新型コロナウイルス治療薬「モルヌピラビル」がウイルスの突然変異を引き起こす可能性

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新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の治療に使われている飲み薬「モルヌピラビル」が、新型コロナウイルスの突然変異に拍車をかけている可能性があるという論文が発表されました。この研究によれば、モルヌピラビルの投与によって生まれた派生株の中には他者への感染能力を持つものも確認されているとのことです。

Identification of a molnupiravir-associated mutational signature in SARS-CoV-2 sequencing databases | medRxiv
https://doi.org/10.1101/2023.01.26.23284998

COVID drug drives viral mutations — and now some want to halt its use
https://doi.org/10.1038/d41586-023-00347-z

モルヌピラビルはウイルスのRNA配列をめちゃくちゃにしてしまうことで、ウイルスの遺伝情報にエラーを起こして自己複製をさせなくする薬です。モルヌピラビルは製薬大手のメルクが開発し、アメリカとイギリスでは2021年末に、オーストラリアでは2022年初めに規制当局から承認されました。メルクが主催した臨床試験では、モルヌピラビルの投与によってCOVID-19の重症化リスクを抱える人々の入院や死亡数が減少したことが確認されています。

新型コロナの飲み薬「モルヌピラビル」が作用する仕組みとは? – GIGAZINE


しかし、未査読の医療論文リポジトリのmedRxivに掲載された論文で、1300万種類以上の新型コロナウイルスのRNA配列を調べた結果、モルヌピラビルによる変異の痕跡が見られる系統が発見されたことが報告されています。

研究者によると、モルヌピラビルが広く使用されるようになった2022年から、特定の系統の有病率が大幅に上昇していたとのこと。この系統は、フランスやカナダなどのモルヌピラビル未承認国よりも、アメリカ・イギリス・オーストラリアなどのモルヌピラビル承認国での配列データに現れる割合が高いことが判明しました。

また、特定の系統が見られた新型コロナウイルスのサンプルに登録されている感染者のデータを見ると、高齢者が多かったとのこと。特にオーストラリアでは、介護施設にモルヌピラビルを常備していることもあり、確認された変異系統25パターンの多くが80代~90代の少なくとも20人に感染していたこともわかりました。

さらに、モルヌピラビルの影響を示す系統のうち、オーストラリアで発見されたものを含むいくつかの系統には感染力を持つものも発見されたとのこと。研究チームの一員で、フランシス・クリック研究所の計算生物学者であるテオ・サンダーソン氏は「私たちの研究は、モルヌピラビルによって変異させられたウイルスが決して他人に感染することはないという仮説を否定するものだと言えます」と述べています。


モルヌピラビルを販売するメルクは、「モルヌピラビルと突然変異の多い配列を状況証拠で結び付けているだけです。論文の著書らはこれらの変異がモルヌピラビルに関連していると仮定していますが、その変異を持つウイルスがモルヌピラビルを処方された患者から抽出されたという証拠はありません」と反論しています。

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