「メディア企業 の 2023年後半は楽観視しているが、前半は多難になる見通し」:DIGIDAY ティム・ピーターソン、ケイリー・バーバー

DIGIDAY

順風満帆とは言い難かった2022年に続いて、2023年のメディア業界は多大な不確実性に直面している。DIGIDAYポッドキャストの共同ホストであるティム・ピーターソンとケイリー・バーバーは、メディア企業の幹部社員やブランド側のリーダーとの対話に基づき、予期せぬ巻き添え損害を出さずにこの不透明な状況を乗り切るのは難しいだろうと考えている。

DIGIDAYのエディターが注目する今年の主要トレンドを紹介していこう。

以下は会話のハイライトとなる。読みやすさを優先し、一部編集を加えている。

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待ち受ける暗雲

ケイリー・バーバー(メディアエディター):メディア企業の最高売上責任者や最高経営責任者と多くの会話を交わしたが、現段階ではこの先の1年どころか、1週間後に何が起こるかも予測できないという流れになることが多かった。そのため、2023年の注目分野や予測に関しては、前半の6カ月に限って話した。全体的に、私が聞いた限り、2023年の後半については楽観的意見が多かったのに対し、前半は多難になるという見通しだった。これらを乗り切れるかどうかは、2020年に学んだ教訓を活かし、必要とあらば即時的な事業の転換やコストカットも辞さないという姿勢にかかっていると、私は考える。

ティム・ピーターソン(シニアメディアエディター):私は最近、アップフロント(アメリカにおけるテレビ広告枠の先行販売)についてテレビ広告のバイヤーやセラーとよく話している。私の意見では、こうした会話ーーいわば炭鉱のカナリアで、ここから次年度のアップフロントの見通しについて、彼らがどう備えているかが垣間見える。テレビ業界に詳しくない読者のために補足すると、アップフロントとは要するに、毎年夏にテレビネットワーク、広告主、エージェンシーが交渉をおこない、ブランドやエージェンシーが翌年どれだけの広告費をテレビネットワークに使うかを決める仕組みのことだ。

これは大きな決定であり、車や家の賃貸契約に近い。衝動買いは許されないため、彼らはすでに自分たちにどれだけの額を投資する用意があるかを考えはじめている。アップフロントの交渉が開始する頃には、見通しは明るくなっているか、あるいは今よりもずっと悪くなっているかのどちらかであるからだ。

実験的な施策はコストカットの対象か

ピーターソン:コストカットの面については、どの分野のコストが必要不可欠ではなく、削減できるのかが検討されている。どの部署をなくせるか、どの実験的予算を削れるかといったものだが、ストリーミング業界においては現在最も大きな課題となっていることがある。Netflix、ディズニー(Disney)、パラマウント(Paramount)、NBC、ワーナー・ブラザース・ディスカバリー(Warner Brothers Discovery)といったどの企業に関しても、ストリーミングサービスで配信する番組の制作に巨額の予算を投じていながら、十分な売上を確保できておらず、収益性を明確に意識してこなかったことだ。彼らは番組制作の予算を引き締め、一部は(新規の番組の)購入をやめた。ワーナー・ブラザース・ディスカバリーは今夏、配信権獲得の休止や、より安価な番組の購入を検討しているようだ。彼らはまた、必ずしもいわゆるプレミアムコンテンツに予算を集中させてはいない。

だが、ここでジレンマが生じる。コストカットはいいとしても、クオリティで劣る番組に投資をしていては、オーディエンスが離れていくのではないか?  「ここのサービスに対して月に9ドル、10ドル、15ドル払っているけれど、前ほどいい番組がなくなってきた」と、視聴者は思うだろう。

バーバー:昨年は予算の肥大化が加速し、長続きしそうにない収入源が追求された。Web3や暗号資産が代表例だ。時流に乗れれば大きな収益を得られるだろうが、長期的なものではなかった。

そのため、実験的要素に力を入れてきたパブリッシャーや、直近では売上よりも支出を増やすことになる部署に大きく投資してきたパブリッシャーは、今年そのような分野でレイオフを行うだろうと注視している。2023年の実験的予算は、少なくとも前半に関しては、あまり潤沢にはならないというのが私の考えだ。これはWeb3への投資に限った話ではない。VRなどテクノロジー主導の分野への投資も同様だろう。パブリッシャーは実績ある地に足のついた事業に立ち返ると、私は考えている。

短編縦型動画への転換と収益化への期待

バーバー:パブリッシャーが短編の縦型動画を採用するのは、制作コストが極めて安価だからだ。

パブリッシャーが2023年にプラットフォームに期待することをテーマに私が以前書いた記事に対する批判として、Snapchatディスカバーの広告フォーマットは、ほかのプラットフォームほど堅実ではないというものがあった。しかし、TikTokやYouTubeショート、インスタグラムのリールといったプラットフォームにおいては、コンテンツの洗練度が低いほうが、むしろプラットフォームに適切だ。アプリを使って配信者主体のコンテンツを制作し、アプリに搭載されたツールで編集するというアイデアは、パブリッシャーがこうしたプラットフォームへの評価を高めるなか、依然として大いに成功している。こうした制作スタイルの普及により、スタジオで制作されるコンテンツが減少し、オフィス内で撮影されるコンテンツが増加すれば、コスト削減につながるのではないかと考えている。

ピーターソン:(パブリッシャーが短編縦型動画で成功できるかどうかは)完全に、パブリッシャーがこうしたプラットフォームからどれだけ売上を得られるか次第だ。YouTubeショートの収益化プログラムは今年2月に開始するため、クリエイターとパブリッシャーがどれだけ収益を得られるかを評価するにはまだ時間が必要だ。それだけでなく、収益がどれだけ安定しているかも重要だ。YouTubeがショート動画に広告枠を追加し、広告主に販売しはじめたのは2022年5月のことだ。広告主は実際のところ、これらをどの程度購入しているのか?

TikTokやYouTubeショートの課題は、収益分配の計算方法にある。たとえばTikTokパルスは、基本的にはポストロール広告プログラムだが、クリエイターやパブリッシャーのすべての動画が対象になるわけではない。プラットフォームで再生数が上位4%に入る動画だけだ。したがって、収益分配の対象になるパブリッシャーやクリエイターであっても、ある月には広告収入を得られる動画が1本もない、といったことが起こり得る。

[原文:Digiday’s top media trends to watch in 2023

Kayleigh Barber(翻訳:的場知之/ガリレオ、編集:島田涼平)

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