メタバースファッション 、2023年はどうなる?:さまざまな課題とブランドのコミュニティの意義

DIGIDAY

2022年にはファッションとメタバース全体でさまざまな動きが見られた。初のメタバースファッションウィーク、フィジタルのイベントや衣服のローンチ、Roblox(ロブロックス)でのファッションの急増や、ブランドにとっての仮想コミュニティの重要性が認識されたことなどがあった。

Web3についての教育の必要性は依然存在

Facebookが2021年後半に社名をメタ(Meta)に変更したことによって「メタバース」という用語は意味を失い始めた。メタバースの代わりに多くのプラットフォームでのデジタルエクスペリエンスとインタラクションを定義するためにWeb3という言葉がますます使われるようになっている。

「Web3への好奇心は存在しているが、ユーザーエクスペリエンスの乏しさと専門用語の使いすぎが多くの人にとって依然参入障壁になっている」と述べているのは、デジタルファッションブランドのRSTLSS(レストレス)の創業者、チャーリー・コーエン氏だ。「2023年は、テクノロジーそのもののフォーカスから離れて、バックグラウンドでテクノロジーを実装して人々のエクスペリエンスとブランドやクリエイターとのつながりを改善してシームレスにすることに注力されるだろう」。

ブランドらは当初、メタバースネイティブとクリプトネイティブの用語を普及させようと尽力していたが、ブランドの多くはコア顧客からの抵抗に直面し、その後、(Web3について)彼らを教育して仮想アクティベーションへのアクセシビリティを向上させることに方向転換した。たとえば、ナイキ(Nike)は2022年12月に同社のWeb3サイト、ドットスウッシュ(dotSWOOSH)について顧客を教育するために複数の都市を巡るツアーを数カ月以内に行うと発表している。

メタバースファッションウィークの残した課題

2022年の初めには仮想世界プラットフォーム、ディセントラランド(Decentraland)が注目され、そこで美容ファッションブランドによる数十のデジタル不動産ローンチが行われた。3月22日、ディセントラランドはメタバースファッションウィークを主催。これは、ドレスX(DressX)、DMAT、オウロボロス(Auroboros)などのデジタルオンリーのブランドと、DKNY、トミーヒルフィガー(Tommy Hilfiger)、パコラバンヌ(Paco Rabanne)といった伝統的なファッションブランド、そしてセルフリッジズ(Selfridges)などの小売業者が一堂に会した初のメタバースファッションウィークとなった。

このイベントには10万以上が来場したが、解像度が低く、ゲーミフィケーション要素が欠けていたため成功したとは言い難かった。そのため、イベントの創設者らは2023年に向けてフォーマットの更新を行っている。

「2022年、ディセントラランドとザ・サンドボックス(The Sandbox)はWeb3のデジタルイベントとフィジタルイベントのデジタルハブだった」と述べているのは、ブロックチェーンのルクス(Luks)とデジタルファッションマーケットプレイスのザ・デマテリアライズド(The Dematerialized)の共同創業者、マージョリー・ヘルナンデス氏だ。「コミュニティとブランドは物理的次元とデジタル次元の両方で進化し、構築し、交流できる場所を探し求めている」。

Robloxで増加するブランドアクティベーション

メタバースファッションウィーク以降、小売業者やブランドの多くがゲームプラットフォームのRoblox(全世界のユーザー数は5880万人以上)を採用しており、これがZ世代に関与してデジタル世界に進出するための容易な方法であることが証明されている。話題を集めた2021年のグッチ(Gucci)のグッチガーデン(Gucci Garden)アクティベーション後、Robloxはナイキ(ビジター数2900万人)やトミーヒルフィガー(ビジター数2800万人)などのブランドを惹きつけており、これらのブランドはいまではRoblox上に独自の世界を作り上げている。Robloxはディセントラランドやザ・サンドボックスのようにブロックチェーンやNFTはサポートしていないが、そのデザインに何年も費やしてきた複数のクリエイタースタジオの支援を受けており、ブランドがミニゲーム環境を構築するために頼れる場所となっている。2022年のRobloxでのブランドアクティベーションは、デジタルショッピング環境だけではなく、オビーと呼ばれる障害物コースにも注力されていた。

コンテンツスタジオのハウス・オブ・ブルーベリー(House of Blueberry)の創業者、ミシ・マクダフ氏は、ジョナサンシムカイ(Jonathan Simkhai)やナトリ(Natori)などのブランドと協働してデジタルコレクションを作成している。マクダフ氏によると、ゲーマーは必ずしもWeb3の製品やブランドを購入しているというわけではなく、コミュニティに参加するために関与しているのだという。「ブランドのなかには自社の製品を新しいメタバース環境に押し込もうとして、プレイヤーを理解したり彼らの希望に対応するために時間を費やさないという過ちを犯しているところもある。メタバース戦略が成功を収めるためにはそれぞれのゲームコミュニティに特有の属性を考慮しなければならない」。

