2023年もマーケターは Z世代 へフォーカス:オーセンティシティの見極めが重要

DIGIDAY

2022年を通じ、マーケター勢はZ世代向け広告にフォーカスした。ときにはミレニアル世代への注力から切り替え、求人市場および成人初期に入っていくさらなる若年層へのリーチに努めた。

よって、Z世代が大半の時間を費やすTikTokといったソーシャルメディアプラットフォームに、より多くの広告費が投入された。また、あからさまな広告を忌み嫌う若者世代にリーチするべく、クリエイティブに対する姿勢は、余計な虚飾を取り除いた、よりオーセンティックなものに回帰した(Z世代向けマーケティングに関するDIGIDAYの完全ガイドはこちら)。このトレンドは2023年も続くと、マーケターおよびエージェンシー幹部らは見ている。

Z世代が牽引するチャネル

Facebookやインスタグラム、YouTubeといったプラットフォームにマーケティング費を過剰に割いても、若年層には響かないと学んだブランド勢は、そこにTikTokを加えた。この図式は2023年も継続すると、マーケター勢は見ている。

また、変化の創造を望む目的意識の高いブランド勢とZ世代との親和性の活用についても、マーケター勢は計画している。「それはつまり、従来の戦略ではもはや通用しないということ。自分たちのやり方がベストだと思う姿勢はいい加減変えないといけないというような、他部署を説得するのに必要な根拠を、今よりもさらに多くのマーケティングチームが手にできることを意味する」と、Z世代が牽引するソーシャルメディアエージェンシーのザ・Z・リンク(The Z Link)創業者でCEOのエリフィリ・ガウナリ氏は話す。

データインテリジェンス企業モーニング・コンサルト(Morning Consult)が実施した調査によれば、Z世代の56%がソーシャルメディアを毎日の生活に欠かせない存在と答えており、ほぼ5人に2人(38%)が、推奨されるよりも長時間をソーシャルメディアに費やしていることがわかった。雑誌「Journal of Social and Clinical Psychology(ジャーナル・オブ・ソーシャル・アンド・クリニカル・サイコロジー)」によれば、心身の健康維持には、ソーシャルメディアの利用は1日30分が推奨されている。

ソーシャルメディアに対しては、安全策よりもむしろ、より大胆な戦略のほうが報われるとの理解を胸に、ブランド勢は新年度に臨んでいる。Z世代にリーチするべく、TikTokでのインフルエンサーマーケティングに投資したアーム&ハマー(Arm&Hammer)ソース(Sourse)といったブランドの成功は、その顕著な例だ。

Z世代がカルチャーに及ぼす影響

ソーシャルメディアのトレンドやインターネットサブカルチャーの多くは、Z世代が形成および牽引しており、そこにはミームやコミュニケーションのスタイルも含まれる。実際、これらは常に変化するものであり、時代の精神に直接影響を及ぼしうる。

スパークス&ハニー(Sparks&Honey)のユースプラクティス部門トップであるハンナ・ヒックマン氏も、インフルエンサーからクリエーターへと移行するZ世代への見方を同じくする――その見方とはつまり、Z世代が自らクリエーターとなり、企業の後ろ盾を持たずに自身のビジネスを営みたいと考えるなかで生じる、サイドハッスル(副業/ギグ)エコノミーからパッションエコノミーへの移行のことだ。「Z世代はいま、1個の独立したインフルエンサーまたはクリエーターとして、既存の枠から抜け出したいと考えているわけだが、その姿勢がこれまでの世代とは少々異なっている」と、ヒックマン氏はいう。「そしてもちろん、ブランド勢はそれに対応せざるをえなくなる」。

そのトレンドには、オンライン対話のかたちを自らの手で再形成できる、という力の自負感覚も含まれる。ポディポジティブはその好例だと、ジャンスポーツ(JanSport)のグローバルブランドマネジメント部門VPであるモニカ・リガリ氏は話す。「体型や肌の色だけに留まらず、今後は、消費者によって異なる諸能力も含めて考える姿勢が欠かせない。そこには無論、日々の生活に移動支援機器を使用する人々も含まれる」。

