USのマーケターたちに聞く 2023年 の抱負:一貫性のある効果測定、ソーシャルメディア上のブランド保護

DIGIDAY

「新年の抱負」とは、人々が新たな1年に向けた決意を表明する言葉だ。一朝一夕とはいかないまでも、1年のうちに達成したい目標を立て、進捗を確認するのに役立つ。実現がいつになるかはともかく、めざすべき目標があるのはいいことだ(もちろん、年初の目標を2月末までに達成できるとしたら、称賛に値する)。

米DIGIDAYは2022年末、2023年に向けたマーケターたちの抱負の聞き取りをおこなった。

25人以上のマーケターに取材を申し込んだが、「景気の先行き不透明で第1四半期のメディアプラン作成が遅れている」などの理由で大半は断られ、話を聞けたのは6人にとどまった。今回、取材に応じたマーケターたちが語った2023年の抱負を、重点実施分野と改善目標に絞って以下にまとめた。

一貫性のある効果測定

予想通り、マーケターが求めているのは、広告効果測定における改善だ。キャンペーン予算の費用対効果をいかにして証明するかは、以前から重要であると同時に解決が難しい課題だったが、iOS 14のアップデートにともなうプライバシー機能強化により、さらに難易度が上がった。

「測定技術がすべての問題の根幹にある」と、婚礼サービスのゾラ(Zola)で最高マーケティング責任者(CMO)を務めるヴィクトリア・ヴァインバーグ氏は指摘する。「利用できる測定プラットフォームは膨大な数にのぼるが、どれも機能が不十分で、キャンペーン効果の把握がますます難しくなっている」。

ヴァインバーグ氏はこう続けた。「加えて、パフォーマンス指標もブランドの成長もすべて測定を必要とするから業務負担が大きく、業界標準も無きに等しい。2023年に進化を望むのは、なんといっても測定だ」。

マーケターたちが測定ツールの改善を強く求める背景には、景気の先行き不透明感だけでなく、プライバシー機能の強化とその波及効果の影響もあるだろう。

マスターカード(Mastercard)のCMOであるラジャ・ラジャマナー氏は次のように述べている。「企業が不確実要素の多い1年を迎えようとしているいま、マーケティング施策とビジネス成果の相関関係を明らかにすることがマーケターの重要な任務になる。それにより施策のROI(費用対効果)を経営幹部に証明できるうえ、マーケティング予算の削減でビジネスに悪影響が及ぶ根拠を示せるだろう」。

広告効果測定分野では2023年、どの側面の改善を期待するか? と問われたナショナル・ホッケー・リーグ(NHL)のCMOを務めるハイディ・ブラウニング氏は皮肉をこめて「すべてだ」と答えたあと、こう付け加えた。「テクノロジーの進化とプライバシー保護法改正といった変化に業界が対応するという観点から、2023年は興味深い年になるだろう。我々としては、クリエイター経済への投資を検証するため、一貫性のある効果測定ツールと、ROIの証明となる具体的な事例が必要だと考えている」。

メタバースとWeb3への期待

測定ツールの改善とROIの正当性証明は、新興技術分野への投資においても必要性が認識されている。とくにWeb3とメタバースは、引き続きマーケターたちの注目の的となりそうだ。

「2023年は、メタバースなど新興プラットフォームやテクノロジーの効果的な測定手法を確立するという意味で重要な年になる」と、マスターカードのラジャマナー氏はいう。「我々は、自社ブランドの影響度を把握し、マーケティングミックスの観点から今後の投資配分を検討しなければならない」。

マーケターたちはいまのところ、Web3とメタバースに注力する意向を表明しているが、基盤づくりに必要な使用事例が十分でないと以前から主張していたという経緯もあり、実際に関連の施策が運用されるか否かはまだわからない。

