映画
1997年に公開された映画「ガタカ」は、「遺伝子技術が発達した近未来で、『不適正者』と診断された主人公が元水泳選手に成り代わって宇宙を目指す」というあらすじのSF作品です。このガタカが投げかけた「遺伝子と社会に関する問題」について、「映画公開から25年以上が経過した現在にも通じるものがある」とする論文がNatureに掲載されました。
GATTACA is still pertinent 25 years later | Nature Genetics
https://doi.org/10.1038/s41588-022-01242-5
「ガタカ」では「出生と同時に遺伝子検査が実施され、健康上の問題や推定寿命が瞬時に明らかになる」「受精卵の遺伝子を編集して能力の高い子どもを産むことが一般的」「企業の採用試験に遺伝子検査が組み込まれ、優秀な遺伝子を持つと判断された人物を採用する」「遺伝子検査によって『不適正者』と判断された者が差別を受ける」といった「近未来の世界」が描かれます。ストーリーのあらすじは「生まれた瞬間に『不適正者』と判断された主人公は、宇宙に旅立つ夢をかなえるべく『事故で下半身不随になったトップアスリート』と契約して『適正者』になりすます。主人公は宇宙開発企業『ガタカ』に採用され、宇宙ミッションへの参加が決定するが社内で殺人事件が発生して……」というもの。「ガタカ」の内容は、以下の予告編でも触れられています。
映画『ガタカ』1997年公開 科学がもたらす残酷な未来を描く、名作SFサスペンス。 – YouTube
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記事作成時点では、遺伝子に関する研究が映画公開当時よりも進んでおり、遺伝子と寿命の長さが関連している可能性などが指摘されるようになりました。このような遺伝子研究の進歩に伴って、「身体的特徴」「社会的地位」「健康寿命」などの要素が遺伝子によって決定されるというイメージを抱く人も増えています。
しかし、「身体的特徴」「社会的地位」「健康寿命」といった要素は実際には遺伝子だけでなく人々が過ごす環境によっても大きく左右されます。「ガタカ」でも、「不適正者」と診断された主人公が高度な知識や高い運動機能を備えるに至り、反対に優秀な遺伝子を持つ「適正者」とされる人物が事故によって半身不随になる様が描かれます。つまり、25年前に公開された映画で、既に「遺伝子によってすべてが決定されるという考えは誤りである」と警鐘が鳴らされていたわけです。
「ガタカ」の劇中では「優秀な遺伝子を持つ水泳選手として育ったものの、金メダルを獲得するには至らなかった人物」が自殺未遂に及んだことが語られます。このシーンは「出生前や出生後の遺伝子編集が実現した現代」において、「遺伝子によって期待される成果の押し付け」が招く混乱を想起させます。
また、劇中では「警察が人々のまつげや血液を採取して遺伝情報と照合する」というシーンが描かれます。このシーンは「警察が全国民の遺伝情報を把握している」といるということを示しています。アメリカでは2013年の裁判で警察による遺伝情報の収集が合法と判断されたのですが、論文では「警察が(映画と同様の)遺伝情報データベースを作成することに対して、社会的な不安が生じている」と指摘されています。
上記の通り、ガタカは2023年の記事作成時点でも通じるテーマが描かれています。ガタカのBlu-rayやDVDはAmazon.co.jpなどで入手可能なので、気になったら鑑賞してみてください。
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