これが旅じゃなくてなんだ(左から 橋田、乙幡、小堺、古賀の4人でお送りします)
10代をまるまる埼玉県の日高市ですごした。川越は優秀な同級生が進学先として選ぶ学校(川越高校=川高、川越女子高校=川女)がある大きな街のイメージだ。
遠い地名ではなかったのだけど、行く機会はほとんどないまま、気づけば観光スポットとして大人気で、でもなんとなく、わざわざ観光に、旅をしに行くような場所なのかな? などと思ってぼんやり興味を持たずにいた。
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観光地としての「川越」は駅からバスで行く
そんな川越に、行きませんかと、友人でライターでもある小堺丸子さんが声をかけてくれたのは昨年末のこと。
ライターの乙幡啓子さん、編集部の橋田玲子さんと私は個人的にも仲良しで、4人で行きましょうという話で、ふるって4人、日程をすりあわあせた。
小堺さんがいると集合が旅になる。「集まる」ことを安易に「お茶やメシ」に直結させないのだ。
これは出不精の私には本当にありがたいことで(というのは橋田さんも乙幡さんも言っていた)、楽しみに正月明けてすぐの3連休のいちにち、川越駅に集まった。
いきなり「へ~」と思ったのが、駅からまずはバスに乗るということだ。
主要な観光地は駅前からやや離れた場所にあり、徒歩でも可能なレベルの距離だけどバスで行くのが定番らしい。
小堺さんは何度か来たことがあるというから頼もしいし、何度か来た場所に何度も行くことに旅が好きという才能と素養を感じる。
「繁華街の場所が駅前ではない」のはほうぼうの都市で定番のパターンだが、川越は駅前がはちゃめちゃに盛り上がっているうえで、観光地が駅前とは別のゾーンにある。そういうパターンの街もあるんだな。
小江戸川越としての名所、蔵造りの町並みが拝める一番街でバスをおりるとすごい人であった。行政用語であるところの「にぎわいの創出」、これかと思わされる。
有名らしいお店はどこも大行列で、ノープランで来ている我々はお店の予約なども特にしていない。
照れくさく言い出せなかったものの、一同の足はまずはとりあえずなんとなく例の場所へ向かった。
お賽銭を御社殿の中に放り込むの、「珍しいですね~!」と盛り上がったら、実は信心深い橋田さん(なお、本記事の撮影はほぼ橋田さんがしてくれてます!)が「わりと普通だよ」と教えてくれて、私はまたひとつ世を知りました。
熊本のいきなり団子やんけ!?!?!? と思うも、いきなり団子とは違い、皮にもち米と山芋を使っているのだそうだ。いきなり団子といえば皮は小麦粉が基本だから、ちょっと違う。
そうか……いきりたってすみませんでした、本当に本当においしかったです(すぐ食べる人用に温かいものを売っているのもありがてえ)。
「館」は見る
さて、旅といえば館だ。やかた、では無い。「かん」。博物館の「かん」である。
おとなになって館を積極的に見るようになった。
子どもの頃は、これはまじめな発信だなと思うとそこで興味を失っていたように思う。まじめななかに可笑しみや味わいがあることを知らなかった。歳を重ねて知恵をつけ、今やそのおもしろさが分かるようになったのだ。
川越でもふたつまわったが、これがどちらもたいへんな見ごたえと興味深さだった。
ひとつめが、老舗のお菓子屋さん、亀谷栄泉の2Fで無料公開(!)されている、「芋菓子の歴史館」。
資料とともに芋菓子が川越名物として定着するまでの歴史が展示されている。
昭和初期に上野から川越までの往復切符に芋掘り券、弁当券、みやげ券をつけた周遊券を販売するなど、盛んに川越にさつま芋ありとの売り出しに貢献したのがこのお店だったそう。
戦後は食糧難でお菓子を作る材料が仕入れられず、洋風の陶磁器を売り商売を続け、昭和25年になってやっと芋菓子がまた作れるようになったと書いてあった。
芋をやれずに皿を売る、そういう時代があったのだ。
芋菓子の歴史を胸に刻み、一行は「川越まつり会館」へも。
埼玉で育った私にとっては超有名フェスティバルなのだけど、川越には「川越まつり」がある。
8メートルを超えるめちゃくちゃ豪華な29の山車が登場するやばい祭りで、この会館ではお祭りに出る本物の山車が常時2台展示されている。
実際のお祭りの様子を編集した映画も上映され、上映後はスタッフの方が上手な口上で山車について解説してくれるから熱い。
頂上に人形が乗っているのも知らなかったし、全体が2層構成されており、上部(人形とその台)が下部に格納できるようになっているのも驚きだった。
ちなみに「常時2台展示」の山車は定期的に入れ替えているのだそうで、どうやって!? と驚き聞いてみると、ガラス部分を開いて出せるようになってるんだそう。へ~~っ。
この山車、各種をアクスタにしたら最高にかっこよさそうと言うと、乙幡さんから、お客さんに選んで買ってもらうのは大変だからガチャガチャにすると良いと鋭い提案があった。それだ。
さらに我々が沸いたのは展示だった。
祭りの様子を描いた1826年の絵巻「川越氷川祭礼絵巻」の複製が展示されており、これがすごいかわいさだったんだ。
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