「業界関係者は引き続き、あらゆる可能性を探り、実験をおこない、どんなマーケティング手法が有効かを見きわめる必要がある」とラジャマナー氏はいう。「経済の見通しが不確かで、マーケターとしては新たなプラットフォームへの投資に迷う局面かもしれないが、新興テクノロジー全般に関する基礎知識を身につけたうえで、AIやWeb3など優先テーマを選び、関連エコシステムの進捗状況を追いながら、いざというときには迅速に動けるよう体制をととのえておくことが望ましい」。

ロブロックス(Roblox)も同様の戦略をとる方針のようで、マーケティングおよび社員エクスペリエンス最高責任者のバーバラ・メッシング氏は、Z世代との接点を重点的に追及するとしている。「また、当社は今後もデベロッパー・コミュニティの発展を促すつもりだ。デベロッパーがブランドとの協業を拡大し、専門知識を共有し、世界中のユーザー向けにバーチャルアイテムや質の高い没入型体験を開発できるよう、支援を続けていく」。

検索とブランド保護対策が期待されるソーシャルプラットフォーム

2022年、イーロン・マスク氏によるTwitterの買収以降、ソーシャルプラットフォームにおけるブランドセーフティの問題に対する懸念があらためて浮上した。マーケターたちは、各プラットフォームが誤情報の拡散を防ぎ、ブランド保護対策を講じるよう期待している。

「ソーシャルプラットフォームには、広告主の厳しい目が向けられている」とラジャマナー氏は指摘する。「我々は、ブランドのレピュテーションリスクを最小限に抑える方法を慎重に検討し、ブランドセーフティ対策導入に向けて業界全体で協力しなければならない」。

ひとつの選択肢として注目されているのがTikTokで、各社のCMOはこのプラットフォームが誇るユーザー向け検索機能の活用法を探っている。「TikTokの検索機能がいかにマーケティングに役立つか、その価値がようやくわかった」と、ゾラのヴァインバーグ氏は認めている。「私の新年の抱負は、検索機能の効用と価値をよく理解し、結婚式関連のコンテンツを検索するすべての人々に当社ならではの専門サービスを提供することだ」。

好評を博したコンテンツを土台に

TikTok検索の可能性追求に加えて、マーケターたちはTikTokに適した、若い世代向けのコンテンツ戦略に2023年も引き続き注力する意向を示している。

「ソーシャルメディアを介してミレニアル世代やZ世代にアピールしようとするなら、しっかりした動画広告戦略は絶対に欠かせない」と、フィットボディ・アップ(Fit Body App)のCMOを務めるリア・ヘイバーマン氏は主張し、プラットフォームにふさわしく、より自然な、かつ共感を得やすいコンテンツの提供が鍵だとつけ加えた。「我々はかつて、コンテンツをすべて社内制作していた。そこから始めて、いまでは、当社のサービスについて投稿した人々に訴求したり、UGCクリエイターやインフルエンサーを雇ったりと、さまざまな選択肢がある」。

2023年に向けて自社のクリエイティブを強化したいというマーケターもいる。過去の事例で好評だったコンテンツを土台にして、さらに効果的な露出をめざそうという考えだ。

D2C家具ブランドのアーティクル(Article)でCMOを務めるダンカン・ブレア氏は次のように述べている。「私の抱負は2023年、もっと自社の主張を前面に押し出したマーケティングを展開することだ。創業以来、うちの製品は見てもらえればよさがわかるはず、という姿勢でやってきて、広告の表現も控えめだった。しかし当社はいま、アーティクルというブランドの素晴らしさを、自信に満ちた言葉で語れる立場になっている」。

いまこそ大胆なクリエイティブと直截なメッセージによる広告宣伝に適したタイミングだと、ブレア氏は語る。「以前は、質の高い家具は価格も高いというのが常識だった。しかし当社の家具は、価格以上の価値があるとして、人々の共感をよんだ。景気の先行き不透明な2023年だが、アーティクルにとっては堂々たる自己主張をするチャンスだと思う」。

[原文:Marketers want consistent measurement, social safeguards and to crack new platform capabilities in 2023

(翻訳:SI Japan、編集:島田涼平)

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