大規模な太陽嵐は電力網とインターネットを遮断する可能性がある

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太陽で大規模な太陽フレアが発生した際に発生した高温のプラズマである太陽風が地球や人工衛星に吹き付ける自然現象が「太陽嵐」です。太陽嵐は太陽の活動周期が活発になると発生しやすく、地球に吹き付けると電力網やインターネットに大きな被害を及ぼします。太陽嵐が実際にどんな影響を及ぼすのかについて、ミシシッピ州立大学の高電圧研究所のマネージャーであるデヴィッド・ウォレス特任助教が解説しています。

A large solar storm could knock out the power grid and the internet – an electrical engineer explains how
https://theconversation.com/a-large-solar-storm-could-knock-out-the-power-grid-and-the-internet-an-electrical-engineer-explains-how-177982

1859年9月1日、世界各地の電信システムが壊滅的な故障に見舞われました。電信技師からは「電気ショックを受けた」「電信用の紙が燃えた」「電池を抜いた状態でも機器を操作することができた」などの不可解な現象が報告されました。また、通常は高緯度のカナダ北部や北欧、ロシアなどでしか見ることができないオーロラが、南米のコロンビアで夕方頃に観測されたという記録も残っています。


一連の現象はすべて「キャリントン・イベント」と呼ばれる、大規模な太陽嵐が原因だといわれています。太陽から噴出したプラズマは、プラスの電荷を持つ陽子とマイナスの電荷を持つ電子の塊です。このプラズマの塊が地球に到達すると、地球を取り囲む磁場と相互作用し、オーロラなどの自然現象を起こします。また、それだけではなく地球上にある電気を使ったシステムにも大きな影響を与えます。

太陽嵐は地球の上層大気に大量の宇宙線を放出するので、炭素の放射性同位体である炭素14を生成します。そのため、長い年月を経て積み重なった南極の氷に含まれる炭素14の層と含有量から、過去のいつごろに太陽嵐が発生したかを知ることが可能です。調べによると、キャリントン・イベントを超える規模の太陽嵐「ミヤケ・イベント」が西暦774年ごろに起こったことがわかっています。

また、西暦993年ごろにも、ミヤケ・イベントの6割ほどの規模の太陽嵐が発生しています。南極の氷のサンプルからは、キャリントン・イベントクラスの太陽嵐が平均して500年に1度の割合で発生していることがわかっています。


アメリカの海洋大気庁は太陽フレアの強さを、「Geomagnetic Storms scale(地磁気嵐スケール)」で評価しています。地磁気嵐スケールは「G1」から「G5」の5段階があり、数字が大きいほど規模が大きいことを示します。キャリントン・イベントはG5に分類されるとのこと。ミヤケ・イベントに至っては炭素14の増加量がキャリントン・イベントの10倍以上だったことから、もはや地磁気嵐スケールで評価できないほど規模が大きかったとされています。

そして、キャリントン・イベント以上の規模になると、太陽嵐は誘導電流を発生させ、地上にある電気系統を破壊しかねないとのこと。100アンペアを超えることもある誘導電流が変圧器やリレー、センサーなどの電気部品に流れ込むことで、大規模な停電が起き得ます。1989年にカナダのケベック州で、キャリントン・イベントのおよそ3倍の規模の太陽嵐が直撃しました。この嵐によって、送電網の変圧器が損傷し、500万人が9時間にわたって停電に見舞われる事態となりました。

このほか、地球を周回する人工衛星は太陽嵐による誘導電流で故障する可能性があり、高周波通信システムや海底ケーブルにも障害が発生します。特に大きな影響を受けるのが、自動車から飛行機、携帯電話まで多くの交通機関や通信機器が依存するGPSです。また、インターネットが電気以上に重要なインフラとなった現代では、太陽嵐の影響でコミュニティの活動が完全に停止してしまう恐れもあります。


ウォレス氏は「地球が再び太陽嵐に見舞われるのは時間の問題です。キャリントン・イベント級の嵐が来れば、世界中の電気・通信システムに甚大な被害を与え、停電は数週間にも及ぶでしょう。ミヤケ・イベント級の嵐が来れば、世界的に壊滅的な打撃を受け、停電が数ヶ月に及ぶ可能性もあります。宇宙天気予報センターから宇宙天気予報の警告が出たとしても、世界には数分から数時間しか知らせることができないでしょう」と述べています。

さらにウォレス氏は「太陽嵐の影響から電力システムを守るための研究を続けることが重要です。例えば、変圧器のような脆弱(ぜいじゃく)な機器を保護する装置を設置したり、太陽嵐が来そうなときに負荷を調整する戦略を開発したりすることが挙げられます。つまり、次に起こるキャリントン・イベントによる混乱を最小限に抑えるために今取り組むことが重要なのです」と述べました。

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