Googleの機械学習による新型広告システム「P-MAX(Performance Max)」とは?

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2021年にGoogle広告がスタートした広告製品が「Performance Max(P-MAX)」です。Performance Maxは直訳すると「パフォーマンスの最大化」という意味で、1つのキャンペーン(広告管理単位)からGoogle広告のすべての枠に広告を配信することができるというプロダクト。そんなP-MAXの仕組みについて、広告関連のニュースサイトであるAdExchangerが解説しています。

Meet Performance Max, The Blackest Black Box Of All Google Ad Products | AdExchanger
https://www.adexchanger.com/commerce/meet-performance-max-the-blackest-black-box-of-all-google-ad-products/

2020年第4四半期に、GoogleはP-MAXのベータプログラムを開始しました。そして、2021年にベータプログラムが終了し、正式版がリリースされました。P-MAXがどういうものかについては、Google広告が公開している以下のムービーを見るとよくわかります。

P-MAX キャンペーン: 基本概念の動画 – YouTube
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Googleは広告主のサーバーに接続し、販売とCRM(顧客ひとりから得る収益)のデータを収集します。そして、広告主は次に、キャンペーンのすべてのアセット・1日の予算上限・コンバージョン単価・オンライン販売・ムービー閲覧・新規顧客・オンサイトエンゲージメントなどの表示したいコンバージョンの種類を設定します。Googleは、検索結果やYouTube、ショッピング、Gmail、マップなど、自社サービスのありとあらゆる場所に広告枠を持っており、このあらゆる広告枠に広告を自動で配信します。


従来は個々の広告枠に応じてキャンペーンを設定する必要がありましたが、P-MAXは「1つのキャンペーンですべての広告枠に広告を出すことができる」という点が大きな特徴となっています。つまり、複雑な設定をすることなく全ての広告枠に広告を配信でき、より幅広いユーザーへアプローチできるというわけです。

また、P-MAXのもうひとつの大きな特徴が「機械学習による最適化と自動化が行われる」ということ。従来では、複数の広告枠に広告を配信するには配信量の調整などの細かい運用が求められましたが、P-MAXは広告の成果が最大になるように機械学習で自動的に調整が行われるため、運用工程が大きく削減できます。また、機械学習による最適化が行われることで、コンバージョン数の向上やコンバージョン単価の改善が期待できます。


ただし、P-MAXを使うと、広告主は広告のコントロール権の多くをGoogleに委ねることになります。P-MAXは広告主が自分で枠や配信量を選んで広告を出すよりも、多くのGoogleの広告枠に広告を配信します。

P-MAXが自動で広告配信を最適化するため、時には広告主の希望に反する配信が行われることもあります。例えば、広告主がYouTube Shortsで広告を打つつもりがなくても、P-MAXが与えられたアセットを基にしてYouTube Shortsに自動的に広告を配信することは十分ありえます。

さらに、P-MAXではGoogleの広告枠全体が1つのチャンネルとして扱われるので、YouTubeの広告費が減らされたりGoogle検索の広告費が増えたりしますが、その配分についての詳細とアナリティクスは広告主にほとんど開示されません。また、広告主は予算のうちの何%がGoogleのどこに使われたのかを知ることはありません。そのため、マーケティング担当が「なぜ今回の広告戦略はこういった結果になったのか」の説明を求められた時に説明がしづらい状態です。


2022年11月に、GoogleはP-MAXのアナリティクスに「キャンペーン内でどの検索語がクリックを生み出したかを報告する機能」を搭載したと発表しました。しかし、この機能でチェックできるのは過去7日間あるいは過去28日間のみ。広告代理店Outdoor Ecommerceのミロ・マクマホンCEOは「まったく恣意(しい)的だと思います。Googleはカーテンの裏側をちらちらと見せているようですが、決して全てを見せない方法を選んでいるようです」と述べています。

マクマホンCEOは、一部の小売業者や代理店がP-MAXを広告展開のチャンネルごとに分けようとしていると報告しています。例えばある小売業者は、異なる商品ラインに対して複数のP-MAXキャンペーンを作成しているとのこと。キャンペーンがいつ配信されたか、どの検索語がコンバージョンに貢献したか、広告主がP-MAXキャンペーンに費やした金額、そしてそのデータをCRMと比較することによって、広告主はP-MAXがどのチャンネルが有効に機能しているのかを推定することができます。しかし、マクマホンCEOは「そういった作業は私たちがするべきことではありません」とコメント。AdExchangerは「GoogleのP-MAXは透明性の向上ではなく、パフォーマンスの向上に重点を置いています」と述べています。

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