80〜90年代に全盛 カリフォルニア発アパレル「エスプリ」が期間限定店:CEOを務めるウィリアム・パク氏が語る、ノスタルジックな再生ストーリー

DIGIDAY

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エスプリ(Esprit)は以前、カリフォルニアのラグジュアリーアパレルブランドだったが、この数十年ほど芳しくない状況が続いていた。

80年代と90年代は同社の全盛期で、スウェットシャツなどハイエンドの衣類で知られていた。しかし同社の米国でのビジネスは2000年代にほとんど枯渇し、ドイツと香港でのビジネスは買い物客に見向きもされなくなってしまった。2021年からの大規模な構造改革の一環として、ウィリアム・パク氏がCEOに就任した。同社は2022年前半、2017年以来はじめての利益を計上した。そして現在、同社は米国で再生するための大きな計画を進めている。

パク氏は米モダンリテールのポッドキャストに参加し、ブランド刷新の計画について語った。「以前のチームや経営陣は、エスプリを大胆で、創造的で、高品質の商品から、当時流行だったファストファッションに変えてしまった」と、パク氏は述べている。

エスプリは同氏が最初に取り扱ったアパレルブランドだが、同氏と妻は危機的な状況のビジネスを救出することに職歴の多くを費やしてきた。「我々は、ビジネス再生やビジネス拡張のための計画を数多く立案してきた。我々はとても楽観的なため、楽観的なプロジェクトに従事することを好んでいる」と、同氏は述べる。

計画の最初のフェーズは、ビジネスを完全に再構築し、会社の収益性を回復することだった。それが完了した現在、同氏はより重要で面白みのある部分であるブランドの一新に注力している。これにより、エスプリはビジネスの全体をニューヨーク市に移し、再度アパレル業界のリーダーになる計画を進める。「全世界にむけた当ブランドの製造、デザイン、検討、写真撮影のすべてをニューヨーク市で行う。そして、ニューヨーク市から全世界に発信される」と、同氏は述べている。

同社は、ソーホーにポップアップ店舗を構えた(2022年12月15〜31日)が、2023年には新しい旗艦店舗を開設する計画だ。さらに、品揃えを完全に一新し、2023年の後半にはすべての新しいデザインを公開することも計画している。

パク氏の推定では、今がこのようなブランドを再生するのに適した時期だ。現在は80年代や90年代が流行しているため、エスプリはいくつもの世代からの共感を得られる可能性がある。

しかし同氏が期待しているのは、30年前のエスプリの絶頂期を取り戻すことだけではない。「我々は、ただの80年代のブランドというだけではなく、現代化されたエスプリを目指すのだ」と、同氏は述べている。

対談のいくつかの要点を以下に示す。これらは明瞭化のため多少の編集を加えたものだ。

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エスプリの新しいブランド・アイデンティティ

「80年代から90年代にわたり、エスプリには3種類の美学があり、少なくとも90年代後半から2000年代には、ある程度ドイツで集中的に調整されていた。アジアの法人がドイツと米国の法人を実際に買い取り、本社がアジアに移されたのは2000年代初期だったと思う。しかし、我々がやろうとしているのは、全世界にむけた当ブランドの製造、デザイン、検討、写真撮影のすべてをニューヨーク市で行うことだ。そして、ニューヨーク市から全世界に発信される。これは非常に重要な変更だ。単に支社や店舗を開設するのではなく、企業の精神とクリエイティブな精神を特定の場所に移動する。ほかの小売業者がこれを行った例に私は思い当たらない。したがって、これは非常に重大な点だ」。

米国の店舗の戦略

「ロサンゼルスのポップアップ店舗(2022年11月16日〜2023年1月4日)が開設された際、私もグランドオープンに出席した。この店舗はサウスロバートソンブールバードにあるのだが、当社がこの場所を選んだのは、最初のブランドがカリフォルニアクール(California cool)だったためだ。我々は、ビンテージ商品や、大学の代表チームをテーマとした商品を取りそろえた。これは、ブランドがカスタマーエクスペリエンスに再び参入し、再びエンゲージメントを構築するための方法だ。今後数カ月以内、第1四半期中には通りの反対側に常設店舗を開設する。そして、2番目のポップアップ店舗はニューヨーク市に開設する。2022年12月15日はソーホーのポップアップ店舗のソフトオープンが行われたのだが、この店舗はクリスマスをテーマにして数週間営業する。この店舗でもビンテージ商品を扱い、ある意味ブランドの再紹介を行うことになる。さらに数カ月以内には、同じソーホーでポップアップ店舗を開設する予定だ。また、ニューヨーク市には旗艦店舗も計画しており、順調にいけば、2023年後半には開設できるだろう」。

ノスタルジーの活用

「ノスタルジーの大きな波が押し寄せてきたと、私は考えている。数年前は80年代、そして現在は90年代が流行っている。もうすぐ2000年代が流行ると考えている人たちもいる。しかし最終的に、ノスタルジーが現代の世代や消費者の共感を呼ぶ本当の理由のひとつは、我々が過ごしてきたここ数年間にグローバル化や脱グローバル化という多くの変化があり、ストレスに満ちた時代だったことだと考えている。実はこのような変化が、人々の眼をブランドへと向けさせている。人々は、ブランドを持たないほかの企業や、政府などを信頼するよりも、ブランドを信頼するようになりつつある。これらの人々は、憧れのブランドを楽しみの対象として期待するようになる。そして、80年代のように物事がよりオープンで自由だった時代に実際に共感を呼んでいたブランドは、ある種のノスタルジーを呼び起こしているのだ。そのため、我々はまず、消費者とノスタルジーとを結び付けることからはじめたいと考えた。しかしそれは、ただの80年代のブランドであるということではなく、現代化されたエスプリだ」。

[原文:‘We’re not just a brand from the ’80s’: Esprit CEO William Pak on relaunching the nostalgic apparel brand]

CALE GUTHRIE WEISSMAN(翻訳:ジェスコーポレーション、編集:戸田美子)

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