Robloxのファッション・ビューティパートナーシップ責任者、ウィニー・バーク氏によると、「Robloxは人々が有意義なつながりを構築して没入型の社会的環境の中で自己表現できる場所であることをブランドは認識しつつあり、Robloxにおける継続的なコミュニティエンゲージメントへの投資に対するブランドの関心は高まっている。ブランドは、グッチタウン(Gucci Town)、トミープレイ(Tommy Play)、アロサンクチュアリー(Alo Sanctuary)のような永続的な仮想空間をRoblox上に構築して、Z世代の消費者がいる場所で彼らと接することができる」。

2022年にファッションブランドが確立したデジタル環境の多くは一時的なものだった。たとえば、ラルフローレン(Ralph Lauren)はRobloxで冬テーマのアクティベーションをローンチしてRobloxを試した。しかし、仮想ショッピング環境の人気は高まっており、ブランドはコミュニティにフォーカスしているため、今年はブランドが構築・拡張する永続的なスペースが標準になるだろう。

Discordでのコミュニティ構築と直接的なエンゲージメント

コミュニティの構築とエンゲージメントはDiscord(ディスコード)のようなプラットフォームの成長にもつながった。Discordは、Web3ネイティブがグッチ(メンバー数5万人以上)、RTFKT(メンバー数24万人以上)、アディダス(Adidas)(メンバー数5.5万人以上)のような従来のブランドやデジタルオンリーのブランドと関わる場所だ。NFTプロジェクトのメタバーキン(MetaBirkins)のコラボレーターであるジェシー・リー氏は、2月に次のように語っている。「Discordに2万人いれば、ひとつの投稿で2万人にリーチできる。インスタグラムではそうはいかない。そうだろ? 本当のコミュニティを作れば、ダイレクトにアクセスできる」。

2022年には、DiscordやTwitterなどのプラットフォームを介したブランドとそのコミュニティとの間の直接的なコミュニケーションの重要性が高まった。ナイキが所有するデジタルグッズ企業のRTFKTは、Twitterのフィードバックのおかげで12月のIRLスニーカーのドロップとNFTのローンチに関する問題に迅速に対応することができた。

デジタルファッションプラットフォーム、ドレスXの創業者であるダリア・シャポヴァロヴァ氏とナタリア・モデノヴァ氏は、業界はWeb3ツールとエントランスをもっとシンプルにすべきだと述べている。「実用性のあるプロジェクトは(消費者にとって)関連性を持ち続けるだろう。いまは優れたユーザーエクスペリエンスが重要だ」とシャポヴァロヴァ氏。「2022年の弱気相場で、詐欺的なプロジェクトや(価値のないものの値段を短時間でつり上げて売りたたく)ポンプ&ダンプのプロジェクトが一掃された。デジタルファッションがWeb3よりも速いスピードで発展し続けているいま、この分野でのM&Aの可能性がある」。

VRやARを取り入れる店舗の増加

また、2022年は客足が店舗に戻るにつれて、ブランドが拡張現実やバーチャルリアリティなどの新テクノロジーを試した年でもあり、仮想世界と現実世界の統合に注力された。スナップ(Snap)はモバイルや店舗内のデジタルミラーを介してARを使ったフルルックのトライオン(試着)ソリューションを発表したが、そのおかげで多くの人々がこの技術に慣れる機会が生まれた。小売での完全な統合はまだ先だが、フィジタル体験を構築するなかで今年はさらに多くのブランドが店舗にARを導入する予定である。

フィジタル体験機会の増加

「フィジカルとデジタルの統合がさらに進むだろう」とコーエン氏は語っている。「ARレンズ、NFCチップ、デジタルツインを搭載した物理的な衣服はさらに普及するだろう。物理的なショーや展示会、小売において、地理位置情報付きの仮想体験やコレクターズアイテムなどのデジタルレイヤーがもっと導入され始めるだろう」。ファッションウィークアートバーゼル(Art Basel)はこのようなフィジタル体験の重要な機会となっており、2023年にはさらに多くのフィジタル体験が実施される予定だ。

昨年、9dcc、MHRS 8-bit、RTFKTなどの多くのデジタルファーストファッションブランドがフィジタルコレクションを発表した。そのなかには認証のためにデジタルNFTグッズを物理的なアイテムに結びつけるNFCチップが含まれているものもある。従来のブランド製品の場合は、RFIDタグが製品をブロックチェーンに関連付けることができる一般的なセキュリティ・認証テクノロジーになっている。

クリエイティブエージェンシーのヒュージ(Huge)のプランニング担当バイスプレジデント、グラント・フラナリー氏は次のように述べている。「プロフィール写真(PFP)だけではなく、契約やプロセスのデジタル化に関する用途へと移行することでWeb3テクノロジーがもっと適切に利用されるようになると思う。2023年には、PFP、ステーキング、コイン、メタバースの開発がさらに進むと思うが、(映画の)『レディ・プレイヤー1』で描かれたような完全にプレイ可能なメタバースについては2024年まで待たねばならないだろう」。

[原文:A look back at the year in metaverse fashion activations

ZOFIA ZWIEGLINSKA(翻訳:ぬえよしこ、編集:山岸祐加子)

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