アクティブウェア の市場は主力交代へ。トレンドをゆくブランドと低調なブランドの差とは?【ファッション・ブリーフィング】

DIGIDAY

ウォッシュドメディア(Washed Media)が配信している「サンデー・スケアリーズ・ポッドキャスト(Sunday Scaries Podcast)」の1月15日のエピソードでは、共同ホストのウィル・デフリーズ氏とバレット・ダドリー氏が、どのアクティブウェアが現在「トレンド」で、どれが「流行遅れ」なのか議論した。

ダドリー氏は、生まれ故郷オースティンの街中を出歩く人々やソーシャルメディアを指摘して、「女性向けアスレチックウェアブランドでいま圧倒的なのは、アロー(Alo)だ。自分が目にするなかではナンバーワンのブランド」と述べた。「ルルレモン(Lululemon)もまだかなり手堅いが、アウトドアヴォイシズ(Outdoor Voices)は本当に崖っぷちに立っている」。

パンデミック時のブームから、安定した市場に

パンデミック中にメガブームが起きた後、市場が安定するにつれ、消費者の新たな好みに基づくと思われる新興ブランドが確かにいくつも台頭している。これらのブランドの主力製品は、シルエット全般はトラディショナルだが、性能よりも快適性を重視して作られている。また、ダドリー氏が指摘したように、ベーシックなブラとレギンスのセットよりも「もっとグラマラス」で「洗練」されたルックを提供している。これはロックダウン中のベーシックなユニフォームの否定ともいえる。

「アパレル」と「アクティブウェア」のカテゴリーはますます曖昧になってきているのだ。

NPDグループ(NPD Group)のアパレル業界アナリスト、クリステン・クラッシ・ズンモ氏は、アクティブウェアのスタイルをデニムを含むワードローブの定番アイテムと比較して「私たちはいまや『アクティブウェア』を毎日着るようになった」と語る。2019年から2022年にかけて、200のブランドがアクティブウェアを発売したと彼女は言う。「この分野を狙った商品があるかどうかが(アパレル)ブランドにとって重要だ」。

雑音をはねのけてメッセージを直接伝えることに成功したブランドは、インフルエンサーに依存して製品の多用途な性能とトレンドが牽引する美学をアピールしてきた。また、独特の雰囲気を反映した店舗を展開してソーシャルコンテンツのお膳立てをするのも、共通の戦略だ。

データ分析会社のローンチメトリックス(Launchmetrics)によると、2022年にルルレモンはアクティブウェアの話題を独占した。だが、そのメディアインパクトバリュー(MIV)である2億3300万ドル(約303.3億円)の73%は、印刷物など従来のメディアでの言及によるもので、インフルエンサーによって生み出されたのは、わずか19%の4400万ドル(約57.3億円)だった。一方、アローヨガ(Alo Yoga)では、インフルエンサーが5100万ドル(約66.4億円)のMIVを牽引し、同社の製品がジム以外の場所にも適していることを喧伝するのに貢献している。230万ドル(約3億円)のMIVを獲得したジョージナ・ロドリゲス氏のインスタグラム(フォロワー数4500万人)の投稿では、ビキニボトムとプラットフォームヒールと組み合わせてアローのプルオーバーを紹介している。

ハイファッションを取り入れたリーバイス傘下のビヨンドヨガ

創業17年のビヨンドヨガ(Beyond Yoga)は、リーバイス(Levi’s)が自社製品の多様化のために2021年に4億ドル(約520.8億円)で買収した。創業者でCEOのミシェル・ワーラー氏は、常にファッショントレンドに目を向けてきたと語る。「当社はハイファッションではないが、ハイファッションからインスピレーションを得て、それを日常のワードローブに取り入れている」と彼女は述べた。「当社では非常に快適な方法でトレンドを人々に身近なものにしている」。

2021年以降、このブランドはさまざまなワンピース、スカート、ジャンプスーツ、アウターウェア、スリープウェア、そしてレギンス以外のボトムスを意味する「オルタナティブパンツ」を発表してきたとワーラー氏は言う。

2022年、ビヨンドヨガは1億ドル(約130億円)の収益を上げ、リーバイスの支援を受けて展開する予定の「多くの店舗」の1号店をオープンした。サンタモニカを拠点とするその店舗は、ビヨンドヨガのシグネチャーである布をインテリアに使って、居心地のよい雰囲気を演出している。小売部門の新しい責任者の指揮のもと、今年末までにカリフォルニア州やその他の地域にさらに多くの店舗をオープンする予定だ。昨年、ビヨンドヨガの社員は34%増加した。そして今日まで黒字を維持している。

