景気後退もどこ吹く風、ビューティー新興企業が着実に資金調達している理由

DIGIDAY

こちらは、小売業界の最前線を伝えるメディア「モダンリテール[日本版]」の記事です
※モダンリテール[日本版]は、DIGIDAY[日本版]内のバーティカルサイトとなります

ベンチャーキャピタルからの投資をかき集めるのに苦労している小売カテゴリーがある一方で、ビューティー関連の新興企業は資金を確保し続けている。

カラーコスメティクスブランドのメイクアップバイマリオ(Makeup by Mario)は、4000万ドル(約51億6000万円)の少数株成長投資を締結したと、1月に発表した。eコマース美容品サイトのサーティーンルーン(Thirteen Lune)は同月に800万ドル(約10億3000万円)のシードと投資ラウンドを確保した。ラグジュアリースキンケア&ヘアケアブランドのアウグスティヌスバデール(Augustinus Bader)は2022年11月、戦略的資金調達ラウンドで2500万ドル(約32億3000万円)を獲得し、これにより同社の評価額は10億ドル(約1290億円)に達した。

パンデミックのあいだもビューティー分野は堅調

ビューティーのカテゴリーではゴールドラッシュが起きているが、これは資金調達の環境の全景を示すものではない。ピッチブック(PitchBook)が2022年1月に公開したデータによると、新興企業の資金調達は、2021年に最高値に達したあと、2022年には31%も低下した。専門家は、電子機器アパレル家具など、ほかの裁量的支出カテゴリーでは人々が出費を控えているのに対して、ビューティー分野にはそのような傾向が見られていないと語る。

インサイダーインテリジェンス(Insider Intelligence)でシニアアナリストを務めるスカイ・キャナベス氏は次のように語る。「美容品の適応力が高いのは、一般的に、手の届くラグジュアリー、手の届くぜいたくとみなされていることからだと考えられる。ここ数年のパンデミックのあいだ、多くの消費者が美容の習慣をアップグレードするとともに、若い消費者がビューティーへの支出を増やす傾向が見られた」。

実際に人々は、ビューティー関連の商品に散財している。インサイダーインテリジェンスの11月のレポートによると、化粧品や美容品に加えて、フレグランスなどのカテゴリーでも、小売売上額がそれぞれ12.1%と11.6%増加した。

手の届くラグジュアリー

ここ数年において、ビューティーは景気後退の影響を受けないカテゴリーとみなされてきた。リップスティック効果とは、経済危機の状況において、人々は、口紅やその他の美容製品のような、比較的安価なラグジュアリー商品を買わざるを得なくなるという理論だ。

小売業者の最近の決算発表もこの理論を支持している。ビューティー小売のセフォラ(Sephora)、フェンティ(Fenty)の50.01%の株式、そのほかいくつかの高級化粧品とビューティーカテゴリーのブランドを所有しているLVMH(モエ・ヘネシー・ルイ・ヴィトン)は、過去最高の年間収益と利益を報告した。同社の香水・化粧品カテゴリーの収益は2022年に17%増加し、フェンティビューティー(Fenty Beauty)の収益は2倍になった。セフォラについては、「所得と収益の両方について記録的な業績を達成した」と述べている。

キャナベス氏は、困難な小売環境において、ビューティーは投資家の目を引き続けてきた可能性があると語る。投資家が探し求める資質として、強い商品や、多様化された流通チャネルがあると、同氏は語る。「ビューティーのカテゴリーは過去数年間にわたって非常に好調だ。また、多くの経済的な不確実性がある最中でも、強い推進力を示し続けている」と、同氏は述べている。

実際に、一部の投資家は、D2Cチャネルだけに依存することなく利益を上げて成長を続けている新興企業を求めている。たとえば、サーティーンルーンは合計1250万ドル(約16億1000万円)を調達し、JCペニー(JCPenney)600店舗に展開を続け、2023年には旗艦店舗の開設を計画している。同社は、今年中に黒字化を達成すると述べている。

景気後退の影響を受けにくい

一方、自社商品への需要を明確に証明できるブランドを優先している投資家もいる。

たとえば、メイクアップバイマリオは、北米内外のセフォラで品揃えを拡大するとともに、自社のD2Cビジネスの成長を計画している。同社のサリアルスキン・ファウンデーション(SurrealSkin Foundation)は、今月初頭に発売されてから10秒ごとに1本売れている。同様に、スキンケア企業のトピカル(Topical)は2021年に収益が3倍に増加した後、2022年11月には1000万ドル(約12億9000万円)のシリーズA資金調達ラウンドを行った。

ビューティーブランドのベアミネラル(bareMinerals)、バクサム(Buxom)、ローラメルシエ(Laura Mercier)を運営するオルベオン(Orveon)のCEOを務めるパスカル・ホウデヤー氏は次のように述べている。「ビューティーのカテゴリーは、もっとも急速に成長しているという理由から、最高に魅力的だ。このカテゴリーには将来的に大きな可能性があり、常に自己改革を続けていると確信している」。オルベオンは2021年に未公開株企業のアドベントインターナショナル(Advent International)によって設立された。

同氏は、オルベオンや同社の未公開株の後援企業は、機能的または情緒的なベネフィットに加えて、独自の位置づけを持つ、意識的なビューティーやブランドに関心を持っていると語る。

同社のブランドのポートフォリオは、ビューティーのカテゴリーのなかでもプレミアムとプレステージに属しているため、買い物客が裁量的商品への支出を減らしても、それほど影響を受けないと、同氏は語る。「美容品やメイクアップにおけるプレミアムとプレステージのカテゴリーは、その買い物客や利用者のほとんどが、中・高所得の世帯であるため、景気後退の影響を受けにくい」と、同氏は述べている。

結果として、ハイエンドのブランドは、投資家の関心を集めることになる。アウグスティヌスバデールは最近の資金調達ラウンドによってユニコーンステータスに達した。同ブランドは、この投資を利用して全世界への展開と、米国や中国などの主要な市場での成長を推進すると語っている。

大企業による買収の動きも

自社の商品を「クリーン」に位置づけ、材料の透明性を実現しているブランドも脚光を浴びていると、成長マーケティングサービス企業のイーコマースインテリジェンス(Ecommerce Intelligence)の創設者であるライアン・ターナー氏は語る。たとえば、クリーンでアクセスしやすいスキンケアブランドのインビューティープロジェクト(InnBeauty Project)は、2022年12月に1200万ドル(約15億5000万円)のシリーズA資金調達ラウンドを完了した。

「人々がこのような種類の商品を見る目は変わってきている。誰もがラベルを読むようになっている」と、同氏は述べている。

多額の資金調達があったほかのカテゴリーと同様、大規模な企業がまもなく小企業を獲得する可能性が高いと、インサイダーインテリジェンスのキャナベス氏は述べる。オルベオンのホウデヤー氏は、同社が既存ブランドのポートフォリオを補完するブランドを買い取ることを計画していると語る。1月初頭の発表によれば、テクスチャヘアケアブランドのミエル・オルガニクス(Mielle Organics)は、規制当局の承認を待って、プロクターアンドギャンブル(Procter & Gamble)に買収される予定だ。

「投資家たちが探しているのは、最大の成長の可能性を持つ、最良のブランドだ」と、同氏は述べている。

[原文:Despite the tough fundraising environment, beauty startups continue to nab funding ]

MARIA MONTEROS(翻訳:ジェスコーポレーション、編集:戸田美子)
Image via Makeup By Mario

Source

タイトルとURLをコピーしました