Z世代は、デジタルマーケティング素材という、過去、彼らだけが育まれてきたメディア環境のなかにいる自己を目にすることで、自身に備わる力を自覚する世代なのだと、リガリ氏は指摘する。

Z世代ユーザーの習慣

2022年にはさらに、Z世代がコンテンツ発表の場をインスタグラムからTikTokに変えた年でもあり、それは彼らが後者により多くの時間を費やすようになった動きに起因する。たんに「いいね」やコメントを残すだけでなくZ世代はソーシャルメディアへの参加を望んでいる。流行中のダンスを自らやってみたり、バズっているトレンドに乗ったりするのは、その現れだ。ストーリーを受動的に傍観するのではなく、いまのユーザーは能動的にその一部になることを求めている。

そんなTikTok人気の急騰を受け、同アプリ上にいるZ世代との関わりを目指すブランド間の競争が激化している。

とはいえ、TikTokはいまだインスタグラムを凌いではいない。メタ(Meta)所有のそのプラットフォームは2023年も依然として人気を保つだろうと、メディアパブリッシャーのザ・ソウル・パブリッシング(The Soul Publishing)でコンテンツパートナーシップ部門シニアディレクターを務めるマイケル・ボカチーノ氏は話す。ただし、TikTokは進化を続けるだろうし、それに伴い、人々の使い方も変わってくるだろうと、同氏は言い添える。

「TikTokはソーシャルメディアの有用性を『自分がすでに好きなものを見つけること』から未知なるものの発見へと変えた。Z世代は新たなトレンドや機会を見つけ出したり、自分が知らなかったことを学んだりすることに高い関心を寄せている」と、同氏は話す。また、「ブランド勢には、刺激的なコンテンツで娯楽性が高く、人々それぞれの経験に関わるものにするよう、常に意識しておく必要がある」と付け加える。「視聴者は他人の共有体験に自分を重ねたいと思っており、いま消費しているコンテンツは自分の毎日の暮らしに関係しているという実感を求めている」。

成功の鍵はどの類のオーセンティシティを利用するべきかの見極めにある

Z世代はオーセンティシティ(本物感)と自己表現を大事にする――このトレンドは、彼らが自身の価値観に正直であり続ける限り、今後も続くと思われる。あえての中古品選びや地元での購入へのこだわり、といった流行に見られるサステナビリティへの意識は、その一例だ。

「2022年に見られた、サステナビリティおよびオーセンティシティを尊ぶZ世代の指向は、地方/地元にフォーカスするトレンドを牽引し続けるだろう」と、地図アプリのプレイシー(Playsee)でプロダクトおよびストレテジー部門トップを務めるウェンディ・メイ氏は話す。

「こうしたオーセンティシティの探究は、Z世代にとって何が大切なのか、彼らはどんな人間になりたいと思っているのか、この世界のなかをどのように動きたいと考えているのか、といった点を理解することでもある」とヒックマン氏は話す。つまり、ブランド勢がZ世代にマーケティング予算を投じるつもりなら、どの類のオーセンティシティを利用するべきかの見極めが必須となるということだ。

「どのオーセンティシティがZ世代に響くのか、そしてそれをどうやってオーセンティック(本物)に見せるのかについて、極めて明確な考えを持っているブランドが成功を収める姿を、我々は数多く目にしてきた」とヒックマン氏はいう。「その一方で、あまりに多くのことを同時にやろうとして、あるいは、見るからに明確性に欠けているものに手を出して、失敗したブランドも数多く目にしてきた。無論、正解は一つではないが、いずれにせよ、これと決めたオーセンティシティへの専心は不可欠だ」。

[原文:Marketers to focus on Gen Z in 2023 with dollars moving to TikTok, raw approach to creative

(翻訳:SI Japan、編集:島田涼平)

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