ハイエンドな「デザイナー」カテゴリーが急成長

一方、マルチブランド小売企業のバンディエール(Bandier)は、2014年のローンチ以降、「フィットネスのためのファッションの目的地になることに専念してきた」と、12月時点での同社のプレジデント、ダニエル・ラフルアー氏は述べている。

「ルルやそのほかのブランドにはすばらしいベーシックがあり、アローは色がすべてだ。当社にとって(の差別化要因)は、ファッションの要素——特にニューヨークのファッションとダウンタウン・ガールにフォーカスしている点だ」とラフルアー氏は語り、同社のコアとなる顧客は25歳から35歳だと指摘した。「つまり、当社の買い物客はクールガールであって、意地悪な女の子ではない」。

Bandier.comの「デザイナーズ」のメニューで注目されているブランドに、ビヨンドヨガがある。そのほかのブランドで最近反響があるのは、バーリー(Varley)、イヤーオブアワーズ(Year of Ours)、ヒーローズ(Héros)などで、トレンディで「アクティブな空間におけるハイブリッドなアイテム」を提供しているためだと、ラフルアー氏は言う。それらのアイテムには、キャットスーツ、プレイスーツ、ブラとレギンスのセットの上に着用する「すぐに着られる第3のレイヤー」のほか、フレアスタイルやカーゴなど「レギンスを超えた」パンツなどがある。

「主にブラとレギンスのセットに依存していたブランドは、昨年(売上が)減少した。また、過飽和状態だったため、一部は価格も下がった」と彼女は述べている。

クラッシ・ズンモ氏によれば、買い物客が喜んで金を使うことが証明されているのは、ハイエンドな「デザイナー」カテゴリーのブランドで、2022年にはアクティブウェアのなかでもっとも速く成長した。また、そうしたブランドはトレンドを重視し、現在は非対称のスポーツブラ、プッシュアップスタイル、フレアパンツなどのスタイルを提供している。

「多用途性は、間違いなく(バンディエールにとって)今後のテーマだ」とラフルアー氏は言う。

2019年に3440万ドル(約44.7億円)の資金を確保したバンディエールは、現在、南カリフォルニア、ニューヨーク、ダラスに店舗を構える。今年はさらに多くの店舗をオープンする予定で、マイアミ、オレンジ郡、シカゴなどが候補地として検討されている。ラフルアー氏は同社の2022年の売上高を公表を避けたが、この年を「成長の年」と呼んでいる。

アパレルカテゴリーで好調なアクティブウェア

市場が冷え込むなか、より多くのことを行うアクティブウェアブランドに投資家は興味を惹かれている。NPDによると、2022年のアクティブウェアの総売上は前年比2%減だった。しかし、2019年比では35%増で、ウィメンズアパレル売上全体の26%を占めており、多くの成長余地があることを示している。「(成長は)あのパンデミックの際の最高値からは鈍化しているが、アクティブウェアは不動だ」とクラッシ・ズンモ氏は言う。

2021年末、創業8年のヴオリ(Vuori)は、ソフトバンク・ビジョン・ファンド(Softbank Vision Fund)から4億ドル(約520.3億円)の出資を受け、アクティブウェアに特化した同社の評価額が40億ドル(約5203億円)に達したと発表した。その後、同社は初の海外店舗となるロンドンを含む17店舗をオープンし、トラベルウェアやアウターウェアのカテゴリーを拡大している。2017年からは黒字化していると、CMOのニッキー・ラーソン氏は言う。

「ブオリは、あらゆるレベルのフィジカルな活動や旅行を楽しみ、快適で健康的なライフスタイルを送りたいと望むすべての人にアピールする」とラーソン氏は述べ、同ブランドの服を「楽で」「時代を感じさせず」「多用途で」「信じられないほど柔らかい」と表現した。

「ここ数年のアクティブウェアを見ると、何がアクティブウェアで、何がそうでないかを明確に区別することが難しくなってきている」とクラッシ・ズンモ氏。「アクティブスポーツブラから、ラウンジスウェットパンツまで、すべてを網羅するようなラベルになっている。非常に雑多で複雑になっているのだ」。

11月、創業8年のオーストラリアのアクティブウェアブランド、ナグナタ(Nagnata)の創業者でクリエイティブディレクターのローラ・メイ・ギブス氏は、アパレルカテゴリーで同ブランドのスタイルを取り上げるようバイヤーを説得した後、ネッタポルテ(Net-a-Porter)での売上が急上昇したとGlossyに語った。超カラフルなレギンスで知られる、創業15年のテレズ(Terez)の創業者、ザラ・テレズ・ティッシュ氏も同じ機会を捉えている。彼女は2月に配信のGlossyポッドキャストのエピソードのインタビューで、「私はバイヤーに、アクティブウェアがコンテンポラリーのフロアと別に分かれる必要はないと説明しようとしている」と語っている。

