは同じような節回しの歌を歌っていたではないか。今年は何が違うのか。エージェンシーの幹部たちは、今年は買い手側に有利な交渉材料があるため、売り手側がストリーミング在庫に関する条件緩和の要求に応じないなら、アップフロント交渉の席を蹴るだけだと考えているようだ。

      「CTVが大きな役割を果たす」

      別のエージェンシー幹部はこう話す。「クライアントには、マーケティングファネル下層部のメディアを使うこと、そのせいでブランド認知の向上を担うファネル上層部との境界線が薄まることに、ほとんど抵抗がない。この側面で、コネクテッドTVは大きな役割を果たすことになるだろう。そして、CTVの広告在庫をすべてアップフロント市場で調達する必要もない。何度も繰り返し証明されてきたことだが、オープン市場で購入できないCTV在庫など皆無に等しい」。

      実際、一部の広告バイヤーは、アップフロント市場以外でもストリーミング在庫は十分に購入できると感じている。加えて、ストリーミング在庫を売買する手段として、プログラマティックの人気が高まりつつある。たとえば、ロク(Roku)のアンソニー・ウッドCEOは、2月15日にリモートでおこなわれた四半期決算説明会で、DSPで扱う広告在庫を増やす意向だと表明した。

      さらに、2月初旬にはアドテク企業のマグナイト(Magnite)がストリーミング在庫を専門に扱うSSPを公開した。顧客となるAMCネットワークス(AMC Networks)、ディズニー(Disney)、フォックス(Fox)、ワーナーブラザースディスカバリー(Warner Bros. Discovery)らが同SSPによるプログラマティック取引で広告在庫を販売するという。

      広告主が自由度を広げるチャンス

      つまり、バイヤーたちは「プログラマティック」という武器を握りしめて、今年のアップフロント交渉に臨むのだ。

      アップフロントでの購入を含め、ストリーミング広告の買いつけを検討する際に、プログラマティックはますますその存在感を増している。話題の中心はもっぱら取引形態をめぐる売り手と買い手の攻防だ。アンハイザーブッシュ(Anheuser-Busch)を含む買い手側がプライベートマーケットプレイス(PMP)を好む一方、買い手側はプログラマティックギャランティード(予約型のプログラマティック取引)を求める傾向にある。広告バイヤーたちは、広告主の予算の使い方について、より大きな柔軟性(つまりは自由度)を確保するために、プログラマティック取引で使う予算を増やすように強く要求する意向のようだ。

      さらに別のエージェンシー幹部はこう話す。「直接取引よりもプログラマティック取引の広告予算が増えれば、それは広告主が自分たちの自由度を広げる最大のチャンスとなるだろう。また、プログラマティック取引への予算シフトを目の当たりにすれば、売り手側が柔軟化の交渉に応じる可能性も高まるだろう」。

      [原文:Future of TV Briefing: Flexibility set to be an upfront focal point yet again

      Tim Peterson(翻訳:英じゅんこ、編集:分島翔平)


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