飲料メーカーのスピンドリフト(Spindrift)は、Z世代層におけるブランド認知度を高める取り組みの一環として、TikTokにマーケティング予算を投資している。
同社は2021年、スーパーガット(Supergut)やチョーズンフーズ(Chosen Foods)と同様のアプローチをとり、主にインスタグラムとTwitterでのオーガニックグロースに注力し始めた。しかし、Z世代の消費者がTikTokで費やす時間がここ数年で増加しているため、同ブランドはマーケティング活動、広告費、コンテンツ戦略を切り替えて、TikTok向けの長編および短編のクリエイティブ動画を独自に制作することにした。
スピンドリフトの消費者マーケティング担当シニアディレクターであるメリッサ・シャム氏は、TikTokを主要ソーシャルプラットフォームとして選択したことについて、「TikTokでは、ブランドボイスを別次元で表現し、文化の一部となりブランドの認知度を高めてくれる。また、制限のないオーディエンスにコンテンツを提供することで創造性に報い、ほかのソーシャルプラットフォームとは異なる方法で我々にとって重要なコミュニティの成長を促してくれる」と話した。
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TikTokで熱心なブランド支持者のコミュニティを構築
TikTokのページを活用することで、スピンドリフトはファンと関わり、彼らに舞台裏のコンテンツ、料理教室、バーチャルイベント、対面イベント、商品宣伝、そしてもちろん商品そのものへのアクセスを提供できるようになる。シャム氏によると、ブランドの広告費のうち95%はソーシャルメディアに、5%は検索広告に費やされているという。
とはいえ、スピンドリフトの広告予算のうち、とくにTikTokにどのくらい割り当てられているかは、シャム氏が全体の予算明細を共有しなかったためわからない。パスマティックス(Pathmatics)のデータによると、スピンドリフトは2022年の広告活動でこれまでに74万7000ドル(約9900万円)強を費やしているという。
シャム氏は、ソーシャルメディアに対してよりオーガニックなアプローチを用いることで、スピンドリフトがそのチャネルを通じてよりコミュニティベースのマーケティングを展開できると考えているという。「口コミは、我々のマーケティング戦略の中核であり、ソーシャルキャンペーンは、温かい気持ちで友人にスピンドルリフトのことを紹介してもらうことで支持を得るのに役立つ、我々の最も強力な手段だと信じている」と同氏は話す。
スピンドリフトにとって口コミは強力なツールだ。同ブランドのコミュニティを調査したところ、「顧客の大半がすでに製品を試した友人からこのブランドを知ったことが明らかになった」とシャム氏はいう。
同氏はさらに、これまでのアプローチについて、「我々は、このブランドを愛し、我々に代わってスピンドリフトのことを伝えてくれる熱心なブランド支持者のコミュニティを構築することによって、ブランドの認知度を高め続けることができると信じている」と付け加える。また、口コミの取り組みに関連し、スピンドリフトは専門のセールスチームを設置し、米国の食料品店にやってくる買い物客にとって魅力的な小売用ディスプレイも実現している。
インフルエンサーとも積極的に提携
2022年の感謝祭では、インフルエンサーの@Traderjoelist(ナターシャ・フィッシャー)や女優のカット・デニングスと提携し、TikTokの短編動画を通じてスピンドリフトブランドのスパイスアップルサイダーフレーバーを紹介した。
金銭的な契約内容は明らかにされていないが、同ブランドが@Traderjoelistと提携したのは、同アカウントがTikTok上で成長し、スピンドリフトのコアなオーディエンスを代表するコミュニティ(正確には12万4000人のフォロワー)を持っているためだ。カット・デニングスがスピンドリフトを心から愛していることも判明し、彼女はブランドの新しいパートナーのひとりとなった。
インフルエンサーと提携する目的は、食品・飲料以外のカテゴリーの新しいオーディエンスにアプローチすることだ。「これらのインフルエンサーは、我々が長い時間をかけて信頼関係を築いた人たちで、マイクロ層からセレブリティまでいる」とシャム氏はいう。
「彼らはすべて、超がつくほどのブランドのファンであり、我々のコミュニティの最大の支持者と見なされ、新製品発売の発表に先駆けて常に新しいフレーバーを試したり、受け取ったりする最初の人物たちだ」。
本物の製品を試すユーザー生成コンテンツが娯楽のトレンド
シャム氏によると、TikTok上でのスピンドリフトによるスパイスアップルサイダーフレーバーの発表は、プラットフォームにおいて同ブランドのアルコール飲料「スパイクト(Spiked)」を除くと最もパフォーマンスの高い発表になった。
その結果、このフレーバーの発売初日に在庫の50%近くを売り切り、10日以内に完全に売り切れたという。「サイト訪問者の74%は初めての来訪者で、スパークリングタイプのスパイスアップルサイダーは、新たな季節のフレーバーに興味を持った既存の、そして未来のスピンドリフト愛飲者をサイトに呼び寄せた」とシャム氏は述べる。
ソーシャルメディアマーケティングとアーティストマネジメントを事業の柱とするクラウドサーフ(Crowd Surf)の共同創設者兼CEOであるキャシー・ペトレイ氏は次のように語る。「新製品のフレーバーを予告するスピンドリフトのコンテンツ戦略は、見ていて本当に楽しいものだった。このキャンペーンは、製品への期待をかき立てるための十分な時間を提供し、新製品の登場までじらすのに最適な時間となる」。
デジタルマーケティングエージェンシーのマングース・メディア(Mongoose Media)創業者でCEOを務めるローレン・ペトルロ氏は、「スピンドリフトは、『ペプシ対コーク』やレッドプル(Red Bull)のゲリラ広告のよいところ(ユーザー生成コンテンツ)を取り入れて、多様性に富む本物の陽気なコンテンツの素を作っている」と付け加える。
「これは、本物の製品を試している本物の人間を紹介するコンテンツの金鉱であり、彼らのコンテンツは結局のところ教育的にもなる娯楽のトレンドを物語っている」。
[原文:Spindrift joins Gen Z in focusing on TikTok over Instagram and Twitter]
Julian Cannon(翻訳:藤原聡美/ガリレオ、編集:島田涼平)