クラッシ・ズンモ氏は、アクティブウェア部門が消滅するのではなく、トレンドに牽引されるブランドやアイテムとは対照的に、「純粋なパフォーマンス」ブランドとアイテムによって定義されるようになると予想している。

いまひとつ低調なジムシャークとアウトドアヴォイシズ

それに関連して、「コンディショニング」に焦点を当てたアクティブウェアブランド、ジムシャーク(Gymshark)は1月末にレイオフを発表した。同ブランドがタイムリーにコミュニティに注力し、業界の専門家がこのブランドに信頼を寄せているにもかかわらずだ。10月、ショッピファイ(Shopify)のプレジデントであるハーレイ・フィンケルステイン氏はGlossyのインタビューで、ジムシャークの創業者ベン・フランシス氏は「現代の小売の未来を深く理解している」ため「勝つだろう」と語っていた。

コミュニティは長いあいだ、アウトドアヴォイシズのビジネスモデルとマーケティングの中核をなしてきた。パンデミック前の年間売上4000万ドル(約52億円)から2022年には9000万ドル(約117億円)に成長し、黒字化を達成したと報じられ、8月には同社が売却に踏み切るか、資金調達を模索しているという噂が飛び交った。この記事の公開を前にまだ発表はなく、同社の幹部とも連絡は取れなかった。同社は長年にわたってテニスドレス、「スポーツ」スカート、「トレック」オーバーオールなど、製品の品揃えを進化させてきた。同時に、「ムーブメント」を中心としたマーケティングを主導している。インスタグラムでは、現在、ハイキングをする人々の画像を多く投稿しているが、前述したポッドキャスターたちが指摘するように、その話題性は比較的低いままだ。2022年のメディアインパクトバリュー(MIV)は1740万ドル(約22.6億円)で、前年と横ばい(1%増)だった。それに対してアローの2022年のMIV総額は1億600万ドル(約137億円)であり、またルルレモンは27%増加している。

人気ブランドによるコミュニティやインフルエンサーの活用

人気を博しているブランドにとって、強力なコミュニティは依然として重要である。そうしたブランドはインフルエンサーとともに、ワークアウトアプリや所有するワークアウトスタジオ、限定メンバーシップやイベントなどを活用して、コミュニティの活性化を図っている。アローには、アロームーブス(Alo Moves)というメンバーシップといくつかの「神聖な」スタジオがあり、バンディエールはメルローズ店のスタジオB(Studio B)のスペースでバーチャルレッスンやイベントを開催している。バンディエールは、割引よりも新商品を最初に使用できる機会といった独占的な機会を重視する「裕福な顧客」によりよい対応をすべく、2月頭にロイヤルティプログラムをリローンチする。

インフルエンサーに関しては、ビヨンドヨガは今年オンラインフィットネス・インストラクターのミーガン・ループ氏(インスタグラムのフォロワー数30万人)との強力なパートナーシップを開始した。ループ氏は、モデルのミランダ・カー氏やインフルエンサーのアリエル・チャーナス氏といったファッションの「イット」ガールのトレーニングで知られている。そんなループ氏について、ワーラー氏は「彼女が着るものはすべて売り切れる」と語る。今年発売される同社とのコラボ商品に続き、2024年にはニューヨークのバースタジオ、バースリー(Barre3)が販売する独占アクティブアパレルブランドとなる予定だ。

一方、バンディエールは、同社のワークアウトクラスをいくつか主催するアマンダ・クルーツ氏(インスタグラムのフォロワー数73万人)やファッションインフルエンサーのジュリー・サラニナ氏(インスタグラムのフォロワー数730万人)と、コラボコレクションを通じて「かなり緊密に」仕事をしている。またエルザ・ホスク氏、ベラ・ハディッド氏、キット・キーナン氏、カミラ・コエーリョ氏にも着用してもらっている。

そしてもちろんアローも、ケンダル・ジェンナー氏といった超人気の有名人とチームを組んでいる。

アローのCEOダニー・ハリス氏はイスラエルに2店舗、アラブ首長国連邦に2店舗のオープンに向けて海外出張中であり、この記事に対するコメントはもらえなかったが、同ブランドはあきらかに拡大モードだ。

また、この記事にコメントしたブランドエグゼクティブは皆、メンズ事業を拡大する計画について語っていた。

それに関して言えば、ルルレモンのメンズカテゴリーの売上成長率は、12月に報告された第3四半期でウィメンズカテゴリーを上回っており、安定していることも証明されている。四半期の売上高は、前年同期比28%増の186万ドル(約2億4200万円)だった。

[原文:Fashion Briefing: With activewear moving far beyond leggings, the market is experiencing a changing of the guard]

JILL MANOFF(翻訳:Maya Kishida 編集:山岸祐加子)

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